不動産投資の最新動向
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2020年8月31日(月)
2つの失敗事例に学ぶ不動産投資の落とし穴
不動産投資は投資ですから、失敗のリスクはつきもの。本記事では不動産投資塾の取材に基づき、不動産投資の失敗例を紹介します。
失敗のパターンを知り、成功のための礎としましょう
入居者需要を頼っていた施設が移転
Aさんが購入したのは、とある郊外の、超大手メーカーの工場近くにある築古の一棟アパートです。
Aさんの物件は、工場を保有するメーカーから社宅としてまとめて借りてもらうことができました。
不動産会社にサブリースをしてもらうのよりもはるかにいい利回りで、入居者の退去による入れ替わりを気にせずに賃貸経営することができたのです。
こんないい物件を買えることは滅多にないと不動産会社の担当者に言われ、Aさんはニンマリでした。
利回りは約8%。空室を気にする必要もなく、Aさんは順調に物件を経営していました。
しかし、購入してから5年後に衝撃的な出来事が起こります。
社宅として物件を契約してくれていたメーカーが外資系企業に買収され、Aさんの物件の近くにある工場を閉鎖することに決めたのです。
当然、メーカーからの社宅契約は解除されました。入居者は全員退去し、いきなり利回り0%になりました。
Aさんの物件はもともと工場以外に何もないような地域にあり、築年数も経っていて駅から遠いです。
いきなり全室空室となったAさんの物件は、さりとて工場関係者以外に入居者を見つけられず、一気に赤字物件に転落してしまったのです。結局、ほぼ利回りゼロの状態が1年も続いてしまいました。
たまらず物件を売却したAさんですが、売却価格は購入時の3分の1ほどしかつかなかったといいます。
Aさんの事例にみるべきポイント
大学や大手企業関連の施設周辺は安定した入居者需要のある立地ですが、その施設がもしなくなった際に入居づけができる物件なのかどうかは注意が必要です。
どんなに大手の企業でも倒産したり買収されたりするのが当たり前の昨今ですし、大学の移転も増えています。
必ず安泰というものはないことを認識し、物件を選びましょう。
競売物件に手を出した結果……
「競売物件は掘り出しものだ」という噂話を投資家仲間から聞いたBさん。
がぜん興味を持ち、本を読んだりして勉強したうえで競売に挑戦しました。
Bさんが目をつけたのは、立地のいいファミリータイプのマンションです。
裁判所が公開する写真などの資料を見ても、問題がありそうな点は見つからず、少し汚いぐらいでクリーニングすれば問題ないように思えました。
Bさんの入札価格は、3000万円。結果、物件を落札することができました。
同じ地域の似たような物件を普通に買えば3500万円はかかりますから、大幅に安く物件を購入できたことになります。
しかし、購入した物件を実際に見たBさんは愕然とします。
ただ汚れているだけに見えた床や壁紙は、現地で見てみると奥の方まで腐っており、壁紙や床板の張り替えだけでは済みそうもありません。
トイレや風呂などの水回りも、サビやひび割れでほぼすべてが使い物にならない状況でした。ローンの滞納をしていた人が住んでいた物件ですから、生活の困窮ぶりが部屋に表れているようです。
残置物の処理やリフォーム、設備の更新などの見積もりをとってみて、Bさんは再び驚きます。なんと1000万円近いのです。
Bさんは悩みましたが、リフォームに1000万円かけてしまっては賃貸に出しても利益が出ません。
考えた末、損切りとしてそのまま売ることにし、2700万円で売却できましたが、所得時の税金などを加味すると赤字となってしまいました。
Bさんの事例にみるべきポイント
安いものには、安いだけの理由があります。
競売物件は、その最たるものです。ローンを滞納した人の物件を裁判所が差し押さえて売却するという行きがかり上、どうしても曰く付きの物件が多くなります。
本記事の例は物件自体に問題があったケースですが、前の所有者の近隣問題やトラブルの影響を受け続ける場合もあります。自殺者が出た物件などと同様に、心理的な瑕疵があり、賃貸に出しても入居者がいつかなくなることが多いです。
競売物件は、プロでも頻繁に失敗するような上級者向けの物件なのです。
高利回り物件には要注意
本記事では2つの失敗事例を取り上げました。
2つの例に共通するのは、「掘り出しものを見つけた」と、よく吟味せずに飛びついて購入してしまっていることです。
いい物件は利回りが低くなり、リスクや欠点を受け入れることで利回りが高くなる、というのが不動産投資の基本です。欲をかいたら、失敗するリスクは上がります。
おいしい話はないものだ、ということをきっちりと認識し、物件や物件周辺の環境などもよく調べたうえで物件を購入するようにしましょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。