不動産投資の最新動向
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2020年12月28日(月)
不動産投資で自己破産! 実例から解決策まで
不動産投資家として成功し、安定した不労所得を得たい!——そんな夢を見て始めた不動産投資でも、失敗する人は後を絶ちません。
「かぼちゃの馬車事件」や「レオパレス問題」に代表されるように、不動産投資をきっかけに自己破産する人すら出ています。
利益をあげるために始めた不動産投資なのに、なぜそのような事態に陥るのでしょうか。
自己破産を引き起こす具体的な失敗事例を紹介し、自己破産以外に取る手立てはないのかを考えてみましょう。
高額所得者も自己破産!? 「ローン返済」の落とし穴
「不動産投資を始めれば、毎月ベースで安定した収入が長期的に得られる!」——そんな希望を抱いて不動産投資を始めたオーナーは多いでしょう。
しかし、物件購入時にローンを組み、そのローン返済が困難になって自己破産してしまうケースは、決して少なくありません。
実は、医師や外資系のエリートサラリーマンなど、ローンが通りやすい高額所得者が破産してしまう例も非常に多いのです。
なぜ不動産投資で破産するのか
不動産投資の失敗で特に多いのが、「高利回りの不動産投資」という営業マンの売り文句に飛びついて意欲的に挑戦した結果、収支のシミュレーションや見通しが甘くなり、失敗してしまうパターンです。
なぜ、前述のような、医師や外資系エリートサラリーマンなどの高所得者でも破産に陥ってしまうのでしょうか。
それは、高属性であるがゆえにローンが通りやすく、高額な物件に手を出す傾向にあるからです。結果的に、数千万から数億円単位の損失を被ってしまう人もいます。
なかでも、簡単にローン審査が通ったことが原因で大事件に発展したのが、「かぼちゃの馬車事件」です。
これはスルガ銀行が、元来不動産投資できないような年収400万円程度のサラリーマンにも融資を通していたことが原因です。
スルガ銀行は、かねてから融資審査の緩い銀行として有名でしたが、提出される融資資料を不動産会社側が改竄していたことで、数々の不正融資が成立したのです。
この不正により、1億円の借入を月額50万円で返済するような驚くべき融資が横行しました。返済ができなくなり、自己破産に陥ったサラリーマンもいます。
不動産投資で自己破産する主な失敗事例
ここで、不動産投資で自己破産してしまった失敗事例をご紹介しましょう。
①収益性の低い物件を購入した
収益性が低い物件を購入すると、結果的にキャッシュフローが出にくくなります。なぜなら、一見利回りが高いと思われる物件を購入しても、実際は稼働率が低く、空室だらけになってしまうケースがあるからです。
利益が減ると、当然のことながら赤字に直結する恐れが増します。手持ち資金でやりくりできなくなれば、自己破産は目前です。
②減価償却の終了による税金負担額上昇
不動産投資の対象である建物には、減価償却期間が定められています。これは不動産投資のメリットの一つですが、減価償却期間中は「建物が老朽化して価値を失っていく」ことを損金として計上ができるため、節税につながるのです。
しかし、この減価償却期間が終了すると、この控除分がなくなり、負担する税額が増えてしまいます。
毎月の収支がギリギリだった場合、そのまま資金繰りが悪化して破産への一途を辿ることになります。
③物件を高値掴みした
「高値掴み」とは、実際の物件価値よりも高い値段で物件を購入してしまうことです。
購入前の物件価値の判断ミスが最大の原因ですが、物件の高値掴みをしてしまうと、想定した収益が出なかったり、ローン返済額が増えてしまったりします。
特に、想定利回りしか出せない新築物件の場合は、より注意する必要があります。
中古物件の場合は、利回りの実績があるため、相場通りの取引になることが多いですが、新築物件の場合は「新築」という安心感から、想定利回りを信じ切ってしまうということがあるのです。
④デッドクロスになった
「デッドクロス」とは、元金の返済額が、減価償却費用を上回った状態のことです。
これは、手取り金額が少ないのにもかかわらず、帳簿上では黒字のため、所得税を多めに納税する必要が生じます。
このデッドクロス状態が続くと、手元の資金がゆくゆくは枯渇し、結果的に破産してしまうのです。不動産投資においては、手元に充分なキャッシュを持っておくことが重要です。
⑤ローンが高金利になっている
ローンの金利が高いと、当然ながらキャッシュフローは悪化します。いくら安い物件を購入したとしても、返済に苦しむことになり、自己破産の可能性が高まります。
特に不動産投資初心者は、金融機関から金利を高めに提示されることが多く、本業での年収や信用情報が低い場合も同様に高金利になりがちです。
仮に高所得者であっても、物件の収益性が低いと判断されれば金利は高くなり、審査にも通りづらくなります。
ローンをできるだけ低金利にするには、入念な収支のシミュレーションを行ない、根拠ある事業計画と返済計画を準備することが必要です。
⑥不動産業者の営業トークを鵜呑みにした
不動産投資で失敗した人の直接的な要因として多いのが、営業マンの巧妙なトークに引っかかってしまったというものです。
不動産会社や不動産コンサルタントの「私にお任せいただければ問題ありません!」という態度や怒涛のような営業トーク、プレゼン資料などを鵜呑みにしてしまい、購入を決めてしまったケースは非常に多いのです。
特に、自分から不動産投資に興味をもって問い合わせたわけではなく、不動産会社からの電話営業やダイレクトメールをきっかけに不動産投資を決めた場合は、要注意です。
自己破産してしまったら、生活はどうなる?
自己破産してしまったら、さぞかし苦しい生活が待っている……と思われることでしょう。
しかし、ご安心ください。自己破産したからといって、すぐさま人生が終了するわけではありません。
自己破産したあとには、具体的にどんなことが待ち受けているのかを解説しつつ、自己破産以外の対処法についてもご紹介しましょう。
自己破産するまでの流れ
まず、自己破産に至るまでの流れを見てみましょう。
①空室や家賃引き下げなどで家賃収入が減少
②ローン返済に自己資金の手出しが必要になる
③資金が底をつき始め返済が滞る
④金融機関から督促状が届く
⑤金融機関が債権をサービサーに売却する
⑥債権回収会社(サービサー)が担保物件を任意売却や競売によって債権を回収する
⑦残債務の返済も困難であれば自己破産する
これらのステップを経て自己破産に至るわけですが、金融機関が実際に動き出すのは、ローン返済が3ヶ月連続で滞納されたときです。
金融機関がこの債権の回収が困難だと判断した場合、「サービサー」、つまり債権回収会社が登場し、金融機関に代わって債権回収を行ないます。
担保物件を売却しても債務が残り、今後の収入から見ても返済が困難と判断されると、最後の手段として自己破産をするという流れです。
自己破産をしてしまった後のこと
自己破産をした後は、実生活に以下のような影響が考えられます。
①財産処分の範囲
自己破産すると、原則99万円を超える現金や時価20万円以上の価値のある財産は処分され、返済に充てられます。
基本的に、車や持ち家は処分されると考えてください。ただし、99万円以下の現金や、日常生活に利用する家具などは、手元に残ります。
保証人を立てれば、賃貸物件に住むこともできるので、最低限度の生活レベルは確保することができます。
②就業について
自己破産を理由に、就業が制限される職種や資格があります。弁護士や税理士などの士業、旅行業者、生命保険募集人などがこれに当たります。
これらの職種は、免責が確定されるまでは就業することはできないので、注意してください。
一方、会社勤めのサラリーマンは、自己破産を理由に解雇されることはありません。もしも解雇された場合は、「不当解雇」となります。
③ローンや新規借り入れが申請できない
自己破産すると、ローンや新たな借り入れが申請できなくなります。
自己破産後は各金融機関や消費者金融の閲覧する信用情報機関に自己破産の記録が残り、ブラックリスト扱いとなります。
ただし、5〜10年が経過すれば、ローンを組んだり新たに借り入れをしたりすることができます。
④税金は免責されない
自己破産と免責が成立しても、税金の滞納は免責とはなりません。
免責が成立した後も当然のように税金の請求は来るので、自己破産の予定がある場合は、事前に税金をすべて支払っておくようにしましょう。
自己破産以外の解決手段
自己破産のもたらす4つの事態をご紹介しましたが、自己破産以外に解決方法はないのでしょうか?
4つの救済措置をご紹介しましょう。
①リスケ(リスケジュール)
金融機関と交渉し、返済計画を立て直すことです。返済を一定期間待ってもらうか、毎月の返済額を減らしてもらうことが考えられます。
これはあくまで資金繰りが一時的に苦しくなった場合の救済措置のため、今後の改善の見込みがないと判断されれば、リスケが断られる可能性があることも覚えておいてください。
②任意売却
「任意売却」とは、売却後もローン返済額が残る場合に利用できる手段です。
ただし、任意売却をしても借金がゼロになるわけではく、残った借金は返済していかなければなりません。
③任意整理
「任意整理」とは、金融機関と交渉して利息を減らし、返済額や返済期間を調整することです。
リスケは「一時的な支払猶予」という位置づけですが、任意整理は借金自体を減額するという大きな違いがあります。弁護士に金融機関と交渉してもらうケースが多いです。
④個人再生
「個人再生」とは、裁判所の認可を受けたうえで、減額した借金を3〜5年程度かけて返済する手段です。おおよそ5割ほど借金を減額でき、最大でも9割カットできることもあります。
自己破産よりも手元に財産を残すことができるのが利点ですが、継続的な収入があり、借金が5,000万円以下の人に限らます。
先々のリスクを考えた見立てを
自己破産は最終的な手段と解説しましたが、それを前提として不動産投資に臨むのではなく、事前に調査や収支のシミュレーションをしっかりと行ない、物件の条件をきちんと見定めて購入することが重要です。
資金繰りは計画的に行ない、不動産営業マンのトークに乗せられ、綿密な計画なしに不動産投資を始めることは、絶対にやめましょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。