石川貴康の超合理的不動産投資術
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2019年4月19日(金)
例年より繁忙期の動きが鈍い? 2019年の課題と対策
1月から3月は、たくさんの方が引っ越しをするので大家にとっては繁忙期です。
以前は今よりも引っ越しが多く、この時期にかなりの人が入れ替わり、それでもほぼ満室になるのが通例でした。肌感覚ですが、だいたい10年以上同じところに住む方はまれで、長くても5、6年で退出し入れ替わる感じでした。
しかし、現在は以前ほど3月をめどに引っ越しをする方は減っていて、大きく人が動く様子は感じられません。
長く住んで、なかなか引っ越さない方も増えたように思いますし、そもそも引っ越しをする余裕がなくなってきているような感じがします。
そこで、今回は今年の繁忙期の雰囲気や課題、その対処方法を考えます。
特に入居が弱い地方物件はテコ入れが必要
繁忙期に大きな動きが感じられない現在、特に地方は入居の動きが弱くなっています。
繁忙期が来る前にズルズルと退去が発生し、空いた部屋を何とか繁忙期に埋めて、また年内にぽつぽつと退去があり、繁忙期まで埋まらない……といったことの繰り返しです。
入居が弱い地域はそのまま繁忙期でも埋まらず、ずっと空室のままというケースも出ています。
以前、このコラムでも書きましたが、大学のそばの物件は卒業で退去、あるいは年度中に退去があると、長く空室が続くケースが出ています。
私は実家物件も含めると170戸ほどを所有する大家ですが、ここ数年は地方物件を埋めるのが難しくなっています。
特に2019年になってから動きが鈍く、いろいろなテコ入れをして、なんとか入居を決めている次第です。
私は2002年から不動産投資をしています。節税対策に実家物件を建てたのは1990年代ですから、そのあたりから比べると本当に大家業は大変な商売になりました。
2019年の繁忙期の現状と経緯
170戸のうちズルズルと空きが出はじめ、この原稿を執筆している2019年2月1日現在で空室が15戸あります。
現段階では総戸数に対する入居率は90%を超えていますが、強い危機感を持っています。15戸の空きの内訳は以下の通りです。
①大学横の古い物件:2戸空き
②大学近くの物件:1戸空き
③ファミリー向け3LD物件:2戸空き
④小学校目の前の新築戸建て:1戸空き
⑤公園横物件:1戸空き
⑥実家駅徒歩3分物件:3戸空き
⑦実家駅徒歩5分物件:2戸空き
⑧つくば市アパート:1戸空き
⑨都内アパート:1戸空き
⑩福岡アパート:1戸空き
実家物件を含め、所有しているのは17棟ですので、現在満室は7棟。
満室でないこの10棟を満室にできるかどうかが勝負です。
不動産業者との打合せを強化する
私が取った対策として最初に始めたのは、不動産業者との打ち合わせです。
本業がある私は、入居者募集や契約を不動産業者に委託しています。
個別の物件の対応とは別に、12棟の管理を委託している不動産業者とは、1・2月で打ち合わせをし、対応を依頼しました。
まず、社長と面談を行い、管理部との打ち合わせをセットしてもらいました。
1月段階で、既に私の物件は営業強化物件に指定していましたが、その上で現状確認をして対策を組みます。
毎週の営業会議で、重点チェック対象として入居の有無を報告し、進捗を確認してもらっています。
各支店にも強化物件として連絡が届いており、積極的に動いてもらうのです。
2月の訪問時は茶菓子を持って伺い、さらなる対策を依頼しました。
結局出てきたのは家賃の値下げという案でしたが、仕方がないので受けることにしました。個別の物件対策までは今回は行いませんが、入居の動きが悪い場合は繁忙期の後になんらかの対策を迫られるでしょう。
2月初旬から末までは、“動きが鈍い”のひと言
さて、2月初頭の動きを見ると、あまり芳しくありません。
そんな中、最初に決まったのは「③ファミリー向け3LD物件」の1戸です。しかし、まだ空きは1戸残っています。駐車場付で6万円の家賃を5万7千円と、5%もの値引きでやっと1戸を決めることができました。
次に入居が決まったのは、「④小学校目の前の新築戸建て」1戸の空きです。こちらは1万円家賃を下げましたが、さらに指値が5千円引きと10%以上の値引きの上、ペット可。
入居者にとっては好条件での妥結となりました。大家もつらいです。
続いて、「⑥実家駅徒歩3分物件」3戸空きのうち1戸に入居が決まりました。こちらも3千円引きにし、まだ2戸が空いています。
結局、1カ月ほどのプッシュで決まったのは3戸で、この原稿を執筆している2月現在、残りの12戸はまだ残っている次第。
さて、あと1カ月程度の繁忙期でどこまで埋まるのやら、という感じです。
ほかの物件はなかなか埋まりません。大学横やそばの物件は苦戦中です。
最近は入試の段階で入居者を押さえるべく、不動産会社も仮の申し込みを受け付けています。
「②大学近くの物件」1戸空きは、試験時に入居仮予約が入って安堵していたところ、まさかの不合格で話が流れ、今も空いたままです。
大学そばは今では入居者取り合いのレッドオーシャンとなっており、おいしくない旨をこのコラムでも以前書きましたが、状況は変わらずですね。
繁忙期なのに、大家が負担して家賃を下げないと入居を決めにくい状況に陥っていて、本当にもうからない時代になってきていると感じます。
本来、値引きとは繁忙期を過ぎて入居がない時に取る手でしたが、今は家賃値下げ競争に近くなっています。
家賃の値下げ以外に、入居を促進する手はあるのか?
安直に家賃を下げていては、収益が悪化するばかり。
本来は、家賃を下げずに入居を促進する手を使うのが王道でしょう。
実際に私も色々な書籍を読み、思いついた案を実践しました。
以下、今まで行った対策を紹介しましょう。
(1)設備拡充①:TVモニターフォン
不動産管理会社に勧められて付けましたが、私の物件ではさほど効果はないようです。ないよりはあったほうが良いという感じですね。しかし、これからのセキュリティを考えれば必須アイテムになっていくでしょう。その分、競争力にならないと感じます。
(2)設備拡充②:ウォシュレット
こちらも不動産管理会社の勧めで付けました。しかし、残念ながらあまり効果はないようです。こちらも、ないよりはあった方が良いという感じでしょうか。しかし、TVモニターフォン同様に必須アイテムになっていくでしょう。
(3)設備拡充③:無料Wi-Fi
こちらも不動産管理会社からの勧めで付けたものの一つです。私の物件では、さほど効果は感じられませんでした。こちらも、ないよりはあったほうが良いというくらいでしょう。
(4)設備拡充④:和室のフローリング化
意外と効果がありました。しかし、お金がかかりすぎるので、最近はクッションフロアなどで代替しています。確かにフローリングは効果があったのですが、あまりに古くなったアパートにはここまでの投資はできませんね。
(5)モデルルーム化
空いている部屋に家具、カーテン、照明をつけてモデルルーム化する手は、効果がありました。やはり住んでいるイメージがあるのとないのとでは、部屋に魅力を感じるかどうかに関わってくるため、大きな差がありました。
入居が決まった際は、照明などはそのまま使ってもらうこともありますが、さすがに冷蔵庫や家具はほかの空き物件に使いまわしをしています。
(6)フリーレント
不動産管理会社に勧められて、対応したことがあります。最近は、入居者側から要求されたりしますね。最初から伝えると足元を見られそうなので、できるだけ、最後の決めの段階で繰り出してもらえるようにしています。
(7)内見時のメッセージカード、入居時プレゼント
一時、一生懸命内見時にメッセージカードを置いたり、品質の良いスリッパを置いたり、カップラーメンを置いたりして入居後のプレゼントにしたりしました。
効果があるのか、ないのか見極めができず、手間がかかるので取りやめました。それよりも不動産屋が積極的に動くようなインセンティブをあげたほうが良いと分かったので、やめてしまったという理由もあります。
(8)広告料を1カ月分出す
通常、賃貸の仲介では手数料が1カ月で、その1カ月を元付業者(管理をしていて、募集をした業者)と客付業者(入居者を見つけて元付業者に紹介する業者)で折半しています。
その業者の収入を増やすために、広告料という名目で1カ月分のお金を出し、元付業者と客付業者で1カ月ずつ収入が得られるようにすることで、入居を促進しようという方法です。
競争の厳しい地域では一般化しています。私の物件でもこの手を使うこともありますが、四六時中この手を使うと収入が減るので、キャンペーン的に入居促進をしたい時に採用するようにしています。
今のところ、この手が一番効いています。
(9)外壁や屋根、階段などの塗装
私の所有物件でも、いくつか塗装し直したりしましたが、あまり影響はありませんでした。大きなお金が動くので、こうした大規模な修繕は、見極めが必要ですね。
ということで、実際に私が実践した対策は以上の9つですが、ほかにも設備拡充では3点ユニットの分離やお風呂の追い炊き化、オートロック化、宅配ボックス、ゴミ箱収納箱などの設置が考えられます。
私はこの手は使いませんが、敷金・礼金ゼロのいらゆる「ゼロゼロ物件」も一般化しました。
いろんな追加投資を要求され、大家業は本当に大変です。本当に儲からない商売になりました。ちなみに今回の繁忙期では、上記の中では「(8)広告料を1か月分出す」、という手を使いました。
最近マンネリ化しているので、もう少し、創意工夫をしていかないといけません。
さて、今年は繁忙期にあとどこまで埋められるか……なかなか大変な時代になりましたね。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など