不動産投資の最新動向
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2021年5月17日(月)
地震大国日本での不動産投資――地震保険加入だけでは安心できない
2011年3月11日の東日本大震災から10年の節目となる2021年3月20日、宮城県沖でマグニチュード6.9、震度5強の地震が起きました。
特に東北と東京の人は、東日本大震災の恐怖が蘇り、大きな不安を感じたのではないでしょうか。
地震大国である日本において、不動産投資家のなかには、所有物件が地震被害に遭う危険に怯える人も多いでしょう。
今回の記事では、地震が不動産投資にもたらす恐ろしいダメージについて解説します。
日本の建物の耐震基準は適正か?
日本は、世界で起こる地震の8割が集中する地震大国。
実際に年間2000回以上もの地震が起こっていますが、東日本大震災のような大規模地震も頻繁に発生しています。
1978年には、宮城県沖地震をきっかけに建築基準法が見直され、さらに1981年には、「震度6〜7の揺れで倒壊しないこと、および震度5強程度の揺れではほとんど倒壊しないこと」を基準とする「新耐震基準」が定められました。
ちなみに、2011年の東日本大震災のマンションの被害状況は、マンション8万5798棟のうち大破したのは0棟、中破は61棟、小破は1070棟。軽微・損傷なしが8万4667棟でした(東日本大震災 被災状況調査報告)。
新耐震基準に沿った建物であれば、大地震でも深刻なダメージは受けないようですが、データ上は大破がゼロ件であっても、不動産投資には恐ろしい影響があるのです。
「大規模地震でもさほど被害は大きくない」は本当?
地震被害によって投資用マンションにはどのような被害を被るのか、具体的なリスクを挙げてみましょう。
入るはずだった収益が見込めない
地震による被害が中破・小破だとしても、目立つ部分にダメージを受ければ、入居者の印象はかなり悪くなります。
建物じたいに直接的な被害を受けなくとも、マンション内で被害を受けた部分が生々しく表出すると、入居者の不安が増します。
最悪の場合、ほかの住居に引っ越していってしまうかもしれないし、すると当然見込まれていた家賃収入が途絶えてしまいます。
高額な修復費用の発生
地震によってひび割れなどの被害が生じれば、修復・修繕しなければなりません。
地震被害による修繕費用の目安は、100万〜300万円といわれています。もちろん程度にもよりますが、修繕費用は決して安い金額ではありません。
保険でカバーできればよいのですが、それができなかった場合に賃貸収支に与えるダメージは、非常に甚大です。
どんな事情があっても、ローン返済を止めることはできません。
たとえ理由が大震災であろうと、原則的には払いつづけなければならないのです。
大震災が起きれば、入居者の収入が一時的に途絶え、家賃を払えなくなってしまう可能性は充分にあります。
もしも入居者が避難所暮らしになってしまっても、賃料を請求するような大家がいれば、批判は免れないでしょう。
家賃の入金が止まってしまうと、かなり厳しい資金繰りを強いられる羽目になるのです。
将来的な売却が困難に
地震被害が大きければ、不動産じたいの価値にも大きく関わってきます。
大震災の被害を受けた地域の投資用物件は、ほぼ確実に売却価格が下がります。
売却で利益を得ようとする投資家にとっても、震災被害は深刻なのです。
さらに、保有物件の価値低下は物件の買い増しに際しても悪影響を及ぼします。
複数物件を購入したい投資家であれば、本来は所有マンションを担保に入れて買い増しを図るケースが多いです。ただ、マンションの売却価値が下がってしまうと、担保にして融資を引くことが難しくなり、複数物件を購入するハードルも上がってしまいます。
「火災保険や地震保険があるから安心」と言う営業マンは無責任
不動産投資の地震リスクを軽減する方法としてまず思い浮かぶのが、「地震保険」です。
地震保険に加入すれば、被害を受けてもなんらかの補償を受けることができます。
実際に、「火災保険や地震保険があるから安心です」と言い切る不動産営業マンもいます。
しかし、地震保険に加入しているからといって安心だとは、とてもいえない実情があるのです。
地震保険の知られざる注意点!
損害保険の一種である地震保険は、地震、津波、噴火による被害で発生した損失を補償してくれます。
具体的には、地震による建物の倒壊や地震由来の津波、火災、埋没、流失など。
実に幅広い損害が想定され、居住用の建物と家財が補償対象となりますが、工場やオフィスのような居住用でない建物や車、有価証券は対象外となることは覚えておきましょう
さらに地震保険は、火災保険とセットでなければ加入できません。
しかし火災保険のみ加入している人でも、途中から地震保険をつけるということもできるので、自身の保険状況をあらためて見直してみましょう。
なお、地震が原因で起きた火災は、地震保険で補償されますが、この場合に火災保険だけだと補償されない点には要注意です。
地震保険に加入しても、被害全額がカバーされるわけではない!?
地震保険では、被害の全額が必ず補償されるわけではありません。
保険金額は、火災保険の30〜50%の割合で設定されます。
たとえば、火災保険の補償額が1000万円だとすれば、地震保険の補償額は300万〜500万円程度。
さらに限度額が決められており、建物の場合は5000万円まで、家財の場合は1000万円までとなっています。
つまり、大規模な地震が起きて修繕が必要になった際、地震保険でおりた補償額で足りない分はオーナー自身が負担しなければならないのです。
保険金支払いが受けられない可能性も!?
くわえて、一番恐ろしいのは最悪の場合、保険金がもらえない可能性がある点です。
実は、大規模災害の際はたくさんの人が保険金の請求を行なうという事情から、民間の保険会社だけで保険金をまかなえないケースが出てきます。
保険の契約書に、大規模災害の保険金支払いを免除できる条項が記載されている場合もあるのです。
地震はダメージが甚大で、リスクヘッジも困難
日本は地震大国で、地震からの恐怖には常に備えなければなりません。
その一方で、地震保険のカバーできる補償範囲は限定的で、地震保険の世帯加入率は全国でも3割程度。
結局被害額が全額補償されないにもかかわらず、2021年1月には全国平均+5.1%の地震保険基準率の改定があり、さらに保険額の負担額は増えました(セコム損害保険株式会社:地震保険改定のご案内)。
どのようにリスクを抑えていくかを、不動産オーナーは真剣に考えていかなければなりません。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。