北村英寿税理士が教える大増税時代の資産防衛法
1,327 view
2019年5月20日(月)
相続税対策に適した賃貸不動産の選定ポイント
近時、不動産業界では、株式会社スマートデイズのシェアハウス「かぼちゃの馬車事件」や、それに関連するスルガ銀行のずさん融資事件、レオパレス21の施工不良事件など、不祥事が相次いでいます。
ここへ来て、大和ハウスが建設した2千棟以上の建物が建築基準を満たしていないという報道もなされました。
相続税対策として、不動産の取得が効果的であると認識しているものの、これだけ不祥事が続きますと何を取得すればよいのか判断に迷ってしまうという方も多いでしょう。
そこで改めて、相続税対策に適した賃貸不動産の選定ポイントをご説明します。
利回りに固執し過ぎない
言うまでもありませんが、理想の賃貸不動産は取得価額が安く、常に満室で、家賃は高額で下落せず、修繕費がかからない物件です。
しかし、このような物件を取得するのは極めて困難ですから、少しでもそれに近い物件を選定することになります。
あくまで相続税対策が主目的ですので、利回りに固執し過ぎないことが重要です。
利回りが高いというのは、「取得価額が安く、家賃が高額ということ」を意味しますが、相続税対策で賃貸不動産を取得する場合、そもそも相続税の負担が軽減されることが大事であって、高い利回りが絶対に必要なわけではありません。
重要なのは、安定的に家賃を収受して借入金を返済することですので、利回りよりも安定性を重視します。
相続税の負担が軽減された金額を加味して考えれば、充分に高利回りであるとの考え方も成り立ちます。
相続対策であるならば、賃貸事業の安定性を重視するという考えの方が多いことでしょう。そうであるなら、オフィスや店舗などの事務所用よりも、居住用を選定すべきです。
事務所用は景気に左右されやすく、一度空室になると、半年以上も次のテナントが決まらないということが珍しくありません。
一方、居住用の場合は、人は必ずどこかに居住しなければならないため、適正な立地にある物件で適正な賃料設定をしていれば、半年以上も空室になるということはまれです。
構造は木造よりもRC造がおすすめ
次に構造ですが、ここでも賃貸事業の安定性を重視するという視点から、RC造を選択したいところです。
RC造は他構造に比し、防音、防火及び耐震性に優れます。一般的には木造アパートよりも、RC造のマンションの方が人気で、安定的に入居者が決まることが多いです。
木造は他構造よりも安価で、取得しやすい反面、劣化が早く、建築から10年も経過しますと、外見上もボロボロということが珍しくありません。
RC造の場合は10年程度であれば、新築時からそれほど劣化しませんので修繕費も抑えられます。
RC造の欠点としてはコストがかかること(=取得価額が高い)といえますが、何事も良いものは高額であり、高額ということは利回りが低いということになります。
相続税対策による賃貸不動産の取得は、高利回りを追い求めるよりも賃貸事業の安定性を重視すべきものですので、前述した通り、取得価額が高いということをそれほど気にする必要がないということです。
また、最近はRC造の1棟マンションを小口化して販売している業者もあり、こういった業者が取扱っている物件であれば、数百万円からの購入も可能です。
億単位までの相続税対策が必要でない人であっても、都内中心部に立地するRC造の物件を取得することによる相続税対策が可能です。
自分に置き換えて考えてみる
相続税対策で取得する賃貸不動産ですから、もちろん自分が居住するわけではありません。
しかし、自分が住んでみたいと思える場所と物件を選定すれば、必然的に理想の賃貸不動産に近くなるのではないでしょうか。
自分が居住する場合、多くの方は木造アパートよりもRC造マンションを、駅から遠い物件よりも駅から近い物件を選択することと思います。それは賃貸不動産を取得する場合においても、同じと考えて良いでしょう。
また、コインランドリーやシェアハウスなどのような特殊な業態は、予測不可能なことも多いと推測されます。
そのため、すでに賃貸事業を手掛けていて、経験値がある人以外は避けた方が無難であると思われます。
相続税対策では利回りよりも、安定的な家賃収入を重視
取得価額が安く、常に満室で、家賃は高額で下落せず、修繕費がかからない物件……そんな賃貸不動産があればすばらしいですが、現実的にはそのような物件と出会うことは難しいものです。
少しでも理想に近い物件を選定することになりますが、相続税対策が目的の場合は、利回りに固執し過ぎないことが最も重要なポイントです。
相続税対策では、相続税の負担が軽減されることが大切で、利回りよりも安定的に家賃を収受し、借入金を返済することが目的となるためです。
建物の構造でいえば、木造よりも安定的に入居者が決まりやすい、RC構造の物件がおすすめです。
特殊な業態は経験がなければ避け、自分が住んでみたいと思う物件のイメージと重ね合わせながら選ぶのが良いでしょう。
投資用不動産業界に関する情報が毎週届く!
不動産投資塾新聞社メールマガジン登録はこちら
著者紹介
北村 英寿北村 英寿
1971年千葉県千葉市生まれ、1994年早稲田大学社会科学部卒業、同年東京都港区内の資産税専門会計事務所に勤務、1999年税理士登録、2005年筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻修了(法学修士)、2007年北村税理士事務所開設。
賃貸不動産を活用した相続税対策が業務の中心で、物件選定から金融機関との融資交渉、購入後のAM・PM業務、最終的な売却交渉まで、物件の取得~所有~売却までを、有能な専門家陣とチームを組んでトータルでサポートします。
自らも1棟マンション、区分所有マンションを複数所有し、出口戦略を重視した不動産投資を実践することで、賃貸不動産オーナーとしての経験を各種コンサルタント業務に役立てています。北村税理士事務所HPはこちら