石川貴康の超合理的不動産投資術
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2019年2月22日(金)
区分所有マンションって本当に儲かるの?
不動産投資のエントリーモデルとして、区分所有マンション投資は有望です。私も初めて自分で購入した不動産は区分所有物件でした。
昔も今も、区分所有の勧誘もたくさんあります。だいたいのセールストークも変わっておらず、「儲かる」、「将来の年金の代わりに」、「赤字を出して税金を取り戻しましょう」というものです。
こうした勧誘やいわゆる「甘い」言葉を言ってくるのは、ほとんどブローカーです。それがセミナーや勉強会、コンサルタントのような形態をとっていても、セールスブローカーです。よくよく気をつけましょうね。
それでは、上にあげた「儲かる」、「将来の年金の代わりに」、「赤字を出して税金を取り戻しましょう」は本当かどうか考えてみましょう。
区分所有は本当に「儲かる」のか?
私の最初の投資案件は3戸のワンルームでした。不動産投資が一般化する前の2002年当時、不動産投資に関する書籍はほとんどなく、買ってみてどうなるかを試す感じでした。
最初の物件は文京区のワンルーム。16平米、駅から徒歩8分くらい、2階の北向きでした。購入価格は900万円程度。いきなり大きな借金は怖いので、現金買いしました。現金買いなら、失敗してもその現金を失うだけで済むからです。
購入時の表面利回りは年間家賃84万円(月額7万円)で9%超でした。ここからマンション管理費1万2千円、修繕積立金8千円、賃貸管理費(不動産管理に関する管理費)3千500円が抜かれるので、月額のネットの収入は4万6千500円でした。年に直すと55万8千円に堕ちて、ネット利回りで6.2%となります。さらに年間固定資産税が7万円、差し引き48万8千円となり、さらに利回りは低下し5.4%です。
減価償却費、所得税・住民税を考慮し、差し引きでざっくり税金支払いを10%と見て5万円くらい減るとすると、43万8千円くらいを所得税・住民税の税引き後手残りとすれば、4.9%になります。
単純に考えれば、900万円投資すれば年間4.9%で回って、手に43万8千円残るというものです。この前提は常に入居があって、修繕費を見積もっていませんから、そうしたリスクや費用を抜いても年に40万円くらいは手に残る感じです。900万円と投資に対し、4.4%になりました。
年40万円が、自分が働く以外の方法で収入となるのであれば悪くないでしょう。実際、当時の私は「儲かる」と判断し、その後すぐ2戸買い増したのです。
元本回収を考慮しても「儲かる」のか?
とはいえ、目先の収入はいいとしても、そもそも投じた900万円が回収できなければ、真に儲かったと言いにくいとも思いました。年40万円程度の手残りでは22.5年もかかります。もし、元本回収を考慮するとなると売却が必要です。
実際、私はこのワンルームを2016年に売却しました。所有していた期間の14年間で手残りは40万×14年= 560万円の回収です。売却価格は990万円でしたので、560万円+990万円=1550万円が回収されました。
譲渡所得に関わる税金を80万円、売却に関わる手数料を30万として差し引くと1550万円-(80万円+30万円)=1440万円です。登記に関わる費用等は算入していないのでもう少し悪化しますが、1440万円-900万円=540万円が差し引きのプラスで残ったキャッシュ、要は儲かったお金です。
この文京区のケースは、まあまあうまく行ったケースで結果的に「儲かった」投資でした。
最近の区分所有の表面利回り程度や新築で「儲かる」のか?
私が2002年当時買っていた区分所有はまだ価格も安く、利回りも高かったのですが、最近の利回りは低下しています。あっても7%、せいぜい5~6%でしょう。まして新築などは4%程度ではないでしょうか。
はっきり言って、これではあまり儲からないでしょう。先の私の例で見たように、表面で9%でも、実質手残りでは4.4%です。5~6%や、まして4%台では、手残りがでるどころか、持ちだしの危険があります。
さらにローンなど組んでしまうとローン支払いがのしかかり、キャッシュフローはマイナス、毎月持ち出しになる可能性があります。投資なのに、現金が流出したのではとても投資とは言えません。
売却で一気に元本と過去の支払い分を回収できればいいですが、そもそも所有する期間もプラスのキャッシュフロー、売価時は買った価格より多く回収できるというのが「勝ち」ですから、よくよく考えて投資しなければなりません。
ちなみに、所有期間も売価時もプラスのキャッシュフローを求める私にとって新築区分所有の投資はありえない選択肢です。もちろん儲かるならありですが、もっといい投資案件があるのに儲からない、あるいは運よく儲かってもたいしたことがない投資をあえてする必要もありませんから。
「将来の年金の代わりに」は本当か?
さて、セールストークで多い、「将来の年金の代わりに」というのは本当でしょうか。答えは、「本当だけど、それは儲かる物件を手に入れた時だけ」です。
つまり、なんでもかんでもいい訳ではなく、結果的に儲からなければNGですから、「“必ず”年金の代わり」になる訳ではないのです。
セールストークはセールストーク、個別案件は個別案件として評価し、判断しなければなりません。
「赤字を出して税金を取り戻しましょう」
所得税の損益通算といって、給与所得で払った税金を、損失が出ているその他所得で相殺して払いすぎた税金の還付を受けるというのが、「赤字を出して税金を取り戻しましょう」の意味です。
これも一時的にはありですが、そもそも投資で損を出して、税金をほんの少し返してもらおうというのは本末転倒です。儲かる投資を行って投資で税金を払っても、税金を上回る儲けを生んだ方が良いに決まっています。
損失がでる投資を推奨するなど狂気の沙汰です。もちろん、減価償却費による手残りも考慮してトータルの手残りを多くするという話はわかります。それでも損失を出して僅かな還付を受けるというのは、投資判断を誤ります。税金はきちんと支払って、さらにキャッシュを残すべきです。
私は区分所要投資をやめました
最終的に私は区分所要投資をやめました。一棟物や戸建て投資を中心にしたので売却しました。
区分所有は入居が確実な物件さえ買えばとても楽に運営できますから、投資としては悪くないと思います。ただ、あまり老朽化すると出口が描きにくいと思い、売却したのです。この判断は、今でも正しいと思っています。
しかし、近く築40年という古い区分所有を1戸買う予定です。その物件は高台にあり、湖を見下ろす南向きで、最高の景観が手に入るのです。おそらく販売当初は数千円万したことでしょう。しかし、古いので数百万円で買えそうなのです。貸せば表面で9~15%は回ります。
もし入居が困難でも、セカンドハウスとして自分で使っても良いほどの景観です。私の投資判断の一つが「自分が住みたいか?」というもので、今回はこの試験に合格です。
この物件は、夏に目の前の湖での花火大会もあるのです。借り手がつかないことはないでしょう。もちろん出口は厳しいですが、この高台に区分でも土地の所有権が残るので、建て替えに積極的に参加しても良いかもしれません。それに将来デベロッパーが黙ってないでしょうから、売却はできるでしょう。
不動産投資は多様です。私はあまり区分所有を積極的にはやりませんが、ケースバイケースですので、きちんと案件ごとに必ず儲かるかどうか検証しましょう。正解はありません。あとは、自分が投資しても破たんしないかどうかをよくよく考えて投資しましょう。絶対儲かる投資などありませんし、そんな投資を誰彼構わず紹介するというのは単なるセールスです。儲かるのはブローカーや手数料で稼ぐコンサルタントもどきです。注意しましょうね。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など