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「相続税が強い」とうたう税理士に騙される!?

目次

2015年に相続税法が改正されて大幅増税となり、相続税が課税される世帯が拡大されて以降、「相続税に強い」とアピールする税理士が急増しました。

しかし、相続税の申告実績が多いからといって、どんな税理士であっても相続対策のベストパートナーになりえるわけではありません。

相続対策を依頼する税理士を間違えることで起こる恐ろしい事態と、その防ぎ方を解説します。

相続税に強い税理士とは?

一般人の感覚からすれば、税理士であれば皆、税金のことはすべてわかっているものだと思いがちですが、そんなことはありません。

実は、相続税に詳しい税理士は、税理士全体のなかでも一握りなのです。

その大きな要因は、税理士資格を得るための試験の方式にあります。

相続税法の試験を受けていない税理士も

税理士資格を得るには、会計学に属する必須科目の2科目、税法に属する7科目のうち受験者の選択する3科目(所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択しなければなりません)の試験を突破する必要があります。相続税法は、必ず受験しなければいけない科目ではありません。

参考:国税庁ウェブサイト

つまり、税理士のなかでも、税理士試験の際に相続税法を受験していない税理士がいるのです。

相続税法を選択していない税理士に、相続対策のパートナーを務めることはできません。

相続案件は珍しい?

相続税法の試験に合格している税理士であっても、それだけで信用に足るわけではありません。

相続案件というものは、一般の個人や法人の顧問業をメインにする事務所においては、かなりレアな案件だからです。

相続案件の多い事務所でないかぎり、一人の税理士が年間に扱う相続申告の案件は、実際のところ1〜3件程度。なかには、年間を通して相続案件をまったく扱わない税理士もたくさんいます。ほとんどの税理士が、相続申告の経験が不足しているといえます。

つまり、確定申告などで付き合いがある税理士に相続対策をそのまま依頼すると、それだけで税理士選びを間違えてしまう可能性が高いのです。

繰り返しますが、税理士ならだれでも相続に対応できるというのは、大きな誤解です。

自称「相続に強い」税理士に要注意

ネットなどで「相続に強い」とうたっている税理士を見つけて依頼すればいいのかといえば、必ずしもそうとはいえません。

不動産投資塾の取材によれば、相続税に強いと自称する税理士に依頼したことで、次のような問題やトラブルが起こっています。

節税はできても相続トラブルになる

相続対策のことを「相続税の軽減」とだけ認識している税理士もいます。

相続税を節税する基本的な方法としては、下記の2つが挙げられます。

①贈与税が控除される仕組みを使い、生前に財産を受け渡すこと
②相続税評価額が低い資産に組み替えて相続すること

気をつけたいのは、②の方法です。

相続税が課される資産の額面を圧縮することばかり考えていると、のちに思わぬトラブルにつながります。

多いのが、資産を節税効果の大きな不動産に組み替えたことで、資産を複数人に公平に分割できず、トラブルになったケース。

遺産分割のために、不動産を相続人(受け継ぐ側)たちの共有名義にするのも悪手です。承継後の活用や転売の難しさが原因で揉める一家は、後を絶ちません。

節税ばかりを勧め、家族のその後を考えてくれないような税理士は、信用しないほうがいいでしょう。

節税対策が税務署に否認される

相続に際して税理士ができることというのは、あくまで相続申告を代行することだけ。

当然のことながら、申告自体の責任は、依頼主が負います。

したがって、節税対策が税務署に否認され、多額の追徴課税が課されたとしても、アドバイスした税理士の責任を問うことはできません。

代表例が、2011年の「タワマン節税否認」の判例です。

当時、タワーマンション購入には大きな節税効果があるとして注目を集めていました。このケースでは、被相続人(亡くなる側)が7月4日に入院し、8月4日に被相続人名義でタワーマンションを購入され、被相続人が9月3日に亡くなりました。極めて早いスピードでことが進んだのです。

購入価額およそ3億円のマンションは、約6000万円の相続財産と評価され、節税額が非常に大きかったこともあり、税務署は「相続税を減らす目的のマンション購入であった」と認定。差額の約2億4000万円に対する相続税の支払いを、遺族に命じました。

税理士の口車に乗って相続税対策に走り、上記のケースのように否認されても、税理士は一切責任をとってくれません。

提案される対策を、慎重に吟味する必要があります。

不動産業者の手先になっている税理士も

不動産購入は、うまく使えば非常に有効な相続節税策になりえます。

しかし、「提携している不動産業者がいるから、現金を不動産に換えましょう」税理士がとやたらに勧めてくる場合は、疑ったほうがいいかもしれません。

そのような税理士は、顧客を仲介することで不動産会社から得られるバックマージンを、隠れた収益にしている税理士という可能性があるからです。

一般的な相続申告の税理士への報酬は、相続財産の1%程度。相続財産が1億円を超えるケースはそれほどありませんから、ほとんどは申告1件につき二桁万円の報酬になります。

しかし、依頼人が提携業者から不動産を購入すれば、物件価格の数%がバックされる取り決めになっていた場合、物件成約によって税理士の収入は跳ね上がります。それを狙って「相続に強い」とうたう税理士もいるのです。

なお、宅建免許を有さない人が、実質的に不動産売買の仲介にあたる業務を継続的に行なっていた場合、宅建業法違反と見なされる可能性があります。

不動産業者の手先になっている税理士は、違法業者の危険すらあるのです。

相続対策は人まかせにしない

相続についてどんな税理士に依頼するとしても、相続対策で重要なのは、自分の家族が最大限に満足する形はどのようなものか、自らの頭でしっかり考えることです。

税理士まかせで進めようとすると、親族トラブルを招いたり、最悪の場合は多額の追徴課税で親族が「相続破産」したりする恐れもあります。

不動産購入は、相続対策の一つの選択肢ですが、その他の選択肢も含め、先々のことまで細かくシミュレーションして対策することが重要です。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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