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不動産投資の最新動向

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出口戦略のない不動産投資は必ず失敗する

目次

不動産投資は、物件を買うことやオーナーとなることが重視されがちです。極端な例として、「オーナーになった。家賃収入が得られる。これで安泰」と、まるでゴールについたかのように感じる人もいます。しかし、それは大きな誤解です。今回は出口戦略の必要性についてお伝えいたします。

物件を手放す時が不動産投資のゴール

物件を買うことは、不動産投資のスタートです。ローンの返済や入居者の確保といった様々な課題はその先にあります。いずれ物件を手放す時が不動産投資の本来のゴールなのです。

実は、その視点がないまま不動産投資をスタートしている投資家も少なくありません。つまり、出口が曖昧、または出口のイメージがないまま、オーナーになっているということです。

不動産投資のプロから見ると、これは非常に危険です。出口のイメージを持たないということは、自ら八方塞がりの状況に飛び込むのと同じことだからです。
例えるなら、行き先を決めず、地図も持たず、深い霧の中を旅するようなものです。

途中で怪我したらどうするのでしょうか。お腹も空くでしょうし安心して眠れる場所も必要です。行き先がわからなければ、次の一歩をどちらの方向に踏み出せば良いかわかりません。地図がなければほぼ間違いなく迷子になります。

不動産投資も同じで、オーナーは様々なリスク要因を抱えています。地価が急に変動したり、空室が増えたり、思わぬ修繕費がかかることもあります。そういう困った状況になった時、自分がどこに向かっているかわからない人は、ほぼ確実に手詰まりになります。出口のイメージがなく、手詰まりになりかけているオーナーもいます。

まずは出口を考えましょう。これから物件を持ち、オーナーとなる人はもちろん、すでに物件を持っている人も、自分がオーナーとしてどこを目指すのか明らかにすることが大事です。

保有期間中の収支は必ず明確にする

不動産投資の出口は、オーナーとなる人の年齢、目標とする収益、目的などによって様々です。ある物件を1億円で買い、1億2000万円で売るのも出口ですし、30年保有し、賃料収入を得ながら、6000万円で売るという出口もあります。

いずれにしても、自分がどんなことを実現したいのか明確にすることが重要で、そのための計画が詳細なほど実現性も高くなります。目標や計画が明らかになれば、どんな物件を買えば良いかもおのずと決まっていくでしょう。

また、計画を立てる際にやらなければならないこともある程度決まっています。
その1つが、保有期間中の収支を計算することです。例えば、1億円で買った物件で賃料を得て、30年後に6000万円で売るとしましょう。この目標を実現するためには、まずは30年間の賃料収入と、30年間でかかるランニングコストを考える必要があります。

賃料収入は、家賃と部屋数の掛け算ですから簡単に計算できるでしょう。ただし、建物は古くなっていきます。その結果、家賃が徐々に下がったり、入居者(率)が減っていく可能性がありますので、その点を踏まえて計算することが大事です。

一方のランニングコストも、管理費や税金といった定期的にかかる分については簡単に計算できます。

ただし、やはり物件の老朽化を踏まえる必要があります。例えば、建物の外回りでは外壁の塗装などが必要になるでしょう。内部についても、エアコンなどの設備を交換する費用がかかりますし、キッチンや風呂などを含めた大掛かりな改装が必要になることもあります。設備などの交換に関しては、例えば、電気系の設備なら10年前後で交換が必要になるといった寿命の目安がありますから、そのような情報をもとにしてコストを計算すると良いでしょう。

本来であれば、このようなシミュレーションを物件購入の前にやっておく必要があります。収支が把握できれば、赤字になりそうな物件を避けることができますし、多少の計算のズレなどがあったとしても、元となる計画があれば軌道修正しやすくなります。

ただ、すでに物件を持っている人も、現時点で計画が曖昧なのであれば、すぐにシミュレーションしてみると良いと思います。収支状況を把握し、自分がどこに向かっているか明らかにすることで、これからの大家事業が格段にやりやすくなるはずです。

いまの物件価格を定期的に確認することで出口を意識する

次に、不動産投資の出口そのものとも言える物件の売却について考えます。
物件を売る不動産業者は、売ることが目的ですから、売却についてはあまり言及しないものです。「月々これくらいの収益が見込めます」そういった買うことのメリットは伝えますが、買い手にとっての出口についてはほとんど触れないのです。

そのため、ここは自分で考えなければなりません。売却価格に関しては、定期的に査定を依頼するなどして、いまの価格を把握することが大事です。
長期で保有するつもりの人も、いまの価格がわかれば、現時点での損益が把握できます。不動産投資では、急に売却の必要に迫られる可能性もゼロではありません。出口というよりは緊急時の避難口というニュアンスに近くなりますが、いま売ったらいくらになるか知っておくことが重要ですし、順調に事業を運営している投資家(大家)は、前述したシミュレーションによる長期の戦略と、いま売ったらどうなるかという短期の戦略を両方考えているものなのです。

定期的に物件価格を調べていくと、ほとんどの場合、価格は時間とともに下がっていくことでしょう。これは、物件の老朽化に伴うもので、高く売れるのが理想ではありますが、基本的には購入価格を下回ります。

もちろん、1億円で買った物件を1億2,000万円で売るといった方法もあります。しかし、短期で値上がり益(キャピタルゲイン)を得る取引は難易度が高く、地価変動のリスクも大きくなります。百戦錬磨の不動産のプロであっても、大きな損失を出すこともありますし、損失を抱えて潰れる会社もあります。

そのような点を考えると、副業で不動産投資をする人や、これから投資を始める人には不向きです。購入価格より安くなって当たり前と考えておくのが良いと思います。

環境の変化に合わせて計画を常に修正する

売却に関しては、不動産が他の投資資産よりも流動性が低く、売りにくいという点も押さえておく必要があるでしょう。流動性が低くなる理由としては、株や為替などと比べて取引される不動産の数(量)が少ないことが挙げられます。

また、不動産は1つひとつが高額であるため、取引できる人の数も限られます。そのため、物件の状態や条件が悪い場合や、収益性が悪い場合は、価格を下げたとしても売れない可能性があります。これも不動産投資におけるリスクの1つです。

これから購入する人としては、収益性や利回りだけを見るのではなく、売りやすいかどうかという視点であらかじめ出口を想定しておくことが大切ですし、すでに物件を持っている人は、物件の価値が下がらないように、物件の管理状態や入居状況をしっかり把握し、コントロールすることが大切です。

直近の状況としてもう1つ押さえておきたいのは、シェアハウスの問題をきっかけに、時期的には金融機関の融資が厳しくなっているという点です。買い手となる投資家は、基本的には融資を受けて物件を買います。そのため、融資が厳しくなれば買い手の数が減り、さらに流動性が悪くなります。

すでに物件を持っている人にとって、これは大きな変化です。いくらで売ろう、これくらいの値段で売れるだろうといった計画を立てていたとしても、買いたい人が激減すれば出口戦略は崩壊します。つまり、そもそもの計画を見直し、現状に合う計画に作り直す必要があるということです。

不動産業界では、地価が急変したり、融資環境が変わるといったことが珍しくありません。そのため、計画ができたからといって安心というわけではなく、その時々の状況に合わせて、計画を修正することが大事です。

そのためには、不動産業界のニュースに敏感になる必要があります。物件のいまの価格を定期的に調べ、市場について知る必要もあるでしょう。

細かな調査、分析、計画の見直しを積み重ねるほど、不動産投資で成功する可能性も大きくなります。言い方を変えれば、計画があったとしても、その通りになるとは限らないわけですから、出口のイメージを持たない投資は非常に危険ですし、無謀とも言えます。

冒頭でも書いた通り、不動産投資は物件を手放す時がゴールです。

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著者紹介

小島 拓
小島 拓

一般社団法人首都圏小規模住宅協会 代表理事
大学卒業後に不動産会社の営業職に従事し、以来10年以上にわたって、不動産投資のプロとして個人投資家の資産形成をサポートしてきました。しかし不動産投資の初心者を狙った悪質な業者の話を耳にすることや、自身が勉強不足なまま、先行き不安な物件に投資しようとする人を目の当たりにするにつれ、投資用不動産業界をもっとクリーンで、多くの人が正確な知識を持って安全に投資できるようにする必要があるという思いが募り、2018年度より、不動産業者としての立場に一旦区切りをつけ、投資用不動産業界の健全化を目的とした「一般社団法人首都圏小規模住宅協会」を発足しました。不動産投資による被害や失敗を減らしていく取り組みを随時行ってまいります。

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