加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠
1,443 view
2019年2月26日(火)
不動産投資のこれからとAI戦略
私はIT系の企業に勤めていますが、昨今はIT以外の業界においても、AI(人工知能)を活用しようという取り組みが増えているように感じます。
有名な業界だと自動車業界ではないでしょうか。AIを活用した自動運転などがそれにあたります。ただ、IT業界と自動車業界では考え方が根本的に異なっており、そこに難しい問題があるのではないかと思っています。
今回は、ITやAIの話と、これまでの不動産業界の話を交えながら、今後どのようにAIが不動産投資に関わってくるのか考えてみたいと思います。
IT・AIを自動車に取り込むのは困難?
IT業界においてはパレートの法則、バグ理論といった考え方があります。パレートの法則とは、重要な2割を押さえれば8割はカバーされるという考え方です。
またバグ理論とは、概ね出来上がったものを早めに世に出し、マイナーな不備(バグ・虫)は、あとで直していけばいいという考え方です。OSやアンチウイルスソフト、各種ソフトでも、毎月のようにアップデート版やセキュリティパッチ版、バージョンアップ版が出ているのはこういった考えに基づいたものです。
笑い話ですが、もしIT業界が自動車業界に進出したら、当然バグ理論に則ったものを自動車に搭載するので、ある日突然ユーザー(運転者・同乗者)は一人だけですと言われたり、フリーズや誤作動が発生したりといったことが起こるかもしれません。
ハッカー(不正侵入者)は、自動車業界もターゲットにし始めたといった話も聞きます。人を乗せた完全自動運転の車両がハッカーに侵入され、制御不能に陥ることほど恐ろしいものはないでしょう。
このように、ITの利便性と安全性は裏腹な関係にあるものです。なぜなら便利というのは、心無い人にとっても便利なものだからです。情報漏洩、情報改竄、情報消去、利用不能など、さまざまな悪事が自動運転車に向けて働く恐れがあります。
とはいえ、情報改竄や情報消去、利用不能は悪事の中では気づきやすい部類で、バックアップをしっかりとしていれば、後でリカバリーは可能です。
また、情報漏洩は漏洩したこと自体に気づかない場合もあり得ますし、一度情報漏洩してしまうと「人の口に戸は建てられない」の如く、リカバリーのしようがありません。
いくらIT・AIが進歩したとはいえ、人命に関わるような重要な事柄(交通・防衛・発電・医療等)に関しては、慎重に検討して導入する必要があると思います。
不動産業界におけるIT化の進捗は?
かたや不動産業界において、IT化は遅れているかもしれません。
この業界では未だにFAXを使用している業者もあるようです。FAXは時間や紙代などコストもかかりますし、受けて側の用紙切れなどで情報が伝わったのかどうか不明な場合もあります。
電子メールやメールマガジンの活用、ホームページに情報を掲載するといったことは、業界の傾向なのかあまりないように感じます。
反対にFacebookやツイッターといったSNSをユーザーにとって親しみやすい広告として大々的に活用している企業もあり、業界におけるITの知識格差は広がっているように感じます。
不動産業界の変化
私は32年前の1986年(当時28歳)の頃から不動産経営を行っていますが、当時は不動産を借りるといえば、街の不動産屋さんを訪ねるのが普通でした。また住宅を購入したい場合は、「週刊住宅情報」といった雑誌を購入するか、不動産屋さんを訪ねるという方法でした。
大家さんといえば、昔ながらの地主さんがアパートを建てて大家になるか、せいぜい一戸建ての所有者が空いた部屋を間借りさせる程度だったのです。サラリーマンが不動産経営をするといった発想は、パイオニア的な不動産会社(M社)から出始めた頃です。
当然、不動産経営者向けの情報源もありませんでした。その後1990年、バブルが崩壊しました。家賃はほとんど下がらないのに、物件価格だけが大暴落し、調達金利も下がっていきました。
結果的に利回りやキャッシュフローが良くなり、かつての値上がり益狙いから、家賃狙いに代わっていったのです。そうやって、家賃でローンが返せるようになっていったのです。
一方、不動産経営専門の不動産会社がぽつぽつと現れ始め、私が所有する物件も東京から札幌と拡大し始めました。当時、不動産経営者向けの物件情報といえば、せいぜい郵便によるダイレクトメールくらいでした。しかし、windows95が発売された1995年頃から、インターネットが普及し始め、新しい情報源が生まれました。
私がお世話になっている札幌の不動産会社の社長は、初めはインターネットに懐疑的でしたが、私はやがて普及するはずだと思い、ホームページの開設をすすめました。私の予想通り、インターネットは普及し、今や賃借物件を探している人のほとんどは、インターネットから情報を得るまでになりました。
住宅用売買物件についても、不動産経営用物件売買についても同様です。2000年代の頃でしょうか。東京ビッグサイトで開催された「全国賃貸住宅フェア」にて、「リスク・失敗談」についての講演を行った際、健美家の当時の社長が聞きに来られ、挨拶に来て下さったのを覚えています。健美家、楽待、不動産投資連合体など、不動産経営用サイトも大きくなっていきました。
これらの不動産経営用サイトは売買物件情報のみならず、不動産経営者コラム(私も、健美家・楽待で掲載していただきました)、セミナー情報も充実しています。
資金調達をする際に必要な書類やおさえておくべきポイント
今後の不動産業界でのIT・AIとの関わりはどうなっていくのでしょうか?
ビジネスや発明、何に関しても同じことですが、ヒントは常に、私達が抱える問題を解決する為に、こんなサービスや物があればいいなという「イメージ」の中にあると思います。
私の話になりますが、私は資金調達をする際に効率よく調達できる仕組みがあればと常々思っております。物件情報はある程度、不動産会社・各種サイトから得ることができますが、資金調達に関する情報はなかなか入ってこないものです。
しかも経済情勢や金融情勢、金融機関・支社店・担当者によっても意見がまちまちで、どれを信用すればいいのか分からなくなりがちです。
私がいつも気にかけているのは、
・自分自身にいくら融資可能なのか?
・どういった物件に融資がつくのか?
・所要時間はどのくらいかかるのか?
・融資条件(融資金額・金利・期間・連帯保証・別件担保等)は?
などといったことです。
もちろん、個人の属性や物件によってケースバイケースでしょうが、ある程度は定型化できるものと思われます。
また、資金調達を行う上で大変なのが整備書類です。個人の属性としては
源泉徴収票・給与明細・賞与明細・退職金予定表、確定申告書、家賃明細書、賃貸借契約書、
ローン支払予定表、納税証明書、固定資産税・都市計画税納税通知書・領収証、預貯金通帳、
貴金属明細表、株明細表
などといった、膨大な数の書類が必要になります。
物件情報については、ある程度不動産会社の方で手配してもらえますが、個人属性関係については、自分自身で整備せざるを得ません。少なくとも役所関係については、一元管理してほしいものです。各地に物件を所有していると、地方公共団体ごとに固定資産税・都市計画税納税通知書・領収証、登記簿謄本を用意しなければならず、全国展開している私にとっては結構な労力になります。
ちなみに海外では、物件情報に基づいて資金調達情報・提案の事例が提示される仕組みもあるようですが、日本にもこういった仕組みがあるといいなと思います。
ただし、昨今のスマートデイズ・スルガ銀行の「かぼちゃの馬車事件」のように、各種書類(源泉徴収票・預貯金通帳・株明細書、健康診断書、手付金領収証・重要事項説明書・売買契約書等)を偽造し、属性以上に無理な資金調達(高金利・無担保融資・定期預金積立金歩積両建・カード活用等)をさせ、不良物件を割高価格で買わせるような悪質な事例も多発しています。悪徳金融機関・不動産会社には十分に気をつける必要があります。
ある程度は情報を開示せざるを得ないことと思いますので、個人情報など重要機密情報保護には充分なケアが必要です。
こらからのAI・ITは生活にどう関わるのか?
最後にAI・ITがこれからの私たちの生活にどう関わっていくのかについて考えたいと思います。
到来が確定している日本の超少子高齢化社会に伴い、単身者の孤独死への対策は重要になってくると思います。老人ホームや高齢者用マンション・シェアハウス、デイケアサービスなどを運用する際にIT・AIの活用も考えられるのではないでしょうか?
例えば、生活の家具・家電に取り付けられた見守りサービスなどです。電気ポット、冷蔵庫、エアコン、テレビ、電話、風呂、トイレ、玄関ドアの開閉などが一定期間無反応だった場合や、生体反応がない場合に、見守りサービスセンターに連絡がいき、現場にスタッフが駆け付けるといったサービスです。
より安全で便利な世の中にしていくために、IT・AI技術が適切に使われるといいですね。
投資用不動産業界に関する情報が毎週届く!
不動産投資塾新聞社メールマガジン登録はこちら
著者紹介
加藤 隆加藤 隆
サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。