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築50年超えの物件が復活?リファイニング建築とは

目次

「リファイニング建築」をご存じでしょうか?リファイニング建築とは建築家の青木茂氏によって提唱された老朽化マンション再生の手法で、青木茂建築工房と三井不動産やミサワホームなどの大手不動産会社の提携によって実績を増やしつつあります。話題のリファイニング建築について、不動産投資塾の独自の調べをもとにまとめました。

リファイニング建築とは

リファイニング建築はリフォームやリノベーションとは異なり、既存の躯体のおよそ80%を利用しながら、建築基準法的にも現行に一致させつつ、大規模な建物の一新を行う再生手法です。

三井不動産のウェブサイトによると、以下が「リファイニング建築の5原則」となっています。

1. 内外観ともに新築と同等以上の仕上がり
2. 新築の60〜70%の予算
3. 用途変更が可能
4. 耐震補強により、現行法規および耐震改修促進法に適合する
5. 廃材をほとんど出さず、環境にやさしい

建て替えよりも低予算でありながら、現行法規に適合させることでローンが降りる可能性が高まるのは大きなメリットといえるでしょう。建て替えと比べて事業期間が短くなるのもオーナーとしては嬉しいところです。

また、外観をはじめとする意匠は全面的に刷新されます。以下、三井不動産のウェブサイトにある事例を見ると、デザインのスタイリッシュさには驚かれるのではないでしょうか。

https://www.mitsuifudosan.co.jp/lets/refining/05.html

リフォーム、リノベーションの落とし穴

老朽化した物件を抱えるオーナーの多くが検討する選択肢が、物件をリフォームやリノベーションによって再生させることです。建て替えをするほどの予算をかけられない・かけたくないが、低コストで再び利回りを高められるならば……という期待を持つのです。

しかし、実はリフォームやリノベーションは、結局実現に至らなかったり、実行した後に後悔したりするケースが多くあります。

通常のリフォームやリノベーションの場合、老朽化しすぎた物件だと建て替えに近いほど予算がかかったり、現行法規に適合しない場合はローンが組めない場合があったりするのが落とし穴なのです。安く物件を再生しようというつもりがお金の問題で断念する、というオーナーは少なくありません。

また、せっかくリノベーションしても結局いかにも「修繕した」印象が物件から出てしまい、思ったほど入居者が集まらないことも多いようです。

リファイニング建築のリスクとデメリットは?

メディアによる報道だけを見ると、リファイニング建築は老朽化物件のオーナーにとって言うことなしの再生手法のようです。

しかし、本当に欠点はないのでしょうか?不動産投資塾の取材をもとに、考えられるリスクやデメリットをまとめてみました。

まず、現状のリファイニング建築の事例とされている物件を見ると、比較的大きなテナントビルや、居住用でも1棟30戸は下らない大規模物件であることが推定できます。

そうすると、小規模なビルやマンションには適合しない手法である可能性があります。

また、事業費が新築の60〜70%という触れ込みも気になるところです。建て替えたら10億円の物件がリファイニングしたら7億円、というケースはあっても、建て替えたら1億円の物件が同じく7000万円でリファイニングできるとは限りません。
大規模物件のほうがディスカウントのメリットは大きくなるはずですから、小さい物件ではむしろ建て替えたほうが安価、ということがないとも限りません。事例は全て建築工房によるデザイナーズ物件ですから、設計費は相当高くなるはずです。

また、立地の公開されている事例が東京都心部ばかりなのも気になります。穿った見方をすれば、相当に立地のいい物件でない限りは事業費をカバーするほどの利回り向上が保証できないのかもしれません。

あるメディアの見立てでは「新築の9割程度の賃料で貸せる」と述べられていましたが、いくら新築同等の建物でも、築古であれば借り手にとっての候補自体から外れてしまう可能性も高くなるでしょう。

いくらリファイニングしたからといって、ほとんど新築同等の賃料で入居がつくのだろうか、と首を傾げてしまいます。

オーナーは飛び付かず、慎重な判断を

以上、リファニング建築についてメリットと、考えられるリスクやデメリットをまとめました。

築古の物件を持っているオーナーとすれば、割安な費用で物件を復活させられるのならばぜひ取り組みたい、というのが正直なところでしょう。

しかし、目新しい手法に拙速に飛びついてしまうと思わぬ後悔をする危険があります。リファイニング建築についてはまだ事例が少なく、今後失敗事例が出てくるかもしれません。

本当に長期的な費用対効果が見込めるのかどうかは、オーナー自身が情報を集めて判断する必要があるのです。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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