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賃貸併用住宅はリスクだらけ? 後悔する人が続出する理由

目次

賃貸併用住宅という不動産投資の手法をご存じでしょうか?

近年、賃貸併用住宅による不動産投資を勧める業者が増えています。

実は蓋を開けると、賃貸併用住宅はデメリットが大きいのです。

今回は、賃貸併用住宅のメリットやデメリット、賃貸併用住宅に取り組んで後悔したパターンを紹介します。

自宅に住みながら不労所得が得られる!?

賃貸併用住宅とは、自宅と賃貸アパートを併設した建物のことで、所有者である不動産オーナーは、住宅に住みながら賃貸経営ができます。

一般的には、自宅部分が50%以上を占めており、残りの間取りをアパートとして貸し出している物件のことをいいます。

賃貸併用住宅のメリットとは

不動産投資をはじめとした資産形成では、メリットとデメリットの把握は不可欠です。

まずは賃貸併用住宅によって得られるメリットを解説しましょう。

最大のメリットは住宅ローンが使えること

賃貸併用住宅は、住宅ローンが使えるのが最大のメリットです。

不動産投資は、金融機関から融資を受けて取り組むのが一般的。

少ない自己資金でも融資を受けることで高額な物件を所有でき、大きな利益を生み出せるレバレッジ効果が期待できるからです。

マンションやアパートの不動産投資の場合は、不動産投資ローンを利用しなければなりません。

仮に住宅ローンを利用して不動産投資をした場合、それが判明したときに不正利用とみなされます。

不正利用がバレてしまったら、ローンの一括返済を求められたり、その後銀行からの融資がおりづらくなったりするので要注意です。

一方、賃貸併用住宅のポイントは、前述した自宅面積が50%を超えていれば、合法的に住宅ローンが使用できるのです。

住宅ローンは金利が安く、最長35年ローンが組めて、ローンの審査も通りやすいというメリットがあります。

「家賃収入でローン返済可能」「ライフスタイルの変化に対応可能」は本当にメリット?

賃貸併用住宅を販売している不動産会社が、住宅ローンの活用の次に売り込んでくるのが、「家賃収入でローン返済できます」「ライフスタイルの変化に柔軟に対応できます」の2つです。

はたしてこれらは本当にメリットなのでしょうか。

まず、家賃収入でローン返済できるメリットについてですが、収益性に関しては通常のアパート賃貸経営の方が明らかに多くの家賃収入を得ることができます。

自宅が50%で、残り50%を2部屋の賃貸アパートとして貸し出した場合、家賃8万円としたら毎月の家賃収入は16万円です。

一方、同じ広さの賃貸アパート4部屋と比較した場合、家賃8万円という同条件であれば毎月の家賃収入は32万円になります。

たとえ、家賃収入がローン返済にあてられるとしても、全部屋を賃貸として活用した場合と比べて、利回りが下がるのです。

次に、ライフスタイルの変化に対応できるというメリットを考えてみましょう。

将来、賃貸部分をリフォームして二世帯住宅にすることもできるという謳い文句があります。

しかし、もともと複数部屋の賃貸アパートとして貸し出していた物件だと考えると、切り替えの際にリノベーションや建て替えすることが大前提となります。

壁を取り壊し、シングル用だったキッチンや風呂をファミリー用にしなければならず、設備の内容次第ですが、1000万円近くかかる可能性が大きいです。

賃貸併用住宅には、メリットに見えて実はデメリットに近い特徴があるのです。

実はデメリットだらけ!?

複数物件を所有するベテランの不動産投資家ほど、賃貸併用住宅に手を出さないといわれています。

その理由は、なぜなのでしょうか。

デメリット①:設計上の自由度が低すぎる

賃貸併用住宅は自宅が50%を占めるという前提があるため、設計上の制約が大きいです。

賃貸アパート部分を増やして賃貸収入を増やしたい場合は、自ずと自宅部分は狭くしなければなりません。

土地の大きさは購入してしまえば広げることはできないので、部屋数を増やしたければ、無理やり狭い部屋をいくつも用意することになります。

そんな物件では借主を探すのもひと苦労でしょう。

自宅は狭くていいという理由でアパート部分を増やしたとしても、自宅が50%未満の広さになれば、賃貸併用住宅最大のメリットである住宅ローンが利用できません。

デメリット②:サブリース前提での契約となりうる

賃貸併用住宅では、融資の条件としてサブリースが前提となり、サブリース会社が指定されがちです。

サブリースとは、空室時でも家賃保証をしてくれるサービスですが、サブリースを利用してしまうと、満室時でも家賃が80%しか振り込まれません。

さらに、空室が増えたり続いたりすると、サブリース会社から賃料減額請求をされる可能性が高く、実質的にサブリース契約をしても空室リスクはヘッジできません。

そのため、賃貸経営がどんなにうまくいっても収益は最大化されず、うまくいかない場合は、家賃を下げるリスクがつきまとうのです。

デメリット③:住宅ローン控除の対象は自宅部分だけ

賃貸併用住宅では、住宅ローン控除が受けられることがあります。

ただし、それは自宅部分に限られます。

住宅ローン控除は、住宅ローンを組むことで所得税を節税できるのが大きなメリットですが、賃貸アパート部分には適用されないので実は節税効果がかなり薄くなるのです。

賃貸併用住宅は、一般的な住居と比較すると土地面積が大きくなるため、借りられる住宅ローンの金額も大きくなります。

ただ、住宅ローン控除が利用できるのが自宅部分のみのため、借入金残高のうち自宅とアパートの面積で割った金額だけが対象となります。

デメリット④:売却と相続がしづらい

戦略的に不動産投資に取り組む投資家ほど、最終的には売却益で大きな利益を得ることを考えています。

賃貸併用住宅の場合は、本来大きなキャピタルゲインを得られるという不動産投資のメリットが享受しづらいという、最大のデメリットがあるのです。

賃貸経営が目的の不動産投資家からすれば、賃貸併用住宅の自宅部分は必要ありません。

逆に住居を探している人からすれば、賃貸アパート部分は邪魔です。

リフォームやリノベーションでさらにコストや建築費がかかるとなれば、買い手が敬遠するのは容易に想像できるでしょう。

さらに、相続の面でもかなり難物となります。

買い手が見つけづらいために、相続したとしても簡単に手放せない上に、賃貸経営に取り組もうとしても築年数が経過していれば、なかなか借り手も見つからないでしょう。

賃貸併用住宅を選択して後悔したオーナーたちのリアル

ここまでに紹介したように、賃貸併用住宅はデメリットだらけです。

最後に、賃貸併用住宅の失敗でよくあるケースを紹介しましょう。

①入居者と生活リズムが合わない!

賃貸併用住宅の貸し出し部分は1Rや1Kであることが多く、対象者は若手社会人や学生が中心です。

借主たちは生活リズムがバラバラで、深夜に学生仲間で集まってオーナーが騒音に悩まされるという例は珍しくありません。

ほかにも、オーナーが寝静まっている朝方に帰り着く借主が、ガサガサと大きな物音を立てるので、寝不足になってしまったというケースもよく聞きます。

家族や子供も自宅部分に一緒に住んでいれば、不満は募るばかりでしょう。

一度入居した借主はそう簡単には追い出せないので、オーナーは生活リズムが合わないストレスに何年も悩み続けなければなりません。

②大家付きの物件は避けられる!?

そもそも、住まいを探す若者にとって賃貸併用住宅は不人気です。

以前は大家が近くに住んでいる安心感で選ばれる場合もありましたが、近年ではオーナーが同じ建物に住んでいることをよく思わない借り手も多いのです。

入居者と同じ建物に住んでいるため、管理会社に管理を任せていたとしても、オーナーが直接クレームを受けるなどトラブルに巻き込まれやすく、心労が絶えない大家は少なくありません。

賃貸併用住宅で中途半端に狭い自宅に住むぐらいならば、別で一戸建ての自宅を購入し、新築の賃貸アパートを建てたほうが良いでしょう。

賃貸併用住宅はタブー

以上のように、賃貸併用住宅はデメリットだらけなのです。

さまざまな対策を立てることもできるでしょうが、そこに労力を注ぐぐらいならば、普通の賃貸アパート経営に専念した方がマシでしょう。

そんなにかんたんにうまい話が転がっているはずはないのです。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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