加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠
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2020年1月22日(水)
不動産投資の成功に欠かせない「キャッシュフロー」の重要性とは
「毎月、お金がいくら入るか」という考え方が重要
不動産経営において、「キャッシュフロー」(資金繰り)は最も重要な要素です。
「キャッシュフロー」とは、簡単にいえばお金の流れです。計算式でいえば「受取現預金―支払現預金=現預金残」となります。つまり、実際に入ってくるお金の方が、出ていくお金より多くなければいけません。
これができていないと、いわゆる「持ち出し(赤字)」が発生してしまいます。赤字になれば、給料などの他の収入から補填、あるいは預貯金などの資産を取り崩すしかありません(この段階で不動産投資は完全に失敗しています)。給料からの持ち出しが発生するのは誰もが避けたいもの。
年功序列・終身雇用が崩壊し、減給・リストラ・倒産は当たり前、給料・賞与・退職金・企業年金にも頼れない時代です。お金がいくらあるかではなく、毎月お金がいくら入るかという「キャッシュフロー重視」の考え方が一層強く求められています。
不動産経営においても、お金がショートしたら、一環の終わりです。借入をして投資を行う場合、銀行への返済が滞らないように、きちんとキャッシュフローの出る投資をしているかが、賃貸経営の生死を分けるといっても過言ではありません。失敗すれば物件は競売に出され、二束三文で他の所有者に渡り、借金だけが残り自己破産となってしまいます。
経費として計上できる「減価償却費」のポイント
キャッシュフローに似た要素として、「損益」があります。
これは、会社決算・税務決算などで使うもので、「売上-経費=損益」で表されます。この場合、見かけ上の利益が出ていても、実際のキャッシュフローがマイナスであれば、健全とはいえません。
不動産経営における支払ローンには、支払金利分と元本返済分があります。支払金利の方は、原則、経費として計算されます(不動産所得が赤字の場合には、土地分の支払金利は経費に算入できません)。
一方、元本返済の方は、経費ではなく、負債の減少です。つまり、支払ローン中の元本返済分は、損益上は出てきません。その他、所得税・住民税についても、経費として計上できませんが、こちらも元本返済分同様に実際にキャッシュアウトします。不動産経営においては、これらを充分に考慮しておく必要があるのです。
この他に重要なのが「減価償却費」でしょう。減価償却費とは、建物の取得原価を毎年の費用として按分する、会計上発生する費用のことで、実際に支出されるお金ではありません。経費算入しますが、実際にはキャッシュアウトはしないということです。土地はともかく、建物については、経年とともに価値が下がっていきます。その耐用年数に応じて、減価償却費として、損金として経費計上し、資産価値を下げていくことが可能な制度なのです。
ざっくりと整理すれば、「利益-税金+減価償却費-借入金元本返済額=キャッシュフロー」といえます。減価償却費も組み入れたこちらの損益計算は、税務決算で、節税の観点も入ってきますので、実際のキャッシュフローとは少し異なってきますので注意しましょう。
キャッシュフローの「健全性」を計る指標
不動産投資の健全性をどのように判断するのでしょうか。基準となる指標やキャッシュの重要性などを見ていきましょう。
キャッシュフロー(資金繰り)
この「キャッシュフロー」(資金繰り)は、受取現預金―支払現預金=手残り現預金となります。いくら借入金利が低くても、借入期間が短ければ、例月の返済金額は多額となり、「キャッシュフロー」(資金繰り)は、苦しくなります。この「キャッシュフロー」(資金繰り)が、最も大切な指標となります。
財務内容
財務内容の健全性の計り方です。資産=負債+自己資本です。(運用)資産=(調達)負債+自己資本という意味です。つまり、自己資本(自己資金)と負債(借入金)を調達し、どのような形で運用しているのかということです。資産―負債=自己資本ともいえ、この自己資本がマイナスとなれば、債務超過ということで、非常に危ない状態といえます。
利回り
あくまでも、最初の物件選定の目安にしか過ぎませんが、「利回り」にも当然注目しましょう。これは、受取家賃÷物件価格で算出することができます。私の場合、目安は、最低でも、「年利回り8%以上」としています。この「利回り」はあくまで単純計算で、借入金も踏まえた「イールドギャップ」(レバレッジ・梃子の原理)や、「キャッシュフロー」(資金繰り)は、考慮されていません。
イールドギャップ(レバレッジ・梃子の原理)
「利回り」の次は、借入金も踏まえた「イールドギャップ」(レバレッジ・梃子の原理)についても、考えましょう。運用利回りと調達金利の差という意味です。「運用利回りー調達金利」=「イールドギャップ」となります。私の目安は、最低でも、この差を5.5%以上としています。この「イールドギャップ」(レバレッジ・梃子の原理)については、借入金の借入期間も関係してくる「キャッシュフロー」(資金繰り)は、考慮されていません。
資金調達
このように資金調達においては、「借入金額」・「借入期間」・「金利」の3つが重要となってきます。他にも、人的担保(連帯保証・連帯債務)、物的共同担保(別件不動産の抵当権・根抵当権)、歩積・両建定期預金・定期積立金、その他カードローンの活用などを総合的に判断する必要があります。
流動資産もある程度所有しておく
不動産は、固定資産です。預金・外国為替・貴金属・株などの流動資産と違って、すぐには現金化できません。
無理をして売り急ごうものなら、足元を見られ、「物上げ業者」などへ、二束三文で手放さなければならなくなります。不動産経営では、修繕費、家賃滞納、空室(敷金返却、リフォーム費用、空室フリーレント時家賃無し、家賃下落、広告費)、大規模修繕費用(外壁塗装・天井塗装・水回り)など、不意の出費も多くあるものです。
さらに、ローン支払いが滞れば、「期限の利益」喪失、破綻、自己破産へといたります。それを避けるためにも、流動資産はある程度手元に置いておくべきなのです。また、金融機関から借り入れする際においても、自己資金を持っている人に多く貸したがる性質があります。そういった意味でも、不動産経営では、手元にはある程度余剰資金を持っておきましょう。
手元キャッシュは「流動資産」として運用も
私は資金調達の際には、できるだけ多額の金額(時には、フルローン・オーバーローン)を長期間、低金利で借りるようにしています。極端な場合、優良物件を割安価格で購入する際、オーバーローン(物件の価格以上の融資を受けること)で資金調達すれば、手出しはありません。それで、毎月、数十万円のキャッシュフローが出ます。
借入金は「お宝」と見なしましょう。お金に余裕ができても、繰上げ返済はしません。現預金(キャッシュ)は温存しておきます。もしくは、流動資産として運用します。私の場合は現預金、外国為替、貴金属、株を所有しています。外国為替は、米ドル、ユーロ、イギリスポンド、スイスフラン、オーストラリアドル、ニュージーランドドル・カナダドル(現物・定期積立・スポット購入)です。貴金属は、金・白金・銀(現物・地金型コイン・収集用コイン・定額購入・スポット購入)です。株は、不動産株、新規公開株などを少しづつ運用しています。
以上のようにキャッシュフローを意識しながら、「毎月、お金がいくら入るか」と仕組みづくりを常に考えていきましょう。「年金2000万円不足問題」などに気をとられ過ぎず、まずは実行あるのみです。頑張りましょう!
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著者紹介
加藤 隆加藤 隆
サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。