「アパート・マンション経営の専門家」大長伸吉の不動産投資、成功の法則
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2018年9月29日(土)
地方の高収益物件vs都市の高資産価値物件どっちが良い!?
不動産投資や賃貸経営を始めるときに、良い収益物件を持つことが大切であることは言うまでもありません。
では、どのような物件が良いと言えるのでしょうか?優良物件の判断基準として、主には2種類が挙げられます。それは、高収益物件と高資産価値物件です。高収益物件とは、物件の販売価格に対し、より多くの家賃収入が得られる物件です。また高資産価値物件とは、販売価格に対し、土地と建物の価値が高い物件です。いずれも、収益不動産を購入しようとしている人に人気のある物件です。
そこで、高収益物件と高資産価値物件を比較するために、それぞれのメリットとデメリットを知っておきましょう。
高収益物件のメリットとデメリット
高収益物件とは販売価格が低く、家賃収益が高い物件です。毎月の収益が良いということから、初期の負担費用を回収できる期間が短いことがメリットです。
不動産の販売価格は高額で、銀行から融資を受けて購入することが多いのですが、収益性が良い物件ではこの借金を早く減らすことができます。このことは銀行も理解していて、高収益物件は銀行から融資を受けやすいということもメリットの1つです。
ここで、具体的に高収益物件と低収益物件の2つのケースを比較します。
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・高収益物件:販売価格が5,000万円で、毎月60万円(年間720万円)の家賃収入がある収益物件を購入した場合、この5,000万円を回収するためには、約7年で済みます。
・低収益物件:販売価格が5,000万円と同額ですが、毎月の家賃収入が30万円(年間360万円)しかない場合は、5,000万円の回収には、約14年もかかります。
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上記の高収益物件では、収益性を示す年間表面利回りが14%で、不動産以外の投資と比べても特に良い収益性があると言われるときがあり、とても人気があります。
銀行の借入を完済したあとは、家賃収入のほぼ全額が手取りの収入となります。銀行への返済を心配することがなく、また物件を売却したときに高額の現金を手にすることもできます。まさに高収益物件となります。
しかし、このように誰もが購入したいと思う物件はなかなか市場には出ることがなく、出てもすぐに完売してしまいます。そのため、取得が難しいことがデメリットと言えます。
そして、当初は高収益物件のように見えても、実際は高収益物件ではないという事例があることに注意しなければなりません。この点が一番のデメリットであり、物件を購入するときには特に気を付けるべきポイントです。
国家資格のある不動産業者が噓をついているわけではないのですが、高収益物件と言っても、それは販売時だけの場合があります。
例えば、販売時には満室で、全室から家賃収入があるのですが、購入後に半分の入居者が退去してしまえば、家賃収入は半分になってしまいます。高収益物件ではこのような事例もあります。それは、売主側としてもより早く物件を売却して、現金を得たいという意図があるからです。売却のために、入居しやすい条件を入居希望者に提示して、とにかく満室にするケースがあります。このような場合は、入居者の属性が良くないことや、通常よりも早く退去してしまいがちです。
特に価格が安い物件にこのようなケースがあります。価格が安い物件では、購入時には建物の悪い所が見えず、購入後にトラブルがおこり高額の修繕費用が掛かる場合もあります。例えば、5,000万円の物件を購入した後に、1,000万円以上の修繕費用が掛かってしまうのでは、それは安い価格の物件とは言えませんね。
このような事例は、新築物件では起こりにくいものです。その理由は、近年は建物建築前の建築確認申請や建物完成後の検査済証のための役所チェックなどの法令等が厳しくなっているためです。しかし、中古物件では、数十年前の法制度によって建てられたものであり、また建築後に建物の増改築も行われているなど、法令に適していない物件が多々存在しています。法令に適して建てられていても、老朽化により床が抜けてしまっている建物、雨漏りや水漏れがある建物などもあります。物件価格が安いのには、なにかしらの理由があると考えておくべきです。このように、購入当初は高収益であっても、その高収益の期間がどれだけ長く維持できるのかをよくチェックしておくことが必要です。このような物件は高収益の期間が短いことから、意図的に販売価格を下げて売主が販売価格を決定している傾向が多々あります。
高収益物件は、物件価格が安いことや、家賃収入が相場よりも高い物件です。しかし、物件価格が安い理由、そして家賃が高い理由をしっかりと確認して、今後数十年にわたり、その家賃収入が維持できるのか。また、高額の修繕費用が掛からない物件であるかの確認が必要です。
健全な高収益物件は、収益率が良いことから、優良物件と言えます。
しかし、高収益物件のデメリットは、取得することが難しいことと、見せかけは高収益物件であっても実際は価値がない物件である場合があり特に注意が必要であることです。
高資産価値物件のメリットとデメリット
高資産価値物件のメリットは、文字どおり“資産価値”があることです。
本業にて、高所得を得ている人や事業がうまくいっていて、税金を多く払っている人が節税対策として、高資産価値物件を取得するケースが多々あります。
購入直後に高収益が出ることを目的とはしていませんが、資産価値があるため、将来にわたり資産価値がある立地や土地を選択しています。そのため、売却して不動産を現金に換えるときに当初の価値が下がらないことを見越して、物件を選別しています。
既に資産を多く所有している人は、資産を増やすことよりも、税金などを支払うことにより資産が目減りしてしまわないように対策をします。資産を減少させないために、長期的に希少価値のある不動産を選択します。
また、高収益ではありませんが、家賃の下落や空室になることが少なくなることがメリットでもあり、長期安定経営に向いています。初期の支出を減らして資産価値のある物件を取得することができたのならば、その不動産資産を無理のないローン支払いによって取得できるということになり、将来のための資産形成にも適しています。
また、高資産価値物件は新築物件が多い傾向があります。それは、中古物件は購入後に長期間維持できずに、再建築費用が掛かるため、建物自体に資産価値があると言えないためです。新築物件には希少価値があります。そして、入居者に好まれるために競争力があり、長期的に家賃が下がらないこともメリットです。高資産価値物件は、入居者にも価値をわかってもらいやすいため、当初は高収益でなく、ほどほどの黒字となるレベルですが、それが何十年にもわたり、ずっと継続します。
例えば、2億円の高資産価値物件の収益性が年間6%だとして、年間の利益は1,200万円です。20年で、2億4000万円となります。
これに対し、5,000万円で収益性が14%の高収益物件では、年間の利益は700万円です。しかし、この物件は7年しか高収益を維持することができなければ、4,900万円しか得ることができません。
このように、収益性が50%以上も低くても、長期間ある程度(年収益6%程)の利益を上げ続けることができれば、高収益物件よりもトータル収入が多く得られる物件もあります。
これが、資産家が高収益物件を選ばずに、高資産価値物件を選ぶ理由です。
次に、高資産価値物件のもう一つのデメリットですが、それはずばり物件価格が高いことです。このため、一般的に誰もが物件を取得できるわけではありません。全額現金で購入する人は少なく、銀行の融資を活用することになります。銀行では、購入者の属性(年収や所有資産等)をチェックし、ゆとりをもって返済できる人に融資をしますので、限られた人にしか選択肢がないことがデメリットです。ある程度自己資金を準備する必要があることも難点ではあります。
高収益物件ではないため、万が一、空室になったときに一時的にローンの返済をその月の家賃のみで支払うことができなくなる場合もあります。この場合は、以前からの家賃の収益を貯蓄しておくことで対応をすることも一つの策です。
資産価値がある物件は、入居者にもその利便性や建物の良さを分かってもらえることが多く、空室期間が短い傾向にあります。
ここまでは、高収益物件と高資産価値物件についてのメリットとデメリットを見てきましたので、次は都市部と地方との事情の違いを確認していきます。
都市部と地方の違い
都市部と地方との違いは、文字どおり、立地の差です。都市部は多くの人やモノや情報が集まり、仕事をし、生活をしているエリアです。
今回は、都市部以外を地方とさせていただきます。
都市部の土地は価値が高くなります。また、都市部の家賃は高く、一方で人口が多いため空室となるリスクが低くなります。
都市部の高資産価値物件vs地方の高収益物件
これまでの条件を見ると、価値の高い都市部の高収益物件が最も良いことになります。
しかし、都市部は土地の価値が高いため、なかなかそのような物件は存在しません。
また、地方では土地の価値が低いことから、低収益物件は購入する意味がなく、地方の低収益物件は買ってはいけないという意味で、除外をします。
そこで、市場で不動産会社が積極的に販売をしている収益物件として、収益性が高いわけではないが黒字を確保できる(年間収益6%程)都市部の高資産価値物件と、地方の高収益物件(年間収益15%程)とを比較してみます。
ここでは、短期間で売買を繰り返すという危険な投機対象として比較をするのではなく、長期間、安定した運営を継続すること前提条件とします。
さきに記述しましたように、高収益物件は短期的には収益が良いと言えるのですが、多くの物件は高収益である状態は長期間続かないものです。
それに加えて、地方では都市部に比べて土地の価値が低く、さらに人口が減少しているために土地の価値が現在も下がり続けています。国税庁の路線価等の発表(*注:平成30年分財産評価基準書・路線価図(国税庁2018年7月2日))においても、都市部の土地価格は上昇していますが、それ以外ではまだ下落が続いています。
建物は年月ともに老朽化して価値がなくなるものです。土地は建物ほど価値の目減りは少ないと言われますが、地方では30年後や50年後に土地の価値が一層低くなってしまうところも出てくることが予想されています。
このように将来建物も土地も価値がなくなってしまう恐れがあるために、現時点で地方の不動産を売り払ってしまい、現金化しようとしている売主もいます。このようなり理由があるため、都市部では考えられないような高収益の物件が地方で売りに出されています。
都市部では、高収益物件が少なく、物件価格が高い傾向があります。これは将来にわたる土地の価値や住人が多いことから家賃収入の維持を見込めると評価されての物件価格です。地方の高収益物件のリスクに比べて、都市部の高付加価値物件は予定どおりの収益性が見込めるという安定感があります。
地方の高収益物件は、賃貸経営の経験が多く、知識が豊富な人でないと取扱いに苦労をします。高額の修繕費用が必要な場合や想定した家賃が回収できなくなることが多くあります。実際に私のところにも地方の高収益物件を取得した後にトラブルが起き、相談に来た方も多数います。初心者がむやみに手を出すにはリスクが大きすぎます。
まとめ
高収益物件は人気がありますが、適正ではない不動産価格や、想定家賃である場合もあり、高収益とうたわれている理由を正確につかむことが大切です。また、地方の高収益物件は、土地自体の価値が低いことや取得した数年後に空室や想定外に大きな修繕費用が掛かるなどトラブルが多いため、初心者が軽い気持ちで取得することはリスクが大きすぎます。取り返しがつかないほどの負債を追う場合もあります。特に都市部以外の地方では、土地自体の価値が低いため、高収益物件が販売されやすいのですが、土地にも建物にも価格が安い原因があるかもしれないと考えて、事前に慎重にチェックをすることが大切です。
それに比べて、高資産価値物件は取得するまでが難しいのですが、土地や建物自体の価値が高いことから、特に東京の都心部の物件などでは、将来に渡り安定的に賃貸経営を継続できる可能性が高いものです。
また、たとえ都市部の高資産価値物件であったとしても実態に見合わない価格で販売されていることもあるので注意が必要です。
いずれにしても、収益不動産を取得する前にたくさんの情報を集め、しっかりと勉強をして長期的に収益が出る事業計画を立てたうえで、物件を取得するように心がけてもらえればと思います。
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著者紹介
大長 伸吉大長 伸吉
ランガルハウス株式会社 代表、年金大家会 主宰。
生涯所得の1/3ほどの住まいにかかる出費をゼロにするために、賃貸併用住宅を活用して、サラリーマンや事業主をサポート。
千葉大学大学院工学研究科卒、新築及び中古1Rマンション、中古アパート、世田谷/北関東/多摩新築アパートなど各種の不動産賃貸業の経験をもとに、主にサラリーマンのアパート経営の支援。建築サポート実績127棟。通算2050人の聴講者と2450回を超える相談会にてサポートを継続中。著書に『サラリーマン大家の「クズ土地」アパート経営術』『王道アパート経営で「マイ年金」づくり』など
所持資格:宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、FP2級技能士