不動産投資の最新動向
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2019年10月31日(木)
「貸し手に“安心”、借り手に“信用”を提供する」 需給のミスマッチがある市場でOYO LIFEが目指すもの
OYO LIFEは「全く新しい賃貸のカタチ」をコンセプトに掲げる、まったく新しいタイプの賃貸事業として注目されている。面倒な契約もなく、初期費用不要。家具やインターネットも完備され、早ければ申込の翌日からでも生活を始めることができるという画期的なシステムは、これまでの賃貸物件の常識を覆すほどのインパクトをもたらしている。最終回は、貸し手のリスクを引き受けながら、借り手のニーズに応える新しいビジネスモデルの今後の展開について OYO LIFE CEOの勝瀬博則氏にうかがった。
「大家が貸したくない借り手」が増えていく現実にどう対処すべきなのか?
――人口減少という大きな社会的変化があるなかで、OYO LIFEはどんなことを目指しているのでしょうか。
勝瀬博則CEO(以下敬称略) 簡単に言えば、貸したい人と借りたい人の適切なマッチングです。前回お話しましたが、人口減少を端的に言い換えれば、定職を持つ若い層が減り、高齢者、非正規雇用の人、外国人の割合が増える傾向にあるということです。大家さん側から見ると、貸したい人が減り、できれば貸したくない人が増えている、と言ってもよいでしょう。しかし、どのような属性であれ、部屋を貸さなければ収益は得られません。そういう物件をOYO LIFEが借り上げることで貸したい人のニーズを満たします。
一方の借り手側には、借りたくても借りられないという事情があります。例えば、高齢者は定職についていないため審査に通りづらくなりますし、若い層では敷金礼金など初期費用を準備できない人がいます。そういう人たちもOYO LIFEで快適な住居を確保することが可能になります。
既存の審査では通らない人でも「ビッグデータ」に基づき信用する!?
――簡単にいえば、貸し手のリスクをOYO LIFEが引き受けるというわけですね。
勝瀬 はい。借りた物件の家賃の回収や客付けのための広告なども当社負担で行います。また、当社にとっての利益はそのような費用の回収後に生まれます。物件の瑕疵や重要な契約違反などがあった場合を除いて基本的には長期で借りることになるため、その点も大家さんのベネフィットになると思います。
一方の借り手側は入居のハードルが低くなります。これまで、定職がない人が入居審査で落ちてしまうということは、大家さん目線で見て家賃を滞納するリスクがあったからと判断されていたためです。入居時に収入を聞くのも、収入の3分の1が目安といわれる家賃を払えるかどうかの目安にするためでした。
しかし、家賃滞納のリスクは定職の有無や収入の額だけでは測れません。定職に就いていなくても十分な預金がある高齢者もいますし、人気ユーチューバーのように収入が多い人もいるのです。そういう人がOYO LIFEを使い、クレジットカード決済で滞納なく家賃を払っていけば、その実績がその人の信用として蓄積されます。貸し手と借り手のマッチングは、大家さんに安心を提供し、借り手に信用を提供することと言い換えてもよいと思います。
――物件はどのようなルートで確保しているのですか。
勝瀬 3つのルートがあります。1つは、全国の管理会社を通じて物件を確保するルートです。2つめは建物を建てているデベロッパーから確保するルート。3つめは大家さんから直接借りるルートです。
仲介を担っている管理会社やデベロッパーが扱う物件のなかには、なかなか客付けできない物件もあります。管理会社の場合は入居者を確保できないことによって大家さんからプレッシャーがかかるケースもありますし、デベロッパーは建築後の客付けに時間、手間、コストがかかります。そのような課題を我々が物件を借りることによって解消することができるのです。
――大家さんとの直接契約は、物件を仲介する管理会社に嫌がられませんか。
勝瀬 仲介や管理業務のマーケットシェアを奪われるのではないかと誤解されることはあります。しかし、それは事実ではありません。そもそも大家さんと管理会社の間には長年の付き合いによって構築されてきた信頼関係があります。我々が大家さんを当たってもすぐに切り替えようという話にはなりません。
また、大家さんの特定も難しいため、現在は管理会社を通じて物件を紹介してもらうのが基本的な流れです。また、我々が管理するのは専有部分ですので共有部分の管理は引き続き管理会社が行います。客付け後の入居者対応は我々が行いますので、そのために使っていた手間や時間を、管理戸数を増やすために使えるようにするなど、協力していただくことによって生まれるベネフィットのほうが大きいだろうと思います。
「地方」や「高齢者」の需要にも幅広く応えたい
――最後に、今後の展望を教えてください。
勝瀬 OYO LIFEは当初「旅するように暮らす」をコンセプトとして東京中心部の物件からスタートしました。東京からスタートしたのは、OYO LIFEの長所を広く知ってもらうためのブランド戦略に基づくもので、実は我々が本当に力になれるのは、空室リスクが高まっている都市部周辺や、地方の市場だと思っています。
人口が流入してレッドオーシャン化している東京とは対照的に、人口が流出している地方はブルーオーシャンですし、その中間にはパープルオーシャンがあります。今後の賃貸市場を支えていくという点から見ると、パープルからブルーの領域で、魅力ある物件を増やすことが重要です。我々のビジネスモデルは、そのエリアの需要を活性化することができます。スマホで契約し、手軽に住み替えられる利便性を、パープルオーシャンやブルーオーシャンのエリアにも広げていけると思っています。
――地方移住の手軽な手段にもなり得るということですね。
勝瀬 そう思います。例えば、高齢者が夫婦や友人同士で地方を旅行した際に、「いい街だな」「こういうところにゆったりと住んでみたい」と思うこともあるでしょう。しかし、その思いを実現するためには、家賃の何倍もの費用をまず用意しなければならないというハードルがあります。そしてまた空き物件があっても、年金生活だから、定職がないからという理由で借りられないこともあります。
そんなときにOYO LIFEの物件を利用できれば、お試しで手軽に住むことができるのです。もちろん住み心地が良ければ移住するといった選択肢もつくり出せます。そのためにも、物件のエリアを拡大し、全国規模でパートナーとなる大家さん、管理会社、デベロッパーなどを増やしていきたいと考えています。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。