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石川貴康の超合理的不動産投資術

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アパートの大家は儲かるのか?決してラクではない、大家としての役割とは

目次

アパートの大家と言えば、定期的なルーチンワークを毎日行い、そして安定した収入が得られるイメージがありますが、果たして大家の責任範囲はどこまであるのでしょうか?
ここでは、アパートの大家になるにはどれくらいの準備資金が必要なのか、売り上げはどれくらいなのか、責任範囲はどこまであるのか、などを解説いたします。

アパート経営が収益を生み出す仕組み

アパート経営は家賃を稼ぐところから始まります。家賃収入の発生です。アパートという資産を購入し、あるいは建築して、入居者が付いてくれれば家賃が収入となるのです。したがって、確実な入居が見込めるアパートが好ましいわけです。ただし、いろいろな経費がかかるため、アパートの家賃収入がそのまま収入になるわけではありません。一方、経費を上回る家賃収入があれば十分な収益となります。

例えば、私が2004年に練馬区に購入した4,800万円のアパートは、ずっと満室で家賃収入が毎月38万円ほどあります。ここから、経費4万円とローン支払い22万円の合計額を引くと、だいたい12万円ほどの手残りがあります。この収益は、私が寝ていても起きていても入ってくるのです。

さらに、ローンを完済できれば、22万円の支払いがなくなり、毎月34万円が手残りになるという魅力的なビジネスです。このアパートは2004年に購入し、ローンが2024年に完済します。ずっと満室維持できていますので、この間ずっと月12万のキャッシュを生んでくれた上、あと6年もすると月34万円のキャッシュを生む資産になってくれるのです。

アパートの収益は

収益=家賃収入-経費

という式で計算できます。しかし、この収益は寝ていて稼げるわけではありません。「不労所得」という言葉が独り歩きしていますが、大家にはそれなりに仕事があるのです。

きちんと大家の仕事をこなさないと、入居者が減ってしまい、結果的に収益を悪化させます。しかし、きちんと仕事をこなしていれば、入居者が減ることなく、家賃収入が安定的に入ってきます。

以下に大家の仕事をご紹介しましょう。

アパート経営における大家の仕事

大家の仕事は以下のようになります。


・アパート運用管理
・土地・建物の維持・管理
・入居者・退去者の管理
・入居者募集、営業管理
・経営管理 

です。それぞれについて説明していきましょう。

アパート運用管理(日常的な業務)

アパート運用管理は日常的に発生します。アパート運用に必要な各種の仕事です。どのような仕事があるのか見てみましょう。


・家賃の管理

 家賃収受の管理を行います。古くは集金するという手もありましたが、最近は銀行振り込みが主です。確実に家賃が振り込まれたか管理します。もし、入金がない場合は、入居者に確認して督促します。


・清掃

 アパートの清掃を行い、清潔に保ちます。

・クレーム管理

 入居に伴うクレームなどの対処を行います。

土地・建物の維持・管理(必要に応じて発生する業務)

土地や建物の管理が大家の第一の仕事です。この仕事は必要に応じて発生します。


・土地の管理

土地の管理とは、暮らしやすいように土地の形状を維持することです。土地を整地し、草刈りをし、必要に応じて砂利を敷いたり、アスファルトやコンクリで固めたりして使いやすくしま
す。

駐車場があれば、線引きをはっきりさせ、駐車場ナンバーを振ったり、車止めを設置するなどして使いやすくします。加えて、駐輪場を設けたり、通路に屋根をつけたりします。

稀に境界線の確認の立ち合いや、下水道への接続の工事などが発生することもあります。

・建物の管理
建物の管理は、外壁、屋根、設備などの維持です。老朽化した建物では入居者に敬遠されるので、ある程度の期間で修繕を行います。
土地・建物を維持・管理する際には、リフォーム業者の選定、交渉、指示、確認、決済といった仕事が発生します。

入居者・退去者の管理(必要に応じて発生する業務)

入居時、および退去時に発生する業務には、以下のようなものがあります。入居時と退去時に、必要に応じて発生する業務です。

入居者の審査

入居申し込みがあった場合、その入居者を受け入れるかどうか審査します。誰でも入居をOKするかというと、大家次第というところです。高齢者や外国人を敬遠する大家もいますが、私は比較的誰でも受け入れます。ただし、信用チェックは行います。信用チェックはカード会社や保障会社が行ってくれます。

入居の契約、物件管理に関する説明、鍵の受け渡し

入居に際し、賃貸借契約を締結します。ゴミ出しの方法、家賃・敷金の振込先とタイミングの説明、そして水道光熱費の開始方法などの説明を行い、鍵を受け渡して入居開始です。

退居申し込みの受付と退去の相談

退居の申し込みを受け付け、退去時期の相談をします。その際の残家賃の精算方法や原状回復費用の負担、敷金の返還などの相談をします。

退居の立ち合い

退居の立ち合いを行います。内部の確認、原状回復の見積もり、残置物の有無の確認などを行い、荷物がすべて運び出されたら鍵を受け取ります。

残家賃と精算と敷金の返還

月の半ばで退去となれば、残家賃の精算と敷金の返還を行います。原状回復費用がかかるようであれば、その精算もします。

原状回復リフォーム

次の入居者を確保するために、原状回復リフォームを行います。まれにリフォームを大家自身がすることもありますが、通常はリフォーム業者に委託します。その際は、見積もりを取って交渉し、発注します。リフォームの結果を確認し、不十分な場合は改善指示を出します。リフォーム後は請求書を受け取り、リフォーム費用を支払います。
 退居者(元入居者)の責でリフォームが必要になった場合は、退居者(元入居者)に請求します。通常は、残家賃と精算と敷金の返還とあわせてリフォーム費用の精算も行います。

入居者募集、営業管理(必要に応じて発生する業務)

意外と重要な仕事が、入居者募集と営業管理です。入居者を確保するためには必須の業務で、必要に応じて発生する業務です。

入居者募集

家賃の金額や敷金・礼金を決めます。そして、不動産賃貸仲介業者の店頭やネットに掲載する募集広告を作成します。

営業管理

募集をかける際に、管理を委託して契約を締結してくれる業者を元付業者と言います。その元付業者との面談、折衝は必要に応じて行います。できるだけ密に会うことが営業にもなります。
 また、契約元になる元付業者とは別に、店頭に広告を掲載し、入居者を見つけて元付業者につなぐ業者として客付業者がいます。元付業者だけでは、広告の告知範囲が狭いので、客付業者に客付けを依頼します。

経営管理(日常的に発生する業務/または年1回発生する業務)

お金に関わる仕事が経営管理です。この仕事は日常的に発生しますが、決算と税務申告は年1回の仕事です。

入出金管理

家賃収受の確認、リフォーム代金やアパートの共用部分の水道光熱費の支払い、掃除代金の支払いなどの日常的な入出金を行います。

帳簿の記帳、作成

家賃収入、経費、入出金などの経費を記帳します。会計ソフトに打ち込むことで管理するのが一般的です。領収書などの証票管理も行います。
各種支払いを行います。

決算、税務申告

日常的に行っていた帳簿の記帳を取りまとめて、年に1回決算をします。そして損益計算書、貸借対照表を作ります。税金の計算をし、税務署や地方自治体に申告書を届け、納税します。

以上の業務を表にまとめましょう。

アパート経営の収支はどれくらい?

なお、こういった大家の業務は、ほとんどが外部に委託できます。①から④までは不動産管理会社に、⑤は税理士・会計士に委託できるのです。上手に委託できれば、大家の仕事は極端に減ります。サラリーマンをやりながら大家になれるのは、外部に委託して、時間を使わないようにしているからです。

委託できるとはいえ、こうした仕事は、すべて大家の責任において行われるものです。委託された会社や税理士・会計士は、大家からの委託にもとづいて仕事をします。

また、お金がかかることや入居者のトラブルなどは、大家が最終判断をします。丸投げはありえません。意思決定が大家の仕事なのです。
しかし、多くの作業が外部委託できれば、大家はまさに意思決定だけの仕事になります。それはまるで、経営者そのものですね。

まとめ

そうなのです。アパート経営は、まさに「経営」です。正しい知識を持ってアパート経営を目指せば、うまく行く可能性が限りなく高まります。しかし、きちんとした物件を選び、管理をしっかり行い、収益をしっかりと把握して経営することが前提です。

ほったらかしだとか、必ず儲かるなどと言った、甘い話はありません。何もしなくても儲かるなどと言った甘い話にはうかつにつられないように注意をしましょう。

しかし、きちんと運営されたアパートは、きちんと収益を生んでくれます。「経営」という視点でアパートを運営していくことが大事です。そうすれば、大きな果実をもたらしてくれるでしょう。慎重に、まじめに経営しましょう。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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