不動産投資の最新動向
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2021年7月20日(火)
フルローンの不動産投資はリスクの塊! 頭金ゼロの甘い罠
不動産投資家の大半は、金融機関からお金を借りてローンを組んでいます。
「頭金0円の不動産投資!」や「不動産投資はフルローンでスタート!」といった売り文句で集客している業者やセミナーは少なくありません。
はたして、本当に頭金ゼロでも不動産投資で成功できるのか、フルローンにリスクはないのか?
今回の記事では、頭金ゼロのフルローン不動産投資で悲惨な結果を招いた不動産投資家の事例を紹介しつつ、フルローンのメリットやデメリットを解説します。
不動産投資はフルローンで実施できるのか?
不動産投資は、非常に高額な取り引きです。
現実問題、数千万〜数億円といった金額は、自己資金だけでとてもまかなえるものではありません。
一般的には、購入物件を担保に、レバレッジをきかせて金融機関から融資を受けます。
そもそも「フルローン」とは、通常は物件価格の3割り程度の頭金を用意しますが、頭金なしで資用物件の購入費用を全額、金融機関の融資のみでまかなう手法のこと。
ちなみに、金融機関への融資手数料や保証料、固定資産税などの諸費用も含めてローンでまかなう場合は、「オーバーローン」と呼ばれます。
金融機関の融資上限額は、物件価格の70%程度?
結論からいえば、フルローンやオーバーローンで物件を買うのは、現在では困難です。
2018年以降、スルガ銀行といった金融機関の不正融資事件が相次ぎました。
不正融資を受けて、手元資金が乏しいサラリーマンが不動産投資に手を出し、その後のローン返済で破綻する人が続出したのです。
金融庁はそのような状態を問題視し、不動産融資に対する締め付けを強化。
結果、銀行は「物件価格の70%の融資上限額」を基準に融資を決めるようになったのです。
最近では、どんなに基準が緩い銀行でも、融資額は物件価格の90%まで。
フルローンを許容する銀行はほとんどなくなりました。
フルローンが受けられる要件とは?
建前上はフルローンの融資審査が厳格化されているとはいえ、不動産融資というのは、銀行などの金融機関からすれば、大きな利益を生み出す可能性にみちた魅力的な商品。
要件しだいでは、現在もフルローンが組める金融機関もあります。
金融機関がフルローン承諾にあたって確認する項目は、次のような条件です。
①年収や勤める企業が高条件である
融資を許可する第一の判断基準としては、「年収」です。
年収が高い職業であること、公務員や上場企業勤務といった倒産リスクの少ない職業であることは、かなり重要な要素。
くわえて、勤続年数が長いこと、不動産投資に取り組んで実績を上げている人は、融資を利用できる可能性が高くなります。
②借り入れが少ない
不動産投資ローンや住宅ローンのほか、カードローンやキャッシングで残債務が多くあれば、融資審査ではマイナス評価となります。
逆に、借入金がほとんどない、もしくはゼロであれば、ローンがおりやすくなります。
③給料のほかに返済のあてがある
金融機関が融資を許可する要素の一つに、「毎月きちんとローンを返済できること」があります。
すでに不動産投資で得ている家賃収入があったり、上場企業勤務で潤沢な退職金が出る予定があったり、企業年金があったりすると、プラスと判断されます。
④物件価値や収益性が高い
投資用不動産の価値や収益性の高さも、融資を引き出すポイントの一つです。
賃貸需要の高い立地であったり、築年数が浅い物件であったりなど、将来的に物件価値が上がる可能性がある物件だと、高く評価されます。
ちなみに、マンション経営よりもアパート経営のほうが、フルローンの融資はおりづらいようです。
鉄筋コンクリートマンションは法定耐用年数が47年もあるのに対して、アパートは木造建築が多く、木造の法定耐用年数がたった22年。
そのため、ローン返済額のシミュレーションが組みづらく、多額の融資がおりづらいのです。
フルローン不動産投資の悲惨な事例に学べ!
不動産業界の裏事情を知っていれば、「不動産投資はフルローンのほうが大きな収益を狙えます」というのは、恐ろしいことこのうえないセールストーク。
しかし実際に、このような売り文句で営業をしている不動産営業マンがたくさん存在います。
こういった営業トークを間に受け、後になってトラブルに陥るのは、年収400万〜500万円のサラリーマン層。
「高年収」とはいわないまでも、収入が安定しているという点で、不動産投資ローンを組みやすいのです。
実際、年収500万円のサラリーマンが3〜4戸の物件を購入するケースも……。
ローンが通ってしまったら、それは地獄のはじまりです。
なぜなら、戸数が増えると、フルローンによる高い金利の負担も雪だるま式に増えてしまうからです。
一件でもフルローンで自己資金なしに不動産投資に手を出してしまった人は、賃貸経営が火の車になることが目に見えているわけですが、ここで、不幸な実例を見てみましょう。
世帯年収500万円で不動産投資に失敗した夫婦の末路
20代後半で共働きの夫婦の話です。
都内在住で、旦那のAさんが「住まいの街頭アンケート」に答えたことで、不動産営業マンからの勧誘を受けたのがすべてのはじまりでした。
Aさん夫婦の貯金は、辛うじて250万円ていど、世帯年収が500万円という一般的な家庭です。
営業マンのセールストークは「世帯でも年収が500万円あれば、安心して不動産投資が始められます!」というもの。
子どもはいませんでしたが、「将来に向けて手堅く稼げるのならば」と、不動産投資へのチャレンジを決めたのです。
融資審査で無事にフルローンが通り、もともとの貯金250万円は、自分たちの今後の生活資金として蓄えておく予定でした。
しかし、いざ始めてみると、すぐに空室が続いて赤字経営に。
「投資マンションを買っても住宅ローンは組めます」という当時の営業マンのトークを信じていたのに、投資物件が赤字であることを理由に、住宅ローンがおりなかったのです。
くわえて、建物の経年劣化による修繕積立金の値上がりもあり、支出は増えるばかり。
Aさん夫婦は結局、資金捻出に耐えられなくなって自己破産を決めましたが、その時点でローンの残債は6500万円も残っていました。
頭金なしの不動産投資は、自己破産へのカウントダウン
フルローンには、少ない自己資金で最大限のリターンを得られるレバレッジ効果が期待できるというメリットがあります。
しかし現実問題、フルローンによる不動産投資は、高金利の借金を積み上げるだけ。
金利上昇リスクを鑑みると、利息が大きくなって返済が困難となり、自己破産までは秒読み状態です。
不動産投資を始めたいならば、まずは必要な自己資金をしっかり確保してから始めましょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。