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星野陽子の金持ち母さん投資術

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50代独身女性が安心して暮らせるマンションのありかたを考える

目次

「歳をとっても、仲の良い人たち同士で安心して住める部屋を作ってほしい」

先日、知人の女性から言われたひと言。
それがきっかけで、今後自分が提供したい部屋について、考えるようになりました。

50歳となった彼女は、現在独身。近頃は将来のことをより深く考えるようになり、高齢になったときに、一人で暮らす不安を強く感じるようになったとのことでした。

私自身も老後は一人で暮らすのではないかと思っています。高齢者にとって住みやすい住宅とはどのようなものなのでしょうか?

現在、自分が所有する物件の入居者さんの中には、高齢の方もいらっしゃいます。どうやったら高齢者でも安心して一人暮らしができるのかを、大家としてあらためて考えてみることにしました。

高齢の単身世帯が増えている現状と抱える不安

現在、単身世帯が増えていますが、みずほ情報総研の2017年のデータによれば、2030年に最も多くの単身世帯数を抱える年齢層は80歳以上で、その次に多いのが50代です。

80歳以上が多くなる要因は、2030年に団塊の世代が全員80歳以上になるためで、50代で単身世帯が増える一番大きな要因は、未婚化の進展だそうです。

配偶者と離別や死別をした人、結婚しない人、シングルペアレントで子どもが巣立った人、家族と離れて暮らしている人など、さまざまな事情により単身で暮らしている人がたくさんいますが、一人での生活に不安を感じている人は多いと思います。
高齢でなくても、孤独を感じず、安心・安全に暮らしたいという単身者は少なくないのではないでしょうか?

私自身も単身者で、普段は特に不安を感じたりしないのですが、体調を崩した時などは別です。高熱が続き、ふらついて外に出られないという時は、不安になりました。その時は友人が食べ物などをドアの外に届けてくれ、本当にありがたく思いました。

私はペットを飼っているのですが、病気で孤独死をした人のそばで、ペットも餓死していたというニュースを見た時には、目頭が熱くなり、「ペットのためにも病気にならないようにしなくては! 具合が悪くなったら玄関の外で倒れなくては!」と強く思いました。

高齢の単身者は、賃貸できる部屋がない

高齢の父が長年住んでいた借家の立ち退きで、住む部屋を探していたときのこと。
探しても探しても、貸してもらえる部屋はなかなか見つかりませんでした。
かといって、介護付きの高齢者向けの部屋は、特に初期費用や月額費用が高く、介護が不要の父には高額に感じました。

自分で生活ができるので、普通の賃貸の部屋に住み、日々の安否確認はお弁当を配達してもらうことなど、何らかの手段で対処する。
そして、何かあったときには誰かに連絡ができるサービス(警備保障会社のサービスなど)があれば十分でしたが、予算や希望にぴったりの住居がなかったのです。

大家の立場から見てみると、高齢者を敬遠する主な理由としては以下の通りです。

・滞納リスク
・孤独死リスク
・病気・ケガリスク

これらのリスクは高齢者以外にもあることですが、高齢になればなるほど働くことが難しくなります。
さらに、病気やケガも増え、部屋から出られなくなると孤立してしまう可能性などもあるからです。

ある程度のお金がある人へ提供する部屋とコミュニティーを考えてみる

高齢者や障害者など住宅の確保に配慮が必要な住宅確保要配慮者に対しては、十分とはいえませんが国の居住支援があります。
そこで、それを踏まえながら今回は冒頭に登場した、相談してくれた女性に向けて、具体的に部屋のありかたを考えてみることにします。

家族からの援助はないものとして、50歳で年収300万円以上、貯金1,000万円以上で、65歳以上になっても月に10万円以上稼げるという人をモデル例にします。
(私に相談する人たちの中には、「貯金がない」という人たちが多いのですが、もしかしたらご実家にお金があるなどの事情があるかもしれません。

しかし、本当に貯金がないのであれば、今からでも真剣に貯金に取り組んでほしいと思います。
以前読んだ新聞記事によると、未婚の高齢単身者の約5割が借家住まいだそうですが、年金生活で家賃を払わなくてはならないとすれば、貯金がないとゆとりのある生活はできないかと思います)

ある程度の収入や貯金がある人たちとはいえ、人生100年の終わりまで、経済的に困らないかと言えば、やはり不安を感じるのではないでしょうか。
であれば、費用を抑えながら必要なサービスが受けられるのがベターだと思われます。

建物としては、個人の部屋のプライバシーを守りつつ、他の人と交流ができるラウンジがあると良いのではないかと考えたのですが、そのような建物を探すも、新しく建てるのも大変です。

一方、補助金は魅力の高齢者専用賃貸住宅は、高齢者限定であったり、部屋の広さなどの制約があったりしたので、今回は検討しないことにします。

また、プライバシーを守りつつ他者との交流もできる建物を所有したとして、その中に住む人たちが全員と仲良くなれるかというと、難しいのではないかと不安になりました。
私自身、6つの共有住宅に住んできましたが、隣人たちと必ずしも仲良くできたわけではありません(仲が悪いわけではなく、お互いそれほどかかわりたいと思わず、あいさつをするだけでした)。

逆に、少し離れたところに住んでいる人と仲良くなった方が、万が一仲が悪くなったとしても会わないようにすればいいだけなので、安心できる気もします。

大家としては、以前は「所有物件内、あるいは所有している複数の物件でそのようなコミュニティーを運営する」という漠然とした考えしかありませんでしたが、近頃は物件を所有していなくてもその仕組みを作ることができるのではないかと思い始めました。

以下、ラフなプランを考えてみました。

・部屋
部屋はプライバシーが守られ、気持ちよく生活できる広さがある個室(トイレ・バス付)。
さらに将来、手すりをつけるスペースや、車いすが通れるスペースがあるのが望ましいと思います。

・家賃
ラウンジなどの共用部があるため、家賃は一般的な単身者向けの部屋の賃料相場より、やや高い程度。
家賃保証会社の審査に通ることが必要であるとします(前述した程度の収入や貯蓄などがあることが入居条件です)。

・会費
ラウンジを使用したり、スタッフのサービスを受けたりするために、メンバーは会費を毎月払います。

・安否確認システム
物件の管理スタッフが入居者の希望に応じて安否確認をします。
また、具合が悪いときには病院へ連れて行ったりします。
安否確認をすることで、先に述べた孤独死や病気・ケガのリスクが軽減されます。

年齢や希望に応じて、別途料金でオプションサービスも受けられることにします。
例えば、綜合警備保障会社のセキュリティー設備を部屋につけておいたり、GPSを搭載した通報機能付きの端末(もしもの時はガードマンが有料で駆けつけるシステム)を使用したりするサービスが考えられます。

私は10年程度自宅として住んでいた家でセコムを使っていましたが、とても安心できました(料理を焦がして煙を出したために、2度ほど駆けつけていただいたときには、恥ずかしい思いをしました……)。

・ゆるいコミュニティー(メンバーがつながれるような仕組み)
コミュニティーについては、前回コラムの「分散ホテル」の仕組みを応用したいと思います。
自分の所有物件に住んでいる人に限定するのではなく、例えば自分の所有物件を中心にしたエリア内に住んでいる人たちも含め、このコミュニティーに参加したいという意思がある人たちもメンバーとして、一つのコミュニティーを作ります。

そして、コミュニティーの仕組みにはWeWorkを応用します。
中心となる、メンバーが気軽に集まれるラウンジのような場所を、所有物件内の一部屋、あるいは提携するどこかのレンタルルーム、レストラン、カフェなどに作ります。
メンバーは趣味などをサイト上に書き、気の合う人を見つけてつながることができます。

さらに、非常時にお互いを助け合う小さなグループを近所の数人で作ります。
スタッフは、メンバーの入会や退会の管理をします。またスタッフがイベントを立ち上げたり、仲良くなれそうな人たちをつないだりして、メンバーが孤立しないようにします。

まだまだ熟考が必要ですが、このような形を友人や知人たちに提案してみるつもりです(まだ高齢者ではないので、実際に真剣に望むのはもっと先かと思いますが)。

また、所有物件の管理会社と相談して、これから高齢の単身の方にご入居いただくときには、少なくとも綜合警備保障会社のGPSを搭載した通報機能付きの端末の使用を条件にしようかと考えています。

現在、ご入居いただいている高齢の一人暮らしの方々に対しても、話を聞いてみるつもりです。もし不安を抱えていたら、喜んでもらえるかもしれません。

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著者紹介

星野 陽子
星野 陽子

不動産投資家。著者。特許翻訳者。
東京都出身。外資系メーカー、シティバンク勤務を経て、イスラエル国籍のユダヤ人と結婚。子ども二人に恵まれるも離婚。フリーランスとして在宅で翻訳の仕事をしながら、シングルマザーとして子ども達を育てた。東欧からの移民の子で、14歳から働き、資産ゼロから財産を築いたユダヤ人の義父からは不動産投資を学び、投資物件(6億円)などの資産を築いた。著書に『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』『ユダヤ人大富豪に学ぶ お金持ちの習慣』『貧困OLから資産6億をつかんだ金持ち母さんの方法』がある。オンラインサロン「マネサロ」主宰。 オフィシャルブログも定期更新中。

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