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2020年3月28日(土)
ギリギリの対策で大幅な追徴課税! タワーマンション節税の闇
不動産の活用によって相続税を減らす手法として「タワーマンションを購入する」という手法がいっとき大流行。なぜタワーマンションを購入すると相続税対策になるのか、どのようなリスクがあるのか……不動産投資塾編集部は「タワーマンション節税」の全貌を調査しました。
時価と相続税評価額の大きな乖離が節税効果を生む
タワーマンションが相続税対策になるのには、以下のようなカラクリがあります。
土地の持ち分が非常に少ない
不動産の相続税評価においては、土地の評価額と建物の評価額を合算したものが相続税評価額になります。そしてマンションの場合は、土地の持ち分は全体戸数に応じて按分されることになるため、戸建てに比べて土地持ち分が少なくなるのです。
タワーマンションは、例えば勝どきの「THE TOKYO TOWERS」だと総戸数が2799戸、品川の「ワールドシティタワーズ」で2090戸もあります。立地がよくて大きなマンションでも、これだけ総戸数があれば一区分あたりの土地の評価額はかなり安くなるのです。
価格に乗るプレミアムが相続税評価額にあまり影響しない
タワーマンションの実勢価格(実際に売り買いされる価格)には、眺望などの付加価値がかなりの額、乗っています。これは高層階になるほど顕著です。
ところが、このプレミアムは相続税の評価額算出にはそれほど影響しません。税制改正により2018年以降に建てられた物件については高層階と低層階で評価方法が変わるようになりましたが、それでも実勢価格と相続税評価額との乖離が極端に埋まったわけではないようです。
上記の要因だけでなく、「小規模宅地の特例」を活用したり、購入後に賃貸に出したりといった手法でさらに評価額を圧縮できることも。現金であれば数億円の評価額に対する相続税を課せられていたのが、タワーマンションを買って数千万円程度の評価額で済むケースが実際に多く発生しているのです。
税務署からタワマン節税が否認されたケース
しかし、タワーマンション節税が脚光を浴びたことで極端な節税が横行し、ついには税務署に否認される判例が出てしまいました。
このケースは、被相続人が亡くなる1ヶ月前に約3億円のタワーマンションを購入し、約5,800万円を相続税評価額として申告しました。80%以上も相続税評価額を圧縮したわけです。
そして被相続人が亡くなった翌年、相続人がそのタワーマンションを購入時の価格に近い金額で売却しました。
このスキームが税務署に問題視され、国税不服審判所の審理で「租税回避行為である」であるとして納税者が負け、購入価格である約3億を相続税評価額として納税するよう命じられたのです。
否認に至った事由は、以下のとおりです。
・不動産の評価は原則として財産評価基本通達にしたがって評価すべきであるが、特別の事情がある場合は、他の合理的な評価方法によることが許される。
・マンションの取得時期(平成19年8月)と被相続人の死亡日(平成19年9月)が近接している
・マンションの取得価額が2億9,300万円で、売却の依頼時の価額が3億1,500万円である
・マンション近傍の基準値の価格は、相続開始後の前後においてほぼ横ばいである
タワーマンションの購入から被相続人の死亡まで1ヶ月とあまりにも早く、売却の時期も購入してから1年しか経っていない。被相続人がこの物件を訪問した形跡はなく、購入時には危篤に近い状態であった。
被相続人が亡くなりそうになってから、節税目的で家族が慌てて物件を購入したのが見え見え、というわけです。
この一件により、タワーマンション節税を顧客に勧めていた不動産会社や税理士の間に激震が走りました。国税からの否認を受けたことはないスキームであったのに、とうとう否認の判例が出てしまったのです。
あからさまな節税は逆効果
この一件と、税制改正で高層階の評価額が高めになって以降、タワマン節税を露骨に勧める業者は少なくなりました。
ただし、タワーマンションの相続税評価額が現金より大幅に安くなるスキーム自体は、国が定めた計算方法に則っているだけのことで何の問題もありません。国税が問題視するのは相続税評価額が安くなることではなく、「節税目的にしか見えない」という感覚的な部分なのです。
タワーマンション節税を検討する場合は、否認されたケースをしっかり学び、押さえるべきポイントをしっかり押さえた活用を徹底すべきでしょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。