星野陽子の金持ち母さん投資術
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2018年11月20日(火)
賃貸で暮らしながら不動産投資を学び、持ち家を買う
自宅は賃貸か持ち家かは人それぞれ
「自宅は賃貸か持ち家か」というのは、普遍的なテーマで、よく議論になるため、どちらがいいのか決着をつけたがる人が多いようですね。
でもどちらがいいのかは人によって違います。不動産投資手法も様々あり、いろいろな人がおすすめの手法をお持ちですが、私は人それぞれだといつも言っています。
なぜなら保有資産、リスク許容度、年齢、家族構成、家族資産、どういう暮らしをしたいのか、どんな人生にしたいかなど、ひとによって違うので、どの手法が一番良いのかは一概に言えないからです。
某ネットメディアで賃貸か持ち家かについて書かれていました。その記事では、堀江貴文氏はそもそもホテル住まいなので「賃貸とか持ち家とか意味がわからない」としています。
経済評論家の山崎元氏は、「転職の可能性がある会社員は『職住近接』の方が効率がいいし『地位財(家)の競争から意図的に降りる』という決断をすると生活が自由になる」とおっしゃっており、賃貸派の立場でした。
星野リゾートの代表取締役社長である星野佳路氏は「家を持つ」ことには、家を「自由」にいじることができる楽しさがあるとのことで肯定的に考えておられます。ただし、都心で家を買うには不動産が高すぎるので平日は賃貸に住み、週末に持ち家のある地方で過ごす、という意見でした。
それぞれ興味深い考えですが、お金が十分にある人たちの考えかと思います。ほとんどの人たちは真似できませんし、真似してしまって老後資金がなくなって苦労したら大変です。彼らに比べればはるかに庶民である私の考えも、よかったら読んでみてください。
不動産投資家は賃貸物件に住んでいる!
不動産投資家には賃貸物件に住んでいる人が多いのですが、それは以下のような理由からです。
・『金持ち父さん貧乏父さん』の作者ロバート・キヨサキが「自宅は負債」と言っている通り、自宅は家賃など収入を生まず、固都税や修繕費という出費があるから。
・住宅ローンを組んで家を自宅用に購入すると(木造の戸建てかファミリータイプの区分マンションが多いと思いますが)、積算評価では低くなりがちで、場合によっては「債務超過」と銀行に判断されることもあるため、自己資金を少しでも多く評価してもらい、融資を使って投資用物件を買いたい人にとって不利になる。もし現金で購入できたとしても、現金をそのまま持っていたほうが銀行から評価されるときに有利なので、やはり自宅を購入するのを控える傾向がある。
・引っ越しや住み替えが容易だから、という理由を挙げる人が多くいます。
・法人を持っている人であれば、社宅として部屋を借りて賃料を一部経費にできるから。
このように、賃貸は自分の資産にならないから損だ、といわれる半面、これだけのメリットがあるのです。不動産投資で融資を引きやすくしたり、自分を身軽にしておきたい人にとっては、賃貸物件を住家にすることでこれらのメリットを享受できるわけです。
家を持つなら価格が下がらない家を
一方、私は持ち家派です。実際に自宅を約10年保有しましたが、それでよかったと思っていますし、高齢の実父を見て歳をとったときに住む場所があったほうがいいとも思ったからです。
ただし条件があります。価格が下がらない(むしろ上がる)と予測される家を買うということです。
私は自宅を手に入れる際に、土地を購入して注文住宅を分離発注するという形で2004年に建てました。
これを2016年に売却しています(現在は私の不動産所有会社が所有している賃貸併用住宅に住んでいます)。
私の背景を説明すると、実家は借家で引き継ぐ家(そして財産)がありません。ずっと小さな借家住まいというコンプレックスもあり、「持ち家」に憧れていましたし、家族や親族の中で一人ぐらい持ち家を持っていないと、いざというときに困るのではないかと思っていました。
JR立川駅の近くに多摩都市モノレールが開通したばかりの頃、私は東京都立川市に移り住んだのですが、立川駅周辺が急速に発展していくのを感じました。
当時はデフレで地価は下がっていましたが、「そこからの下げ幅はそれほど大きくないのではないか。むしろ上がるのではないか」と考えました。そこで立川駅から徒歩圏内で中古の戸建てを買おうと探していたのですが、なかなか見つからなかったときに、徒歩12分のところに土地が売りに出ているのを見つけました。
個人で住宅ローンを借りて、土地を購入して、分離発注という方法(建築士に設計してもらい、各職人に仕事を直接依頼し、建築士が統括するという方法。
たとえばハウスメーカーに頼んだ場合は、ハウスメーカーは工務店に依頼し、工務店は各職人に仕事を依頼するので、マージンを削減できる)で家を建てました。約10年住んで購入時の金額と売却時の金額はほぼ同じでした。
つまり、10年分の家賃費用が0円になった、というわけです。
持ち家のメリットは6つある
家を所有して次のようなメリットがあると感じましたので、ご紹介します。
①家賃を支払う必要がない(固都税はかかりますが、もし同じレベルの家を借りていたら家賃は10年で2000万円以上でしたから、比べるまでもありません)。
②住宅ローン減税制度を10年間利用できた。
③自宅の一室をオフィスにしたので、家賃を計上してローン返済に充てた。
④自分の好きな木材やキッチン・バスユニットを使用できた。
⑤自分の好きな間取りや家事動線を考慮して設計した新築の家に住めた。
⑥自己資金を2000万円以上入れていたということもあるが、最初の投資用物件(3億1000万)の融資をしてもらった銀行からは資産としてプラスの評価をしてもらえた(社長が持ち家だと安心だと言ってもらえた)。
また私の場合、売却時に売却益は出なかったのですが(購入にかかったお金と売却代金はほぼ同じ)、譲渡益がある場合、もし個人が5年を超えて所有していたら長期譲渡所得となり税率が低くなります。
また、一定の条件を満たせば、3,000万円特別控除の特例、10年超所有軽減税率の特例、特定居住用財産の買換え特例などがあります(詳しくは国税庁のHPでご確認ください)。
不動産投資で譲渡益が出てもそのような特例はありません。
一見、普通に自宅をローンで買っている人が、特例を活用して不動産投資のように考えていたりするかもしれないですね。
譲渡損失がある場合には、損益通算や繰越控除ができる特例があります。詳しくは税務署や税理士さんにご確認ください。
高齢者は住む所がないと困るため、家を持っておきたい
さて実父の話です。ずっと借家に住んでいたのですが、もうすぐ80歳になるという頃、家が古くなったので建て替えるということで立ち退きを迫られました。
父は快諾し「次に住む所はどうにかなるだろう」と言っていました。
しかしながら国民年金で暮らす高齢の父に家を貸してくれる人はいません。
「立ち退き」で住む場所がないという理由があるので、自治体の提供する貸し家に住むことができるのかもしれないと私は思ったのですが、倍率の高い抽選に外れました。
国や自治体に頼るのは容易ではないことを知りました。父の自立心やプライドに配慮して、私は最後まで「私が面倒をみるから」とは言わなかったのですが、結局どうにもならず、私が住む所を提供することになりました。
でももし私がいなかったら、どうなったのでしょうか。父は「他人に迷惑をかけてはいけない」と思う人なので、生活保護も申請しないと思います。
その後、父はしばらく私の提供した部屋に住んでいたのですが、入院しました。退院したら、私としては一人暮らしが心配なので有料老人ホームなどに入ってほしいと思って、調べたところ、月々の支払いが少なくとも30万円程度になるとのことでした。
高齢者用の住まいについて相談に乗っている人に聞いたところ、親の持っている持ち家を売って、足りないところは子どもが出すというケースが多いそうです。
高齢になったときに十分な預金を持っているか、持ち家を持っているかしないと、みじめな思いをしたり、子どもに迷惑をかけたりしそうだと思いました。
持ち家があれば現金化してもいいですし、子どもが独立したら小さめの分譲マンションに買い替えてもいいですし、リバースモーゲージ(高齢者が持ち家を担保に、年金形式で生活費を借りられる制度)で生活費のためにお金を借りたりもできます(リバースモーゲージを使うのであれば、分譲マンションより土地がついている戸建てのほうがお金を借りやすいそうです)。
注意すべき点はローンを定年までの給料や退職金や預金で払えるようにしておくことかと思います。
自宅を買うなら不動産投資を学んでから!
家の購入は投資用物件でなくとも不動産投資を学んでから考えるといいです。不動産投資家で「不動産投資の勉強をしてから自宅を買えばよかった!」と言っている人が多いです。
「資産形成を加速させる不動産投資のレバレッジとは」に、住宅ローンで購入する自宅について書いていますので、よかったら併せてお読みください。
私がいいと思うのは都市部など人口があまり減らない場所で土地の価格が下がらないと予想されるエリアに、売却しやすく(奇抜な設計などではなく)、いざとなったら貸せる(賃料がローンの支払いをカバーできる)自宅を購入することです。
最後にひとつの例として、私がもし都心に住む20代の社会人であるとしたら、どのように自宅を購入するか、考えてみたいと思います。
①まず、現金を貯めつつ、本を読んだりして不動産投資を勉強します。
②お金が貯まったら、職場の近くか職場にアクセスのいい路線の駅近に投資用ワンルームなどを買って住みます。家賃を払う必要がないので、支払っているつもりでその分の現金を貯めてさらに投資の準備をします。
③勤続年数が3年以上になっていて貯蓄も順調に増えていたら、いわゆる「属性」がいいと銀行に判断され、融資をしてもらえるようになるので、融資を使ってアパート一棟を買います。
④結婚したら(しなくても、タイミングがきたら)ワンルームは貸して、アパートの中の一室(2DK、3DKなどがあれば)に住むか、土地の値段が下がらないと予想されるところに自宅を買います。賃貸併用住宅であれば、賃貸部分からローンの支払いができるため、現金が減らず、他人のお金で資産を形成できるのでかなり良いと思います。
⑤キャッシュフローは浪費せずに貯めておきます。お金が貯まってきたら、さらに一棟アパートかマンションを購入します。
そのような方法で、堅実にうまくやっていくと、残債も減り、貯金も増え、ある時点からすごく楽に感じるようになります。自分の生活だけでなく、子どもの教育費や親の介護費用も捻出できるので、お金のストレスから解放されるかと思います。
家を持つなら、不動産投資を学んでから購入することで、一生お金に困らないキャッシュフローを生み出すこともできるのです。もし購入を考えていらっしゃるなら、ぜひ不動産投資を勉強してみてください。
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著者紹介
星野 陽子星野 陽子
不動産投資家。著者。特許翻訳者。
東京都出身。外資系メーカー、シティバンク勤務を経て、イスラエル国籍のユダヤ人と結婚。子ども二人に恵まれるも離婚。フリーランスとして在宅で翻訳の仕事をしながら、シングルマザーとして子ども達を育てた。東欧からの移民の子で、14歳から働き、資産ゼロから財産を築いたユダヤ人の義父からは不動産投資を学び、投資物件(6億円)などの資産を築いた。著書に『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』『ユダヤ人大富豪に学ぶ お金持ちの習慣』『貧困OLから資産6億をつかんだ金持ち母さんの方法』がある。オンラインサロン「マネサロ」主宰。 オフィシャルブログも定期更新中。