石川貴康の超合理的不動産投資術
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2018年8月30日(木)
保険と保証を使いこなすために知っておきたいこと
不動産を継続して買うための勘どころの1つに、保険と保証を使いこなすことがあげられます。不動産投資には、リスクがつきものです。リスクに対処するのが、保険と保証です。私もずいぶんとこの保険と保証に助けられました。今回は私の体験も含めて話していきましょう。
保険・保証がない不動産投資は街灯のない夜の国道を黒服で歩くようなもの
継続して不動産を買うためには、事故や事件に遭わず、粛々と資産を蓄えて、次々と買い進んでいくことです。しかし、事故や事件に全く遭わないということは難しく、大なり小なりなんらかの事故、事件は起きるものです。
仮に、事故や事件に遭ったとしても、なんとか乗り切っていくための道具が保険であり、保証なのです。しかし、保険や保証にはそれなりのコストがかかるものです。たとえば火災保険料。とても高く感じます。しかし入らなくても大丈夫だろうとたかをくくると痛い目に遭います。
「そんなことはめった起きないから、対策不要」と考えていると、まさかの事故が起きます。その時は自己資金での対応になり、結局のところ、保険料よりももっとお金がかかるのです。保険も保証も、事故が起きた後では加入できません。事故が起きる前に加入すべきなのです。
一寸先は闇、保険も保証も準備しないということは、どうせ車にひかれることはないだろうと、街灯のない夜の国道を黒服で歩くようなものです。車にひかれてからでは遅いのです。
東日本大震災発生、地震保険に入ってなかったために大損害
まず、私が痛い目にあった保険の話をしましょう。地震保険へ未加入のため大きな痛手を被ったのが東日本大震災の発生です。
私の物件は、主に茨城県と東京都にあります。東京は過去関東大震災があったため地震保険に加入しましたが、茨城は地震県ではあるものの大震災があったとの伝承がなかったので、まあ大丈夫だろうと火災保険だけにしてしまったのです。
そこで東日本大震災が発生。地震が起きてからではどうしようもありません。マンションは駐車場の路面がめくれ、建物の壁は崩れ、排水溝が壊れました。この修理だけで300万円を超えました。地震保険に未加入だったため、すべて自己資金です。
その他、アパートのユニットバスの破壊、階段の傾斜、共用部分天井の崩落など大損害でした。すべて自己資金。地震保険に入っておけばよかったと後悔しました。この痛い教訓を胸に、今では必ず地震保険に加入しています。
地震保険のメリットデメリット
地震保険のメリットは地震の被害を補償してくれることです。当たり前のようですが、地震の被害は地震保険でしか補償されません。あとは所得税の地震保険料控除があること、法人の場合は経費になることです。
デメリットは、地震保険に加入するには、火災保険への加入が必須になること。地震保険は火災保険の付帯的な保険として加入します。そのため、地震保険は火災保険保証額の50%までとなっています。そのうえ、建物は5,000万円、家財は1,000万円という上限付き。また、地域により保険料が違うのです。地震の起きやすい地域は保険料が高いのです。
それでも、地震保険は地震に伴う補償があるのですから入るべきです。また、巨大地震で保険会社だけで補償ができない場合は国が再保険を行う制度があり、支払いを保証してくれるのでご安心ください(日本地震再保険)。
火災保険に助けられた数々の事件・事故
火災保険はまさに必須です。私も何度助けられたことか。入居者が起こしたボヤ、アパート外壁への車の衝突、風によるアンテナの破損と他の家の屋根への損害、雨による水漏れなど、枚挙にいとまがありません。
火災保険は保険会社によって様々な種類があります。建物のみ、家財のみ、その両方が補償対象として選択できます。また、火災、落雷、破裂・爆発による損害までを補償する内容だったり、さらに風災・雹(ひょう)災・雪災による損害を補償するプランだったり、その他に、盗難・水濡(ぬ)れ・車両の飛び込み等による損害を補償するプランなどがあります。
火災保険は自分の物件の状況を判断してプランを選びます。私の場合、できるだけ補償範囲の広いものを選んでいます。コストはかかりますが、メリットが大きいと思うからです。
ただし、すべての物件でフル補償に近い保険に入っているわけではありません。たとえば、高台にある物件に対しては、水災害への補償までは付けていません。
火災保険は、自分の物件でなく、周辺からの類焼被害も補償してくれます。類焼に関しては著しく失火者(家事を出した者、ようは火元)に重大な過失がない場合、失火者の火災での被害は免責なのです。このようなもらい火に対応するためにも、火災保険は必須です。
コストはかかりますが、保険料は火災保険料控除になりますし、法人の場合は経費になります。保険はまさに「転ばぬ先の杖」、火災保険と地震保険は不動産投資では、必須なのです。
保証という「転ばぬ先の杖」も不動産投資では必須
保険とは別のもので、不動産投資では「保証」という仕組みがあります。保証も保険と並ぶ「転ばぬ先の杖」です。
保証は、入居者の信用確認の仕組みであり、万が一の弁済の仕組みです。入居者の家賃滞納に備える仕組みといえば分かり易いでしょう。保証には、昔からある「保証人制度」と最近一般化した「保証会社」があります。
形骸化しつつある不動産における「保証人」という保証形態
大家にとって家賃の滞納は痛いものです。長い間滞納を繰り返した挙句に夜逃げでもされようものなら大打撃です。長期的に不動産投資を行う大家にとって滞納や夜逃げの被害は最小にしなければなりません。
そのため、昔から「保証人」制度があります。入居者の親族などを保証人にたてて、滞納などがあった場合、保証人が本任に代わって弁済するというものです。昔は、必ず保証人をたてて賃貸借契約を結んだものです。
しかし、保証人がきちんと弁済をしてくれないケースが少なくないのです。かく言う私も、2件ほど長期で大きな滞納がありましたし、夜逃げも1件ありましたが、この時、保証人は一切弁済に応じてくれませんでした。要は、大家の泣き寝入りになったのです。
中でも1件はあまりに悪質で額が大きいので裁判を起こしました。入居後、一度も家賃が支払われず、2戸を占有され、督促や警告を繰り返しても「払う、払う」と言うだけ。その回答も、すべて噓でした。裁判で和解をしても、本人も連帯保証人も、弁済能力なしのため一銭も回収できませんでした。その後強制執行になりましたが、すべて私の自腹。2年分×2戸の損害と裁判費用、強制執行費用が重くのしかかりました。つまり、保証人制度は保証人に弁済能力がなければ無意味なのです。
進展してきた「保証会社」とそのメリットとリスク
こうした事情を勘案して、親族等の個人による保証人制度による保証ではなく、法人で保証を行う「保証会社」が登場しました。入居者が保証料を支払うことで、その後の滞納に対する保証や悪質な場合の退去を代行してくれるのです。
私はいまでは、必ず入居の際は「保証会社」への加入を義務づけています。これでどれほど対応が楽になったか、計り知れません。150戸を超えて保有していると、どうしても一定の滞納が出てしまいます。そうした際の家賃の弁済があるので、大家としてはとても助かります。
また、悪質な場合、退去も行ってくれます。3カ月を超える滞納の場合には、かなり確実に退去を執り行うようです。先の私の例でもあるように個人で退去をさせようとすると1年も2年もかかります。また、裁判により強制執行をしようにもすべて大家の自腹などということはありません。保証会社が受け取った保証料で対応してくれるのです。
どんなに厳密に入居者を選んでも、滞納は発生します。保証会社で対応できるなら、とても助かります。また、滞納ではなく、入居者が突然家賃を払えなくなることもあります。
以前私の物件で入居者が逮捕される事件がありました。こうなると家賃が入ってきません。こうした重犯罪による入居者の逮捕・拘留時の対応もしてくれました。
最初からリスクをなくす「信用チェック」について
とはいえ、入居後の保証ではなく、できれば入居前にチェックして、より信用力のある人に入居してもらいたいものです。こうした要望に応えてくれるのが、保証会社や信販会社の「信用チェック」です。
保証会社や信販会社が入居申し込み者の信用チェックをしてくれます。私の物件では、今まで、信用チェックでNGになった入居申し込み者はいませんでした。しかし、先の例で入居後から一切家賃を払わず2年間居座ったような悪意のある入居者は事前にチェックできたことでしょう。
こうした信用情報をデータベース化しようという動きが一部にありますが、個人情報や人権の問題で進んでいません。しかし、共通データベース化していなくとも、毎回きちんとチェックすれば、かなり確実に事前対応ができるでしょう。
ただし、保証会社もきちんと選別すべし
このように入居者の信用をチェックしている保証会社の方が倒産してしまったという笑えない話が以前ありました。結構大手の保証会社でしたので、私も青くなりました。調べてみると私の物件では使っていなかったので事なきを得ましたが……。
保証会社の信用さえ、事前にチェックしなければならないほど、信用というのは脆く、大切なものなのだと感じました。
不動産投資にはリスクがつきもの、そのリスクを下げて不動産投資の永続性を高める
不動産投資にはリスクがつきものなのです。リスクがあるものの、そのリスクに対応していくことさえできれば、恐れることはないのです。リスクにさえ適切に対応できれば、ビジネスとして成り立ちます。保険と保証は継続的に不動産を買い進めるための、必要なリスク対応なのです。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など