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不動産投資の最新動向

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不動産投資、融資の裏事情!――「融資地獄」に陥る人の特徴とは?

目次

不動産投資を実行するにあたり、ほとんどのケースでは銀行をはじめとした金融機関からの融資を利用します。

しかし、不動産投資ローンを返済しながら賃貸経営に取り組むなかで、融資の返済が厳しくなる「融資地獄」に陥り、結果的に自己破産にまで至る不動産投資家は珍しくありません。

社会問題にも発展した「かぼちゃの馬車事件」はその最たる例です。

融資地獄に陥る人には、どのような特徴があるのでしょうか。業者の悪質な手口をふまえて解説します。

金融機関が不動産投資に対する融資の引き締めを強化

かつて不動産投資は一部の富裕層のみが行なっていた投資でしたが、融資を活用した不動産投資の手法がサラリーマンにも普及し、サラリーマン投資家ブームが起きました。

給与が安定しているために融資の返済期間を長く設定できたことも、不動産投資がサラリーマンに広まった要因の一つでしょう。

ただ、自己資金の少ないサラリーマンが手軽に不動産投資を始められる、といううまい話に乗ってしまい、その後の賃貸経営で破綻する投資家が相次ぎました。

最も有名なケースは、700人以上ものサラリーマンが融資地獄に落ちて路頭に迷った「かぼちゃの馬車事件」です。

この事件がきっかけで、金融機関は融資の引き締めを強化するようになりました。

金融庁を動かした「かぼちゃの馬車事件」の真相とは

サラリーマンが不動産投資をするにあたり、融資を活用しやすいことでお馴染みだったのが、スルガ銀行です。

他行では融資がつきにくい物件でもお金を貸してくれる金融機関で、融資審査のスピードの早さも選ばれる理由の一つでした。

「かぼちゃの馬車事件」とは、新築シェアハウス「かぼちゃの馬車」を販売していたスマートデイズと提携先の販売会社が、融資書類の改ざんをして、不正に多額の融資を引き出していた事件です。

実はスルガ銀行は、販売会社の不正を把握していながら、融資実績欲しさに不正を黙認していました。

その事実が明るみに出たことで、大問題に発展したのです。

シェアハウス投資を実行したのは、本来融資を受けられないような低年収のサラリーマンばかりでした。

彼ら・彼女たちに物件の目利き力などあるはずもなく、購入した物件が空室だらけになるケースが相次いだのです。

くわえてスマートデイズは、下請けの建築会社からのキックバックを目的に、オーナーに相場よりも非常に高い金額で物件を販売していました。

当然、投資家の利回りは低くなるので、かぼちゃの馬車への投資は始める前から失敗が見えているようなスキームだったのです。

さらに、シェアハウスからの賃貸収入を補償してくれるはずだったサブリース会社が倒産し、サブリース賃料の未払いが続いたことで投資家のローン返済額がふくらみ、最悪のケースでは自己破産を余儀なくされた投資家もいました。

金融庁は業者の悪質性を重く受け止め、融資実績の調査やリスクへの管理指導を徹底するなどして、各金融機関に対して融資の引き締め強化を図りました。

そのため、2018年頃を境に、現在まで銀行の融資実行額は低い水準になっています。

本当にあった悪質な手口

不動産投資とは、一種の事業経営です。

安定した収益を得るには勉強が重要ですし、知恵も振り絞って戦略を立てていかなくてはなりません。

一方で、無知な不動産投資家にあえて不利な情報を与えず、合法的に相手を罠に陥れる悪徳業者がウジャウジャ存在するのも事実です。

しかも、そのなかに世間的には信用のある銀行員などの金融機関が含まれています。

実際にあった金融機関の、悪質なやり方を紹介しましょう。

融資審査の基準とは?

不動産投資向けの融資では、職種、勤務先、勤続年数など個人の属性や物件評価が審査対象になり、その結果が良ければ担保価値の高い物件を購入できるようになります。

金融機関の物件評価は、耐用年数の長さからアパートよりもマンションのほうが高い傾向にあり、融資の借入期間や限度額の評価においては、築年数と物件の収益性が重視されます。

なお、不動産投資を行なう場合は、頭金を最低1〜3割は自己資金から出して融資を受けるのが望ましいといえます。

つまり、通常であれば低年収・貯金ゼロのサラリーマンは融資審査で落とされる確率が高いのです。

融資審査の資料改ざんを黙認?

「かぼちゃの馬車事件」で、スルガ銀行では、投資家に手持ちの自己資金がないのにもかかわらず、億単位の融資額を引き出していた事実が、第三者委員会の調査報告書から明らかになりました。

あるケースでは、自己資金のない投資家がまるで購入価格の10%を自分で捻出したかのように、販売会社が通帳や関係資料を偽装し融資を引き出しています。

他のケースでは、債務者本人の給与収入を実態よりも多く見せるための偽装工作も行なわれています。

一般的には、不動産投資を始める最低基準は年収500万円以上といわれますが、それに満たないサラリーマンも、偽装工作によって融資を受けることが可能となったのです。

指摘されたのは、このような販売会社の不正を、スルガ銀行側も知っていながら黙認していたという疑惑です。

スルガ銀行はかつて「地銀の優等生」と持てはやされていましたが、実態としては過剰なノルマで行員を追い立ててどうにか収益力を保っていました。

サラリーマン投資家は、とにかく売上が欲しい販売会社と銀行の板挟みになり、犠牲になってしまったのです。

物件資料や売買契約書の偽装はそもそも多い?

不動産投資業界に関しては、そもそも偽装や不正が多いといわれています。

実際の物件よりも入居率を高く偽ったり、家賃収入を実態よりも高額に見せたりするのは日常茶飯事。

空室の部屋にカーテンをつけて満室に見せ、投資家の購入判断を誤らせるカーテンスキームも有名な方法です。

さらに、二重契約となる売買契約書の偽装もしばしば行なわれています。

不動産会社が金融機関への提出用に金額をカサ増しした契約書と実際に投資家と結ぶ契約書の2種類を用意し、債務者が満額融資を受けられるように偽装工作するのです。

契約書が2種類あること自体が不自然ですが、不動産取引が初めての初心者であれば、「不動産業界ではそれが普通だ」と説明されれば、信じてしまうのも無理はありません。

融資地獄に陥りやすい人の特徴とは?

融資地獄に陥ってしまうのは不動産会社の悪質な手口によるケースが大半ですが、購入を決断した投資家にも責任の一端があります。

融資地獄に陥りやすい人には、次のような特徴があります。

・投資物件を直接確認することなく購入を決めてしまう
・サブリースの制度に安心して賃料相場の調査を怠ってしまう
・新築区分マンションで、赤字収支となる物件を買ってしまう
・複数の不動産会社に相談せず、1社との面談で決め打ちしてしまう
・特定の不動産会社やコンサルの言うことを鵜呑みにしてしまう
・不動産投資を勉強することなく、短期間で購入を判断してしまう

「かぼちゃの馬車事件」で矢面に立った新築シェアハウスの入居者募集サイトは、誰でも閲覧可能なオープンなもので、ある程度経験のある不動産投資家であれば、あまりに多くの物件で入居者を募集していることは明らかでした。

つまり、かぼちゃの馬車自体が空室物件ばかりである事実は、一目瞭然だったのです。

賃料相場についても、賃貸募集サイトなどで周辺の物件を調べれば、おおよその相場がわかります。

シェアハウスの家賃が周辺より高く、実際には入居者が集まらないであろうことは、事前に調査すれば容易に推測できました。

2種類ある融資金利も使い分けが必要

金利についてのシミュレーションが曖昧であったことも、多くの投資家が融資地獄に陥った一因です。

不動産投資の融資金利は、一般的に住宅ローンよりも高くなります。

高金利が負担にならないよう、できるだけ低い金利で融資を活用するよう考えなければいけないのです。

金利には「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。

固定金利は返済終了まで金利が変わりませんが、変動金利は定期的に金利が変動します。

固定金利のメリットは返済計画が立てやすいことですが、借り入れ後に金利が下がったとしても返済額が変わらないことはデメリットです。

変動金利は借り入れ後に金利が低くなったときに返済額も少なくなることがメリットである一方で、返済額が変動するため返済計画が立てづらいというデメリットがあります。

普通は、固定金利より変動金利のほうが計算上の返済総額は少なくて済みますが、金利の変動リスクを回避して計画どおりに返済することを優先するのであれば、固定金利を選ぶべきでしょう。

それぞれの特徴を踏まえて、どちらの金利を利用するかを検討する必要があります。

融資地獄の二の舞を避けた堅実な不動産投資を

今回紹介した通り、サラリーマンの人生を狂わせる借金地獄が現実に襲いかかってきたのが、「かぼちゃの馬車事件」による不動産投資ローンです。

次に第二、第三のスルガ銀行が出てこないともいいきれません。

融資地獄に陥りがちな人々の特徴やポイントをしっかり理解し、堅実かつ身の丈に合った不動産投資を実践しましょう。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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