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石川貴康の超合理的不動産投資術

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配偶者等のパートナーに協力してもらうための方法とは

目次

さて、第3回目の「金融機関との上手な付き合い方と絶対にやってはいけないこと」に続いて、今回は「配偶者等のパートナーと法人化」です。不動産を継続的に投資していく重要な方法として、不動産管理業者と金融機関をあげてきましたが、最後のパートナーは配偶者等の近親者、そして法人です。

個人で投資する際は、配偶者をはじめ近親者が重要なパートナー

個人で投資する際、どうしても連帯保証人を求められます。連帯保証人とは、連帯して債務の完済に責任を負うものです。借金を負った者が返済不能になった際に、連帯保証人は有無も言わせずに取り立てに遭います。

昔から、「保証人になってはダメ」との親の教えに従ってきた人が多いため、連帯保証人になることへのアレルギーは誰しも相当高いと思います。返済が滞れば、逃げ場がなくなりますし、そもそも、その借り入れでなんの利益も受けていないのに、連帯保証人は債務返済を強制されます。返済原資がなければ、資産が取り上げられます。下手すると、住む家もなくなるという事態も生じるわけです。

こうしたきつい法律がある連帯保証を行う連帯保証人に、誰がなってくれるでしょうか。基本的には誰もなってくれません。唯一考えられるのは、生計を一にし、運命共同体的な配偶者くらいではないでしょうか。

もちろん、親、親族も候補者です。しかし、そうそう簡単になってくれるものではありません。何かあれば、財産を失うのですから、リスクばかり負って、何のメリットもないのです。

しかし、なおさら見ず知らずの人はなってくれませんから、配偶者や近親者になってもらうしかないのです。私が初めて融資を受けて不動産投資を開始した時は、配偶者が連帯保証人になってくれました。6,000万円の融資です。なにかあれば、配偶者がこの6,000万を担うことになるのです。普通、簡単に返せない金額です。

配偶者、近親者を連帯保証人にするときの留意点:破たんしない体制確保

実を言うと、私が最初に配偶者を連帯保証人にする際、配偶者からの大きな抵抗はありませんでした。なぜなら、いろいろなセーフティーネットを張っておいたからです。まず、貯金をそれなりにしておきました。金融資産すべてを投資に充てずに残しておき、何かあったらそのお金を使えるようにしておきました。

また、既に書いた通り、最初のワンルーム投資3戸はすべて自己資金でしたから、なにかあれば、ワンルームマンションを売る手もありました。もちろん、ワンルームマンションの家賃収入もあり、キャッシュが入ってくるため、このお金も使えます。

そして、なにより私は本業を維持し、それなりの収入を維持していました。アーリーリタイヤなど目指さず、ひたすら稼ぐ。つまり、いざとなった時にキャッシュに変えられる金融資産、不動産資産がある上に、仮に借金を抱えた1棟物の家賃収入が陰っても、ワンルームの不動産収入、私が健康な限り入ってくる本業による収入があるのです。

おそらく破たんしない、しても、なんとか被害が最小限に抑えられるという状況を作ったのです。もちろん、配偶者も働いていましたから、自分の収入も返済に充てることができると算段したでしょう。自分がこっそり貯めているへそくりの金融資産も勘定したのかもしれません。

さらに、私が団体信用生命に加入し、私になにか起きたら、ローンが保険で返済できるようにもしました。これで、私が死んでも、ローンが消えて収入だけを生む不動産が手に入ります。こうして、破たんしないための体制を築いて、さらに、私に問題が起きても何とか返済できる原資を用意したのです。これで、配偶者も少しは安心したでしょう。連帯保証人になってくれました。以降、同じ感じで継続してなってくれています。

投資家としての信用も、連帯保証人に対して積みあげておく

また、投資家として信用できるという実績を少しでも良いので配偶者に見せるようにしてきました。必ず入居が付き、確実に家賃収入が入り、お金が積みあがっていく様を見せました。さらに、家賃収入には一切手をつけず、贅沢や遊興はせず、回収した資金は次の投資に使う姿勢を見せました。今でも、投資による収入を生活費や遊興に使うことは一切ありません。投資による収入を次の投資に回す自制心は、配偶者だけでなく、金融機関も信用できると見てくれているようです。

それに、私は簿記・会計、税法に詳しく、10年以上確定申告をし、毎年きちんと納税している姿も見せています。きちんと稼いで、お金を残し、納税し、投資することができるというのを見せているのです。

不動産投資で一発逆転とか、リタイヤだとかがしたいわけではなく、贅沢や遊興がしたいわけでもなく、守りの資産として淡々と投資し、一方で貯金をする姿勢を維持していました。この方面への配偶者の信用は高かったと思います。こうして、信用を積み上げていたので配偶者はすんなり連帯保証人になってくれることを承諾してくれました。
 
連帯保証人になるのは本当に怖いことです。私でさえ、自分が連帯保証人になることを想像したら、怖くて怖くて仕方ありません。しかし、個人融資の場合、残念ながら日本国では連帯保証人が必須なのです。致し方ありません。

アメリカのように連帯保証などと言う“人質”をとるのをやめて、破たん時は担保不動産だけ回収する“ノン・リコース”型の融資にしてほしいものです。しかし、残念日本国ではいまだに連帯保証人制度を用いて、人が人の借金で破たんする仕組みが続くのです。慎重に融資を受け、破たんしないように準備しなければなりません。

近親者がいない場合のパートナー:信用保証協会

では、配偶者などの近親者がいない場合、不動産投資ができないかというと、そんなことはありません。公的な保証人となってくれる機関があるのです。それが「信用保証協会」です。

信用保証協会は、審査の上、ある一定の保証料を支払えば融資時の保証人になってくれます。かく言う私も、信用保証協会を使っての融資を受けています。

連帯保証人を要求しない場合は、信用保証協会を使う旨、金融機関からの示唆があると思いますので、その流れに乗ります。金融機関が信用保証協会とのやり取りの準備をしてくれるので、それに従って保証を受けます。

残念ながら、日本の金融機関の融資は、すべからく担保主義で、不動産も担保に取られたうえに、“人質”としての人的担保である連帯保証人を要求されます。連帯保証人は破たん時の影響が大きいので、連帯保証人ではなく信用保証協会に保証をお願いできるのであれば、こちらを積極的に使いたいものです。

もちろん、保証料の支払いが生じますが、一種の保険だと思えばいいですし、不動産投資の経費として計上できますから、悪いものではありません。

法人と言うバーチャルな「人」を通じた投資

個人投資だけでなく、法人で不動産投資をすることも可能です。私は、最近の投資はすべて法人での投資にしています。個人=自然人での投資は無限責任で、死ぬまで負債の返済に追われますが、法人での投資は、基本的に出資金までの有限責任です。こういう意味でも、法的に有利なのです。

法人でも必要な連帯保証に関する考えかた

しかし、日本国の場合、法人での投資に関わる融資でも“人質”が要求されることがあります。経営者個人保証として、経営者が連帯保証人にされるのです。これは、有限責任である法人のビジネススキームに無限責任を持ち込むことです。資本主義の発展上、非常に良くない慣行です。

無限責任にしてしまっては、失敗が許されず、誰も投資しなくなります。日本国で、起業や投資が盛んでない一因は、こうした人的担保をとった“人質”主義があるからです。残念ながら、法人でも、経営者個人保証としての連帯保証の慣行は受け入れざるを得ません。

一方で、こうした経営者の個人保証が経営者の生活を破たんさせ、起業・投資を妨げるとして、金融庁から不適切な慣行だとの表明もされています。「経営者保証に関するガイドライン」が中小企業庁から出され、『「経営者保証に関するガイドライン」の積極的な活用について』という政策報告も金融庁からも出されています。

このガイドラインが出た前後、何度か法人での不動産投資に関わる融資で連帯保証人にならないで済んだこともありましたが、最近また、経営者保証を求められました。この辺はガイドラインでしかないので、金融機関の方針次第なのでしょうね。

できれば、法人が経営者という個人保証を求められずに積極的にビジネス展開ができ、失敗しても再挑戦できる国にしてほしいものです。とはいえ、残念ながら法人でも連帯保証がとられます。自分自身が保証人なのでしかたありませんね。

とにかく、連帯保証人を巻き込まないように準備しておく

結局、日本国では連帯保証が要求される慣行はまだ続きそうです。連帯保証人がいなければ融資が引けず、投資ができないなら、絶対に破たんしないだけの準備をして投資しなければなりません。そういう意味で、不動産投資は、保守的に行い、きちんと収益をあげ、ムダ使いせずに資金を貯め、破たんしないようにしなければなりません。
 
また、もし、破たんがあっても、連帯保証人が“破産”しないように資産や保険を準備しておかなければなりません。そうした備えがあって初めて、人を巻き込んで継続投資ができるのです。

不動産投資は、つくづく地味で、リスク回避を重視した投資なのです。ゆっくりと、慎重に増やしていきましょう。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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