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【武蔵小杉タワマン浸水事故から読み解く落とし穴】

目次

街の再開発で急激な成長を遂げた武蔵小杉……1995年には地域初の超高層ビル「武蔵小杉タワープレイス」が完成しました。それからわずか10年ほどで14棟もの超高層タワーマンションが建てられ、「グランツリー武蔵小杉」や「ららテラス武蔵小杉」など商業施設がオープンして賑わいを見せました。武蔵小杉駅は神奈川県川崎市中原区に位置し、東急東横線、目黒線、JR南武線、横須賀線、湘南新宿ラインが通るターミナル駅の一つ。

急激な発展とともに注目度の高い街となりました。しかし、2019年10月の台風19号の直撃を受けて、タワーマンション乱立の落とし穴が見えてきたのです。今後の武蔵小杉のタワーマンション事情はどうなっていくのでしょう。

2019年10月台風19号の猛威でタワマンは機能停止に

史上最大規模の台風という触れ込みで日本列島を襲った、2019年10月の台風19号も、蓋を開けてみれば、日本全体としてはさほど甚大な被害とはなりませんでした。ただ、タワマンは違いました。災害にも強いと謳われていたタワマンでしたが、特にこの10数年で急激な発展を遂げた武蔵小杉で大きな浸水被害が話題になりました。

浸水による全棟停電、機能が停止してしまった武蔵小杉のタワマン

地上47階建て、総戸数643戸の憧れのタワーマンション「パークシティ武蔵小杉」は、一夜にして水に浸かってしまいました。近隣の多摩川周辺は泥水が氾濫し、建物が浸水しただけではなく、地下に格納されていた電気系統が故障し、全館停電。エレベーターはおろか水道も止まってしまうという事態に、住民は驚きを隠せませんでした。

実はパークシティ武蔵小杉の地下4階にはゲリラ豪雨に備えるための雨水貯留槽があったのですが、それでは大量の浸水を食い止め下水を処理することができず、水が溢れ出してしまったのです。住みたい街の上位に君臨し続けた武蔵小杉にあるこのタワマンは、なんと2週間近く停電と断水が継続しました。1階の非常トイレを利用するために、30階以上もの階段を降りなければならなかったというエピソードもあります。

地下にあった駐車場は最大400台ほどの収容台数を誇り、200台ほどが駐車されていたようでしたが、台風被害から半年ほど経過しても一台も停められない状況でした。管理会社が用意した仮の駐車場は武蔵小杉駅から3駅の、徒歩40分以上もかかる場所だというから驚きです。また、リクルート住まいカンパニーが毎年発表している「住みたい街(駅)ランキング2020(関東版)」では、上位常連だった武蔵小杉が前年の9位から20位に急落しました。2016年には4位の人気だった武蔵小杉でしたが、やはり台風による浸水被害が要因になっていると考えるのが自然でしょう。

台風以前にも綻びを見せていたタワマン事情

台風による被害は凄まじいものでしたが、台風以前から武蔵小杉のタワマン人気に陰りを見せる前兆がありました。それは武蔵小杉に住む前に期待していた理想とは、現実が異なるという住民の声です。

交通の便がいいはずなのに駅は混雑
そもそも数ある人気都市の中で、武蔵小杉を選択した理由とはどのようなものがあるのでしょうか。

武蔵小杉エリアで活動するグループ「小杉・丸子まちづくりの会」が住民に対して行ったアンケート調査によると、「武蔵小杉を住居に選んだ理由」が、「交通の便がよい」、「駅から近い」、「通勤に便利」という交通・駅の利便性に期待してのものでした。確かにタワマンは駅の近くに開発・建設されており、都心の新宿まで約20分、横浜までは約12分と南北の大都市に大変アクセスがいい場所です。

六本木や日比谷にも約30分で移動ができるので、交通の利便性が抜群にいいことがわかります。ただ、2017年11月にはメディアでも報道されていましたが、JR横須賀線の武蔵小杉駅を利用しようとする乗客が長蛇の列をなし、なんと30分待ちという状況がありました。最近はダイヤの改正などもありそこまで混雑することはないようですが、急激な都市としての成長と住民の増加に街の対応が追いついていなかったといえるでしょう。

ファミリー層のイメージがある武蔵小杉は子育てに良くない?

武蔵小杉はファミリー層に人気のエリアではありますが、あまり子育てに適した場所だとは言いづらい部分があります。確かに武蔵こすぎには「イトーヨカドー」や「東急ストア」、「マルエツ」のほか、「成城石井」や大手ドラッグチェーンもあり、買い物環境は大変充実しています。飲食店も商業施設内だけでなく、ファストフードやファミレス、定食屋など、ファミリーだけでなく、単身者でも喜ぶような環境でもあり、住み良い街と言えるでしょう。

ただ、子育てに目を向けると、保育園が不足しており、公園などの緑地が駅近くにほとんど見かけられないのです。待機児童解消には市として取り組んでいるようで、認可保育所が新設はされているが、園内に庭がない保育園が多いのです。ショッピングモールの屋上などしか自由に遊ばせられる場所がなく、子供の遊び場がかなり少ないのが現状の問題でしょう。

武蔵小杉、今後のタワマン事情と資産価値はどうなるか

台風による浸水事故や住みたい街ランキング上位からの陥落、駅の混雑など、あまり喜ばしいニュースがない武蔵小杉ですが、成長が急激すぎて追いついていないだけで本来は魅力的な街であることに変わりありません。武蔵小杉のタワマンは、実際のところ投資目的で外国人投資家が購入した物件や、すでに売りに出された物件も出ており、空室が目立つといいます。

街の住民からは「超高層マンションはもういらない」旨の意見もあり、武蔵小杉のタワマンは正念場を迎えていると言えるでしょう。修繕費がきちんと集まっていなければ、大規模修繕すら遂行できないことも考えられ、今後タワマンが廃墟と化す可能性を否定できません。逆に武蔵小杉のタワマン住民は、コロナ不況による収入減少によりローン返済が苦しくなることも考えられます。

任意売却をはじめとして、夢や希望を抱いて購入したタワーマンションを売りに出す未来もそう遠くないかもしれません。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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