不動産投資の最新動向
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2019年12月28日(土)
なぜ不動産会社から携帯に「売ってください」とかかってくるのか
アパートやマンションなどの賃貸物件をお持ちの方、ここ数年で知らない不動産会社からのダイレクトメールや電話営業がしつこくなってきていると感じませんか?
中には教えた覚えもないのに、突然知らない不動産会社から携帯電話に電話がかかってくるということもあるようです。
そこで本記事では、知らない不動産会社から売ってくださいと連絡が来てしまう理由や適切な対処法について詳しく解説します。
しつこい営業電話にお困りの方はぜひ参考にしてください。
あまりにもしつこい営業電話の実態
不動産投資家の方であれば、「郵便ポストを開けたら不動産会社のダイレクトメールが大量に入っていた」という経験があるでしょう。
以前は
「当社にご売却をご相談ください」
「当社に売買仲介をご依頼ください」
といったような一般的なダイレクトメールが多かったのですが、
最近では、
「○○さんがお持ちのマンションAを2,000万円で買取を考えています」
といった感じで具体的な金額を記載したうえで判断を迫るダイレクトメールが増えています。
受け取った側からすると、何もこちらから情報を教えていないのになぜ所有している物件名や連絡先、さらには査定額まで出てしまうのか不審に思うかもしれません。
ダイレクトメールだけなら届いたものを無視すればよいのですが、自宅や携帯に直接電話をかけてきて売却するよう営業されるケースも増えているようです。さらに酷いと勤務先にまで電話をかけて営業してきたという事例も報告されています。
不動産会社が生き残りをかけている
公益財団法人不動産流通推進センターが発表した2018年の下記統計データによると、宅建業者数は1999年の段階で139,288件だったのが、2016年では123,416と15,000件以上も減少しており、特に中古物件の売買を専門に扱っている不動産会社は生き残りをかけてしのぎを削っています。
https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/toukei/201803/201803_1gaikyo.pdf
※公益財団法人不動産流通推進センター
特にここ数年は金融緩和政策や東京オリンピック2020年開催決定などによって不動産価格が高騰しており、高値で売りたい所有者を不動産会社同士で取り合いする状況になっているのです。
では、なぜ教えてもいないのに自宅や携帯電話、勤務先などの情報が知らない不動産会社に漏れているのでしょうか。
不動産投資家の個人情報が大量に流出しているわけ
自宅や携帯電話に知らない番号からたくさん電話がかかってきて困っている、という話を最近よく耳にしますが、そもそも不動産会社はどうやって不動産投資家の個人情報を入手しているのでしょうか。
謄本から所有者の住所がわかる
不動産を購入すると登記簿という国が管理しているデータバンクに、所有者名や住所などが登記されます。登記簿は法務局に行けば誰でも閲覧することが可能で、インターネットでも簡単に情報を取得することが可能です。
そのため不動産会社は買い取りたい物件に目星をつけると、不動産登記簿を閲覧して所有者の所在地を確認します。次にNTTの104で電話番号照会をして、登録があればその番号に営業電話をかけるのです。
NTTに固定電話の登録がない場合については、登記簿に登録されている住所に売却斡旋のダイレクトメールを送付するといった手法で営業をかけてきます。
携帯電話や勤務先に電話がかかってくるわけとは
謄本を取得することで住所や固定電話が知られることは致し方ないとしても、教えてもいない携帯電話や勤務先の電話番号をどうして知っているのでしょうか。
昭和から平成初期のまだ個人情報保護が厳しくなる以前は、いわゆる「名簿屋」といわれる業者がいて、有名大学の卒業生名簿や連絡網を不動産会社が購入して営業リストとして活用していました。
個人情報保護法などの影響で、最近名簿屋はあまり見なくなりましたが、不動産会社同士の競争が激化する中、個々の営業マンからも個人情報が漏れている可能性が考えられます。
不動産業界特有の事情
不動産売買の営業職は非常にノルマが厳しく、入社後すぐに辞めて転職してしまう人もたくさんいます。退職する際に管理物件の所有者情報を持ち出すケースもあり、酷いと他の不動産会社に名簿として売りさばこうとするケースもあるようです。
このようにして漏れた情報が、不動産業界全体に出回ってしまっているため、賃貸物件を所有しているだけで多くの不動産会社から営業電話がかかってきてしまうのです。もちろん合法的なやり方ではないので、不動産会社としても表立って営業電話はできません。
そこで、営業マンの個人携帯から電話をかけさせて、万が一の時に会社の関与を否定できるようにしているのです。知らない携帯番号から営業電話がかかってくるのはこのためです。
電話に出れば出るほどかかってくるわけとは
不動産会社からの営業電話は、酷いケースで1日に数十件かかってくることもあるようです。
人によっては律義にその都度電話に出て断りを入れている方もいるようですが、実は不動産会社からの営業電話に出てしまうと、たとえ断りを入れたとしてもさらに多くの電話がかかってくる可能性があります。
電話に出る番号がリスト化されている
かかってきた営業電話にその都度断りを入れている方からすれば、なぜかかってくる電話が増えるのか不思議に思うことでしょう。
そもそも、このような営業電話は不動産会社が日々何百件、何千件と電話をかけており、そのうち電話に出てさえもらえない番号はたくさんあるため、たとえ断られたとしても電話に出てくれる番号というだけで営業マンからすると「脈あり」の部類に仕分けされリスト化されていくのです。
実際に、断られたとしても何度もしつこくかけ続けたことで、相手が根負けして売ってしまったというケースもあるくらいです。
リスト化されてしまうと、そのリストごとほかの不動産会社に流出することもあるため、どんどん営業電話が増えていってしまいます。
しつこい営業電話を防ぐ対策
営業電話についてはたとえ断ったとしても、出れば出るほどかかってきてしまうため、営業電話を減らすためには別の対策が必要です。
着信拒否が最も有効
しつこい営業電話を減らす最も効果的な対策は、指定番号以外をすべて着信拒否に設定することです。不動産会社は電話に出る限り何度でもかけてきますので、着信拒否に設定して一切電話に出ないようにすることで相手に交渉の余地が一切ないことをわからせます。
電話にでない番号については徐々に営業電話のリストから外されていくため、かかってくる電話が減るようになるのです。
留守番電話に要件を吹き込ませる
知らない番号をすべて着信拒否にすることが難しい方については、留守番電話に設定するという方法もあります。
知らない番号についてすべて留守番電話につながるようにしておけば、必要な番号だけ後でかけなおしたり、留守番電話に要件を吹き込んでいる途中で電話に出たりといった対応も可能です。
間違えて電話に出てしまった場合の対処法
着信拒否や留守番電話といった対策をとる前に営業電話がかかってきてしまうと、つい間違えてとってしまうことも考えられます。
そこでここでは、間違えて営業電話をとってしまった場合の適切な対処法について解説します。
断ってもかけてくるのは違法性あり
不動産取引における契約の締結に関する次の勧誘行為については、宅建業法施行規則によって規制されています。
・断ったにも関わらず、その後もしつこく電話をする行為
・長時間にわたって電話を切らせない行為
・深夜や早朝に電話をかける行為
・脅迫めいた発言をする行為
・自宅に押しかけて契約を迫る行為
これらの行為はすべて違法性が高く、発覚した場合は宅建業者に行政処分が下る可能性があります。上記規定を用いて悪質な営業電話を撃退するためには、電話に出た際に次の点について確認し記録しておくことが必要です。
・電話がかかってきた日時
・不動産会社の会社名および担当者名、連絡先
・電話でやり取りした内容
上記について相手に確認したうえで、売却するつもりはない旨明確に相手に伝え、万が一かかってきた場合は国土交通省に通報すると告げておけば再びかかってくることはないでしょう。
営業電話をかけている担当者側も上記の規定があることを知っているため、相手からそのことを具体的に指摘されると比較的すんなりとあきらめてくれることが多いです。
トラブルなく不動産を売却するためには
今回は不動産会社のしつこい営業実態について解説してきましたが、実際本当に所有している不動産を売却する場合であれば、これらの不動産会社の斡旋に応じても大丈夫なのでしょうか。
また、トラブルなく所有している不動産を売却するにはどうするのが一番良いのでしょか。
電話営業してくる会社は避けるべき
電話営業してくる不動産会社の中には、非常に高い買取金額を提示してくるケースも少なくありません。
売却を考えている人からすると、金額さえ高ければお願いしてみようかな、という気持ちになるかもしれませんが、実際に依頼すると後でトラブルになる可能性があるため注意が必要です。
そもそも、不適切な方法によって入手した個人情報を使って営業をかけてきている時点で、その不動産会社の社会的な信用度を疑うべきですし、提示してきている金額についてもいわゆる「おとり」の可能性もあります。
こういった不動産会社の多くは、高い金額をチラつかせて専属専任媒介契約を先に結んで他社で売却できない状況にして囲い込んだ後に、適当な理由をつけて低い買取金額で妥協して売るよう迫ってくるのです。
提示してくる金額の全てが「おとり」とまではいいませんが、少なくとも不動産投資家としては「おとり」だと思って構えておかないとトラブルになる可能性があります。
要注意な不動産会社の特徴
不動産業界はもともといた不動産会社から独立して開業する人が多く、最近は開業したての実績のない会社が乱立している状況です。
こうした不動産会社の中には、過去に業務停止などの行政処分を受けたメンバーがその会社を捨てて新たに設立して営業しているようなケースもあるため、設立して日が浅い不動産会社には特に注意しなければなりません。
宅建業者は免許番号に(1)のように更新回数を表す数字が記載されます。
宅建業登録後最初に発行される免許番号は(1)と記載され、その後5年の更新ごとに数字が増えていくため、数字が大きければそれだけ長期にわたって宅建業を営んでいる実績のある会社である可能性が高いです。
免許番号が(1)で違法な電話営業をしている不動産会社については、行政処分を覚悟の上で違法な電話営業をしている悪質な業者である可能性がありますので、できるだけ相手にしないよう注意しましょう。
自分のペースで不動産会社と交渉するコツ
ダイレクトメールを送ってきた不動産会社に問い合わせをする際には、できるだけ電話ではなくメールで問い合わせすることをおすすめします。
不動産会社に一度電話をすると、その後もしつこく営業してくることが多く、電話で直接話をすると不動産会社の希望額で強引に説得されてしまう可能性もあるため、最初のうちはできるだけ直接の接触は避けてメールで様子を伺う方が得策です。
メールのやり取りである程度自分が納得できる価格を提示された時点から電話でやり取りをした方が、会話のペースを営業マンに握られずに済むでしょう。
まとめ
不動産会社のしつこい売却斡旋電話はすでに社会問題化しており、国土交通省のホームページでも注意を促しています。投資家の中には斡旋電話にうんざりして処分するように物件を手放してしまう方もいますが、それこそ悪質な不動産会社の思う壺です。
こうした売却斡旋電話によって、本来の売却すべきタイミングを見誤ってしまうことが何よりの問題なので、かかってきた電話についてはできるだけ相手にせず、売却に興味が出た際にはまずメールなどで問い合わせて、現在の相場や成約事例などについての具体的な情報を提示してもらった上で依頼すべきかどうか判断するようにしましょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。