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加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠

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一発玉砕で自己破産・再起不能を避ける方法

目次

不動産経営は投資金額が大きい分、上手くいけばリターンも大きいビジネスです。
その反面、失敗すれば大きなリスクを伴います。

小さなリスクでの失敗なら、これも勉強だと笑い飛ばすこともできますが、大きなリスクを背負った失敗だと、一発玉砕で自己破産に陥り、再起不能となる可能性もあり得ます。

かくいう私は、当時28歳の1986年から現在に至るまでの32年、108戸の不動産経営をやってきましたが、その間に数々のリスクを背負い、失敗を経験してきました。
一歩間違えれば、私自身が一発玉砕となりかねなかったことも、何度もあります。

今回は皆さんに、私と同じ失敗をしないよう、恥を忍んで自分自身の3つの事例を紹介させていただきます。

失敗事例その① 平成バブル崩壊(損失:4,000万円)

私が不動産経営を始めた1986年、その4年後の1990年に平成バブルが崩壊しました。借入金はそのままで物件価格のみが大暴落し、債務超過となりました。

バブル前は、ワンルームマンションが1,200万円程度(持ち出し2万円)でしたが、やがて1,700万円(持ち出し3万円)、2,000万円(持ち出し4万円)、2,500万円(持ち出し8万円)と、価格はどんどん上がっていきました。

私はこの段階で止めましたが、その後も3,000万円から5,000万円、果ては新宿のワンルームマンションが1億円になるまでみるみる値上がりしました。
持ち出しはたったの、10万円、20万円です。しかし、1990年に国の不動産融資禁止令(総量規制)が出て不動産は流通がストップ、大暴落しました。

その結果、ピーク時に1億円まで値のついた新宿のワンルームマンションは、10分の1の1,000万円に。その後、底値は500万円まで落ちこみました。

ちまたには競売物件、任意売却物件、投げ売り物件が溢れました。利回り20パーセント、25パーセントにまで下げても、誰も見向きもしません。

不動産経営者は自己破産、夜逃げ、行方不明。不動産会社は倒産、夜逃げです。私もご多分に漏れず、債務超過4,000万円となり、その後は融資受けもできなくなりました。
しかし、なんとか首の皮1枚で生き延びることができました。

その理由は、家賃と給料などからの持ち出しでローン返済でき、キャッシュフローを回せる範囲内に留めておいたことです。

多少無理をしてでも購入し、いざとなれば売ればいいという、値上がり益(キャピタルゲイン)期待戦法ではなかったことが幸いしました。

平成バブル崩壊前は日本も成長期で、家賃も物件価格も右肩上がり。しかし平成バブル崩壊後は、衰退期に入り、右肩下がりに転じてしまいました。
値上がり益期待戦法の個人・企業は、売るに売れずキャッシュフローが回らなくなり、破綻していったのです。

転売益狙いで売買に徹した個人・企業は、僻地・リゾート・ホテル・海外・小口分譲・ゴルフ会員権・絵画などに手を出して破綻しました。一方で、破綻を免れた個人・企業もいます。

・家賃狙いに徹した個人・企業
・仲介・管理に徹した企業
・一等地の居住用の不動産に徹した個人・企業

上記の3つのパターンは、バブル崩壊後も倒れることなく、生き残ることができました。

時は経ち現在、2018年に発覚したS社・S銀行などによる悪徳商法によって、金融庁が再び不動産融資禁止令を出しました。
行き過ぎた融資のせいで、再びバブル崩壊の兆しが見え始めている今日この頃です。

平成バブル崩壊当時は、家賃はさほど下がらないのに、物件価格のみが下がりました。
さらには金利も下がっていったので、利回り・キャッシュフローが出るようになっていきました。

私の場合、融資受けは困難だったので、多少金利は高いですがノンバンクやカード会社を起用し、時には現金購入で高利回りの物件を取得することができました。
それによって、キャッシュフローを円滑に行い、自己資本を厚くしていくことで、再び銀行からの融資受けができるよう改善していったのです。

【教訓】家賃(インカムゲイン)狙いに徹し、キャッシュフローには余裕を持たせること

失敗事例その② 耐震偽装(損失:約6,000万円)

私は区分所有マンションを中心に買い進めており、2005年に不動産業者のS社の協力も得て博多駅近く、また名古屋駅傍に土地を購入(各3,000万円程度)し、アパートを新築(各3,000万円程度)しました。

ところが、建築設計事務所の一級建築士(当時)、A氏による耐震偽装事件が起こったのです。後にH社・K社・S社が関わってしまったことが判明しました。

S社については、福岡県に本社があり新築アパートを中心に取り扱っていましたが、不慣れな東京のマンションで、知らぬままに関わってしまったようでした。
もし、私の物件も耐震偽装があったとしたら、入居者の方には、転居先を探してあげ、建物は建直しするしかありません。

土地は残っても建物は無価値になり、6,000万円の債務超過になってしまいます。不幸中の幸いだったのは、外資系金融機関によるノンリコース(不遡及型)ローンにしていたことでした。
ノンリコースとは、物件さえ手放せば残債は免除されるというものです。外国では一般的ですが、日本ではあまり見かけません。

その後H社・K社は、財務収益体力もなく倒産。S社は財務体力があったこと、また耐震偽装物件に関しては入居者の方に転居先を用意し、買主からは同額で買戻すなど、対応が良かったこともあって復活しました。
私の物件も耐震偽装ではなく、結果的に事なきを得ました。

【教訓】信頼できる、財務収益体力のある不動産会社を選定すること
瑕疵担保責任はきちんとしておくこと

失敗事例その③ 悪徳金融機関・不動産会社とのトラブル(損失:6,000万円)

札幌の大規模一棟マンション(2億円)を、S銀行の融資受けで購入することになりました。融資白紙解約条項を付けた上で「売買契約書」締結。
融資の内諾は取れており、その後、晴れて融資受けの正式承認「金銭消費貸借契約書」も締結しました。

これで、一安心と思っていたところでした。白紙解約期限も過ぎ、いよいよ融資実行・決済の1営業日前。S銀行は特段の理由も無く、突然融資をキャンセルしてきたのです。

通常なら、無かったことになるようですが、不動産会社のY社は手付金(500万円)を不返還。それだけでは事足りず、違約金(2割:4,000万円)を要求し、仲介手数料(600万円)まで請求してきました。
裁判は3年間にも及び、金利(年利6%)だけで1,000万円です。

さらに驚くことに、裁判になって1年近く経った頃、S銀行はお抱えのP社をコンサルティングとして起用させ、私の知らないうちに「手付金領収書」・「重要事項説明書」・「売買契約書」を偽造していたことが判明しました。

そしてあろうことか、それを私がやったと濡れ衣を着せてきたのです。
当時は宅地建物取引協会、金融庁、警察、当方の弁護士、裁判官と誰も信じてくれなかったのでしょう。結局、敗訴。相手の裁判費用まで払わされ、弁護士費用も含め総額6,000万円の損害を被ってしまいました。

その後、S銀行の悪行は世間に暴露されました。S銀行は本人の知らないうちに、「預貯金通帳」「株明細書」「健康診断書」「手付金領収書」「重要事項説明書」「売買契約書」「レントロール」など各種書類を、時には不動産会社などと一緒になって、偽造していました。

このように残念ながら中には、自分たちの行なった悪事をなすりつけるような銀行や業者もいるのです。自己防衛のためにも、証拠(書類、電子メール、録音、証人など)を残すなど、常に気をつけることが重要です。

ちなみに不動産会社のY社は、不動産の転売屋とも言うべき中間省略登記を行う、いわゆる三為業者でした。さらには後になって、自社の専務取締役を取引の中に加えてきました。
後から考えれば、仲介手数料(両手)のみならず、売買差益まで抜いていたようです。

売主が宅地建物取引業者でなくなれば、瑕疵担保責任は特約で排除できますし、今回のようにトラブルが起きてもクーリングオフも適用できません。
今にして思えば、もともと初めから違約金などを狙っていたのかもしれません。融資ドタキャンから数日後には、ほかに転売していました。

不動産経営者のみならず、弁護士・裁判所をもだませる、法の網をかいくぐった新たな手法だったのかもしれません。
その後は、S銀行とは取引しないことにしました。また、この教訓から他の金融機関の場合でも念のため、白紙解約期限までに融資実行・決済までしてもらうようにしています。

【教訓】
・信頼できる金融機関・不動産会社を選定すること
・融資承認、「金銭消費貸借契約書」締結後もドタキャンはあり得るため、白紙解約期限までに融資実行させること
・重要な事柄は、証拠を残すこと
・三為業者・不動産会社の役員・従業員などの個人を間に入れてくる不動産会社には気を付けること

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著者紹介

加藤 隆
加藤 隆

サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。

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