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業界「グレーゾーン」の真相~これからの「不動産投資リテラシー」を身につけるには?

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実は伝統芸だった!?「フラット35不正利用」の実態に迫る

目次

不動産業界には、エンド側(大家)が知らない、業界独特の「グレーゾーン」な仕組みがあると一般的には考えられがちです。しかし、それらはユーザーの無知が生み出したイメージであることが多いのも事実です。本連載では、実際に起きた事件・騒動等を例に、大家として「確かな情報」を掴む方法を、一般社団法人首都圏小規模住宅協会・代表理事の小島拓氏に不動産投資塾編集部が聞きました。今回のテーマは、「フラット35不正利用」の実態です。

「シェアハウス問題」と「フラット35不正利用問題」の根本的な違いとは?

――現在、再びフラット35の不正利用が問題視されています。本来は自分で住む「居住用物件」を購入するためのローンですが、実際には「投資用物件」の購入資金に使われているケースがあるようです。なぜこのようなスキームが生まれたのでしょうか。

小島拓・代表理事(以下敬称略) 「生まれた」というよりは「すでにあった」といった方が正確かもしれません。業界内では一種の伝統芸のようなもので、フラット35に限らず、自宅を買うための住宅ローンで投資用物件を購入する人は以前からいました。今になってフラット35が問題視されるようになったのは、シェアハウス問題などをきっかけとして、不動産業界の不正に厳しい目が向けられるようになったからでしょう。その過程で、以前からあったこの問題があらためて注目されたというのが大まかな流れだと思います。

――シェアハウス問題とフラット35不正利用問題は似たタイプの問題なのですか?

小島 いずれも不動産業界内で起きた問題という点では共通します。しかし、本質的に異なるのは、シェアハウス問題は「不動産業者」や「金融機関」が加担し、大きなトラブルに発展したという経緯がある一方、フラット35不正利用は物件の買い手である「投資家」が主導している点です。窓口はフラット35の代理店であるのですが、契約の際には住宅購入用だと説明しているはずですし、投資用物件の購入用だと気づいていない金融機関も多いと思います。

――つまり投資用物件を買うという「本来の意図」を隠してローンの申請をしているということですね。

小島 その可能性が高いでしょうね。融資を申し込む際の手続きの中で「自宅用で間違いありませんね」という確認がストレートにあるはずです。その時に「そうです」と答え、融資を受けているはずです。

――シェアハウス問題は高く買った投資家が損をして、物件を扱った業者や物件の売主が儲ける構図になりました。フラット35不正利用は、買い手も売り手も間に入る業者や金融機関なども誰も傷つかないスキームに見えますが…。

小島 傷つくかどうかはともかく、機構のお金を不正利用している点は問題です。投資用物件を買うために虚偽の申請をしたとすれば、そこも重大な問題でしょう。ただ、虚偽かどうかの判断が難しいのは、本来自宅用として融資を受けた人が、やむにやまれない経済的な問題などで、物件を貸さざるを得ない状況に陥る例もあるからです。

例えば、物件購入後に転勤になり、賃貸に出すこともあるでしょう。会社を辞めるなどして家計が苦しくなり、自分は安い賃貸に引っ越して、物件を貸したお金でローンを返済するケースもあります。いずれの場合も、形としては投資用物件を買った場合と同じになるため、買い手がどんな意図を持って融資を受けたか明らかにするのは難しいのです。フラット35の制度としても、適正な申請をすれば物件を貸しても問題ないことになっていました。

――不正利用の目的はやはり投資先を確保することなのですか?

小島 住宅ローンは投資用物件の融資よりも低金利ですので、そのメリットを狙おうと考えた人は多いと思います。投資用物件の融資枠がいっぱいになった人が、住宅ローンの枠を使ってさらに買い増すようなケースもここに含まれるでしょう。また、事業資金、独立資金、すでに抱えている消費者金融の借金の借り換えなどのために、オーバーローンで借りるという目的も聞きます。例えば、2000万円借り、1500万円で物件を買い、残りの500万円を別の用途に使うといったケースです。

――資金繰りの手段となったわけですね。

小島 はい。その点もシェアハウス問題と一線を画します。シェアハウス問題は一棟投資で高利回りという謳い文句で、比較的高属性な人が手を出しました。一方、フラット35は手持ちの資金が少ない人が手を出しています。お金がない人たちの資金を作りたいというニーズがフラット35不正利用のスキームにはまったのです。

――手持ちの資金が足りない状態で投資しようと考えたことがそもそもの問題の発端なのでしょうか。

小島 十分な資金があれば、わざわざ危ない橋を渡って不正利用する必要がありません。その点から見れば、投資物件を買うよりも資金を作ることの方が先だったといえるでしょう。ただ、手持ちの資金ゼロの人が投資したいと考えることや、フルローンを組んで投資することが悪いとは思いません。相場の未来は誰にもわかりません。

リーマンショック後のように不動産の相場が崩れている時であれば、自己資金ゼロでも、無理やりローンを組んで物件を買った方が結果として儲かることもあるからです。サラリーマン大家レベルでいえば、当時の新築ワンルームマンションや築浅マンションがそれに当たるのではないでしょうか。購入時には不満があった投資家も、後に時代が良くなりしっかり利益を出しました。もちろん、その際にも物件の良し悪しを判断する目は必要だと思いますが。

――相場が崩れた時はリテラシーなど関係なく「安い」「買おう」と特攻できる人が儲かるのかもしれませんね。

小島 相場が崩れて投機の要素が強まると、知識や経験があることが逆に恐怖心を生み、行動力の妨げになることがあります。不動産に限らず、暴落時に突っ込んで儲けた話は投資界隈によくある話です。成功している大家や不動産業者も、リーマンショック直後に物件を買った人がたくさんいます。そういう勝ち方を狙うならリテラシーはいらないでしょう。ただ、そのような機会は滅多にありません。着実に勝つならリテラシーを高めることは不可欠です。

――借金、生活費、資金繰りなどに困った人がはまりやすいという点を踏まえると、貧困ビジネスとして悪用する人もいそうですね。

小島 いると思います。過去に悪徳業者が関わった例として、資金難に陥っている人やホームレスのような人にフラット35で融資を受けさせたケースもあります。そこまでいくと物件をめぐる問題というより「融資詐欺の領域」になります。

知識不足、勉強不足の人が軽い気持ちで不正利用した結果、詐欺の一味や、場合によって首謀者と見なされることもあります。目先の利益に目を奪われ、リテラシーを無視した投資は非常に危険だと思います。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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