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石川貴康の超合理的不動産投資術

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高い物件価格が続く投資用不動産――現状は買い時?それとも売り時?

目次

ここ数年、不動産は高騰しているように見えます。2002年から不動産を買い始め、毎年最低1棟は買うことにしていますが、この6年ほど都内の物件を買えていません。この間、2度ほど買い付けを入れましたが、様々な理由で買えませんでした。一方、地方物件はコンスタントに買っています。

逆に、都内物件は売却を進めました。私は「買って、持ち続ける」ことをポリシーにしており、できれば売りたくないのですが、この高騰期に売りました。売却により、それなりにキャッシュを残すことができました。

2020年のオリンピックに向けて、景気が良いなどと言われていますが、不動産投資をしていると、今回の価格の高騰は別にオリンピックに影響されてのことではないと思います。もちろん、これは私見ですが、その辺も併せて、今は買うのが正しいのか、売るのが正しいのか考えてみましょう。

不動産は高騰しているというのは実感としても間違っていない①都内編

ここ数年、というのは2015年ごろから、不動産の価格が高騰しているように思えます。ここでは、政府統計などの紹介はやめて、私の実感を書いてみます。

2011年の東日本大震災以降、3年くらいの間は1棟物の購入をやめて借地を買っていました。大地震と原発事故で一種のショック状態でした。1棟物を、しかも、私の土地勘がある都内や関東地方に持つことに抵抗があったからです。しかし、2014年ごろから、再び1棟物を買い始めました。まずは、地域分散を狙って福岡です。

その後、都内、北関東と、私の投資フィールドで物件探しを行いました。しかし、既にこのタイミングで良い物件に出合えなくなっていました。いくつか物件を見ましたが、表面利回りが低いのです。都内物件の場合、表面利回り8%を最低基準としていた私ですが、この時点でなかなか見つけられなくなりました。どうやら日銀の量的緩和と折からの不動産投資ブームが原因のようです。

稀に表面利回り8%超の物件があると、なかなかの訳アリです。また、都内通勤圏ということで、東京と埼玉や神奈川の県境で物件がありましたが、当時の私は土地勘がないところには買わないことにしていたので、見送りました。

あるとき都内でとても良いアパートが出てきました。管理を委託している不動産会社が速攻で話を回してくれたのです。2016年初頭です。現地を見たうえで即買い付けを入れました。その足で詳細された地元信金2行、都市銀行1行に出向き、うち1行から融資を積極的に行えるように動く旨回答ももらいました。

ところが、久しぶりに都内物件を買えると思っていたら、突然電話があり、「売り止めになりました」とのこと。理由を聞くと、「マイナス金利が実施され、『不安なので売るのをやめましょう』と税理士に言われた」とのこと。意味がわかりません。しかし、売り止めは売り止め。残念ながら久しぶりの都内物件は買えませんでした。

その後、どんどん都内不動産は高騰していき、表面利回りも4、5%程度になってしまいました。それでも、2018年初頭に、大田区物件に再度買い付けを入れましたが、負け。これも今では貴重な表面利回り7%の物件でしたが、あっという間に持っていかれました。

不動産は高騰しているというのは実感としても間違っていない①北関東編

しかたがないので、コンスタントに北関東物件を買っています。しかし、こちらも高騰中。まず、私が2014年から15年に買った物件は、表面10%でしたが、手残りが少ない。これは、利回り低下と、フルローン、融資期間の短さが災いしています。

かつて地方物件の私の購入条件は表面利回り14%でしたが、なかなか良い物件でこの利回りは出なくなっていました。そこで、10%に下げたのですが、案の定投資としては苦戦。その後、北関東でもなかなか買う気になる10%物件がなくなりました。

この時期「売る」というのは正解だと思う

買うには厳しい時期でしたが、この期間で私は区分2戸とRC1棟を手放しました。どちらも長く持ちましたが、キャッシュが残りました。

区分所有は、文京区の1戸、川崎市の1戸です。文京区の1戸は私の思い出の最初の購入物件です。2002年に950万円で買い、13年間ずっと入居がありました。購入価格の8割の回収が終わり、さらに990万円で売れて、僅かにキャピタルゲインも得ました。川崎の物件はもっといい条件で売れました。

RCはオーバーローン物件でした。表面利回り14%で、毎月キャッシュが30万残り、良い物件でしたが、この機会に売りました。購入価格から500万円ほど下げて売りましたので、キャピタルゲインはないものの、回収した家賃から考えると損はありませんし、キャッシュが残りました。

実は、区分もRCも処分したいと思っていたのです。築古になり、出口が描きにくくなる前に売ろうというのが考えでした。さらに言えば、大規模修繕が必要になる前に売ってしまおうと考えていました。

この時期売るのは楽でしたし、儲かりました。ただ、なんでも売ればいいと言うわけではなく、長く持ちたい物件まで売る必要はないかもしれません。前述のように、私は「買って、持ち続ける」ことをポリシーにしているので、この時期に、将来お荷物になりそうな物件を処分したのです。

とはいえ、「買って、持ち続ける」ことをポリシーにしている者としては、自分の物件を売るのはつらい。買うまでの出会いやご縁、苦労、より良い物件に育てる努力を思うと我が子を手放すようでつらいのです。こうしたメンタルもあって、本来は1棟物でもまだいくつか処分すべきだったのですが、できていません。

オリンピックまで景気が持たないと読んでいる私にとっては、心を鬼にして売らなければならない物件があと2棟あるのですが、機を逸したかもしれませんね。

バブル期越えの不動産融資への金融庁からの牽制、S銀行のシェアハウス融資問題、アベノミクスの恩恵のなさと実質賃金の継続低下、災害の多発、そして、この陰りの中での消費税増税の既定路線化は、この後の不動産投資へ影を落とします。この時期、売るのは正解だと思います。

オリンピック後は確実に、下手するとオリンピック前に、おそらく不景気が来るでしょう。まして消費税をあげたら、オリンピックまでは持たないというのが私の読みです(もちろん、単なる予想でしかないので、外れる確率の方が高いかもしれません。単なる私という1個人の読みですので、ご容赦ください)

「買う」時期としては悪いが、別に買うことが不正解ではない

一方、高騰期の今、不動産は買いにくい時期です。そうはいっても、つい最近まで日銀のジャブジャブ資金供給政策があり、融資自体はおりやすい状況でした。しかし、それももう終わりでしょう。

高騰していても、不動産は売りに出されます。都内は、既に書いた通り利回りが低く、インカムゲイン狙いにはつらい状況です。結局、何度か買い付けを入れましたが、買えていません。

代わりに地方物件を買い続けています。先に書いた通り、地方物件でも利回りはさらに悪化。表面8%でも御の字になってしまいました。それでも、都内物件を同じくらいの入居状況、かつ家賃が取れて、手残りがあるなら「買い」です。

この3年で、私は表面8%の新築戸建てを12戸、表面9%の中古RCを1棟買いました。融資期間が長い点、金利が低い点で、キャッシュの残る額とスピードは2000年前半購入の都内物件とそん色がありません。しかもすべてフルローンです。

高騰しているとはいうものの、融資期間や金利条件、家賃等によって、キャッシュが稼げるなら、今でも購入は正解です。「買い」はありだと思います。

都内は2度買い負けしましたが、地方物件は不動産業者の仕入段階から話を進め、利回りと価格を交渉しますので、かなり堅い物件が買える努力をしているのです。まだまだ、買い続けていきます。

タイミングをあげて売り買いの正誤を論じる意味はない

私は、実は、タイミングをあげつらった「今が買い時」、「今が売り時」などという言葉には信用を置いていません。価格の高低は予測が難しく、特に未来の予測は困難だと考えています。

ですから、今の条件下で自分が買える物件を見つけて、買うだけであり、売る物件は売るだけなのです。価格の高騰・下落を理由に売り買いすることはありません。

今は高騰の時期だと書きましたが、この後下落するとは誰も保証できませんし、実は今が最低価格だったとなるかもしれません。あるいは、この後急落し、2度と今の不動産価格に戻らないかもしれません。結局、こうした価格のトレンド転換点は後になってわかるのであって、今時点での予測は難しいと思っています。

ですから、価格の上下を理由に売り買いせず、自分が収益を生み出せるスキームを構築できた不動産を買い、収益上、リスク管理上、売った方が良い物件を淡々と売ればいいのです。世間に踊らされず、淡々と売買をするのです。

不動産投資は長期勝負、淡々とコンスタントに不動産投資をしていこう

不動産投資は額も大きいし、長期的な投資になります。短期の価格の上下ではなく、長期的にキャッシュフローが潤沢で、リスクを抑え込める物件を選んで投資すべきです。不調に陥っても、リフォームや入居キャンペーン施策の検討をするなど、途中のテコ入れができるやりがいのある投資です。

高騰期でも長期的にキャッシュが確保できるなら買いますし、そうでない物件は価格の高い・安いに関わらず売ります。目先の状況に右往左往せず、長期勝負で投資していきましょう。不動産投資は、長い目での投資ですし、ある意味では地味な投資です。また、事業的な視点も要求されるレベルの高い投資といえます。
無理をする必要はないのです。長期的にキャッシュフローを狙う投資になるので、淡々とコンスタントに投資をしていきましょう。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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