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ショウタイム24インタビュー

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激変する不動産業界の未来図~IT化で「物件の収益性」は高まるのか?

目次

「賃貸マッチングシステム」で話題のベンチャー企業、ショウタイム24。前編では、同社が開発した、賃貸物件の申込みから契約、そして入居に至るまでの作業を「仲介業者」を通すことなく実現する新しいシステム『LEASE24』の概要を見てきた。後編では、今後、不動産業界の「IT化」がどこまで進むのかを、「市場活性化に向けた課題」も併せて、代表取締役社長の市川達也氏に話を伺った。

「人口減少」が不動産業界の「働き手」与える影響とは?

――前回、ショウタイム24が「スマートロック」のような新たな技術を活用して、賃貸契約のプロセス自体を変えようとする新たな取り組みについて伺いました。そもそもの構想はどこから生まれたのでしょうか。

市川達也氏(以下敬称略) 全体像を構築したのは当社の経営陣です。不動産や賃貸業界内のあらゆる問題を包括的に解決する方法を考えた結果、まず「内見の無人化」、「契約手続きの簡素化」にたどり着きました。そして、それらの施策を実現するためのポータルサイトを作ろうと考えました。

それがLEASE24という名の借り手のためのポータルサイトです。こちらで物件探し、内見、契約、退去時の手続きなどをワンストップで行うことができます。一方、オーナーにとっては物件の自主管理ツールとしての機能を持たせています。前回お話した通り、スマートロックを使うため入居、退去に伴う鍵の交換や鍵の管理が不要になり、内見の無人化によって立会う必要もなくなります。夜間や早朝といった時間の内見需要も獲得できるようになります。

――少子高齢化、人口減少という大きな流れの中で、無人化やIT化は重要なキーワードになりそうですね。

市川 そう思います。人口減少は「働き手」の確保も難しくします。賃貸の主な顧客層である若い人が減れば、「借り手」の獲得も難しくなると同時に、仲介業者の営業スタッフの負担も大きくなるでしょう。労働環境が厳しくなれば、当然離職率が高まります。

残念ながら「辞める人が増え」、「育つ人は減る」ことになります。そのような環境の中、効果的に借り手を確保するには、従来のように仲介業者に任せきりで物件を提供するだけでなく、オーナー自身が借り手確保の段階から、積極的に賃貸経営に関わることが重要です。今後は、ITやIoTを活用し、手間やコストを抑えながら、借り手と直接つながれる手段を持つ必要が出てくるでしょう。

不動産の「新たなテクノロジー」に注目するオーナーが増えているワケ

――オーナー側の意識は以前と比べて変わってきているのでしょうか。

市川 先祖代々の土地を運用している地方の大地主のような大家さんは別ですが、基本的にオーナーはアンテナが高い人が多い印象です。当然、IT活用の検討や、仲介業者に頼らないプロセスを考えるといったことに積極的なオーナーは多いと感じます。

――LEASE24のような新たな賃貸契約の仕組みについて、どんな反応や感想がありますか。

市川 少し前までは、LEASE24のようなオーナーと借り手を直接つなぐポータルサイトの実現には「10年かかる」と捉えている人がほとんどでした。仲介業者を通じて物件を貸す仕組みが長く続いてきたため、すぐには変わらないだろうと考える人が多かったのです。しかし、今は現実的に見てくれる人が増えたと感じます。LEASE24に掲載するオーナーも着実に増えていますし、ITやIoT関連の会社への関心も高く、当社への問い合わせ数も増えています。

このように反応が変わってきたのは、不動産テックに注目が集まり、実用的な技術が目に見えて増えていることが一因だと思います。家具、家電付きの物件が流通し、サブリースや民泊といった新しい業態が注目されるようになったことも影響し、オーナー側では、物件価値や収益性を高める方法を考えている人が増えていると感じます。

――例えばスマートロックの設置は物件価値を高めるひとつの方法といえます。収益性を高める取り組みは他にどのようなものがあるのでしょう。

市川 「民泊」がわかりやすい例だと思います。民泊として貸すためには家具、家電を揃える必要がありますが、まずはそれだけでも「物件の価値」が上がります。また、民泊自体が賃貸と比べて収益性が高いため、賃貸としての借り手と民泊の宿泊者を同時に募集したいというオーナーもいます。我々もそのニーズに応えるため、賃貸オーナーにとって賃貸契約するまでの空室期間に、賃貸と民泊との同時募集を行う賃貸経営システムを開発し、運用しています。

その上で、スマートロックがあれば民泊利用者への鍵の提供も簡略化でき、さらなる高収益が期待できるようになります。例えば、オートロック、宅配ボックス、wifiなどが当たり前になってきたように、スマートロックのような新しい設備もやがて当たり前に使われるようになるだろうと想定しています。

賃貸契約のプロセスに関しても、借り手が不動産屋さんに行き、内見に連れて行ってもらうやり方から、ポータルサイトやスマートフォンなどを使いながら、自分の都合に合わせて行うのが当たり前になるだろうと考えています。

――IT活用の意識を変えたという点ではIT重説*が可能になった影響も大きかったのではないでしょうか。
*賃貸借契約における「重要事項説明」のこと。

従来賃貸物件を契約する際は、宅地建物取引士自らが「対面」で説明を行うことが義務付けられていたが、平成29年10月より、ITを活用したビデオ通話等で⾏なうことが可能になった。

市川 そうですね。あらゆる手続きを対面で行うのが当たり前だった中で、重説をオンラインで行えるようになったのは大きな変化でした。LEASE24においても、オーナーと直接契約する場合は重説が不要ですが、管理会社経由で契約する場合はビデオ通話で重説が完結する仕組みを提供します。

ただ、説明そのものはオンラインでできるのですが、確認の書類は郵送して押印する必要があります。つまり、今も紙のやりとり、書類を保管し、管理し、必要に応じて探し出すといった作業が残っているのが現状です。

IT技術で「紙の書類」と「ハンコ」の文化もなくなる!?

――契約プロセスの簡素化という視点で見た場合、書類とハンコのデジタル化が課題になるということですね。

市川 はい。現状、国土交通省が重説の書面を電子交付するためのクラウドサインの実証実験に取り組んでいますので、その動向に注目しています。当然、借り手側から見ても、既存の契約の手続きを面倒くさく感じている人は多いはずです。クラウドサインの導入は借り手の負担軽減になりますし、将来的には賃貸市場の活性化にもつながっていくと思います。

このような取り組みも、今後の不動産業界のIT化やIoT活用を加速させるでしょう。不動産業界は「オフライン」といわれ続けてきた比較的保守的な業界です。過去の市場になかったものが受け入れられ、定着していくまでにはそれなりの時間がかかるだろうと思います。

ただし、それは見方を変えれば、IT化やIoT活用によってこれから大きく変化する可能性があり、新たな市場が生まれるということです。その背景にあるオーナーや借り手のニーズをしっかり捉えながら、我々はLEASE24を運用していきたいと思います。

インタビュー記事「前編」:オーナーと借り手を直接つなぐ『LEASE24』の衝撃~ついに仲介業者「不要」時代へ

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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