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竹村鮎子弁護士の学んで防ぐ!不動産投資の法律相談所

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契約成立から引き渡しまでにトラブルが起こったら契約はどうなる!?

目次

不測の事態は、ある日突然起こります。
自然災害や、お金のトラブル、事故など、何が起こるかわからないのが人生というものです。

スーパーで食料品の買い物をしたり、デパートで洋服を買ったりする一般の売買では、契約成立と代金の支払いから物の引き渡しまでの間にタイムラグはありません。
しかし、不動産売買の場合には、契約成立から引き渡しまでの間に時間差があることが多くあります。
その間にトラブルがあった場合、契約はどうなるのでしょうか?

今回は、契約成立から引き渡しまでの間に想定されることを5つ、トラブル別に対応をご説明します。

※本文では民法の規定ではなく、一般的な契約書の規定を参考に事例を解説している箇所があります。その場合、実際の取引で使用された契約書には上記規定がない、または異なる定めがされている場合もあります。その点には十分ご注意ください。

売主または買主が死亡してしまった場合

原則、売買契約から引き渡しまでの間に、売主または買主が亡くなったとしても売買契約の効力は変わりません。
売主の相続人は売主として不動産を買主に引き渡す義務があり、また、買主の相続人は不動産の引き渡しを受けるのと引き換えに、売買代金を支払う必要があります。

例えば、被相続人が自分の持ち家の売買契約を行い、引き渡し前に死亡した場合、相続人である配偶者や子は、被相続人の持ち家に自分が住みたいと思っていたとしても、その思いとは無関係に被相続人の持ち家を買主に引き渡さなくてはなりません。

上記の例で、相続人が建物を引き渡したくないという場合には、買主に売買契約の解約を申し入れなくてはなりません。
その際には、手付金の倍返しなどのペナルティを負うのが一般的です。

売主または買主の相続人がすぐに分かれば良いですが、家族関係が分からない場合には、相続人は誰なのかを戸籍などから調査をする必要があります。
関係者が多い場合など、調査には長い時間がかかる場合もあります。

売主または買主が破産した場合

不動産売買の場合、売主・買主に不動産の引き渡し、および買主から売主に売買代金の支払いも済んでいない状態で、どちらかが破産してしまった場合はどうなるのでしょう。

売主・買主が共に売買契約で自分が行うべき義務(売主であれば目的物の引き渡し、買主であれば売買代金の支払い)をお互いになしていない状態を、破産法上、「双方未履行双務契約(破産法53条1項)」といいます。
この場合、破産手続において選任された破産管財人によって、「履行」か「解除」が選択されます。

なお、「履行」か「解除」を選択できるのはあくまで破産管財人であり、売買契約の当事者には選択権はありません。

破産管財人によって「履行」が選択された場合、売買契約の効力はそのまま維持されます。
そのため売主・買主共に契約で決められたとおり、不動産を引き渡し、その代金を支払う義務を負います。

「解除」が選択された場合、不動産売買契約は解除されます。
そこで売主が破産し、買主がすでに手付金を支払っている場合、支払い済みの手付金がどうなるのかが問題となります。

この点、支払い済みの手付金は財団債権(破産法54条2項)として、通常の債権(貸金など)よりも、売主の財産から優先的に支払いがなされることになります。
それでも、売主の財産の状況によっては満額が支払われるとは限らないので注意しましょう。

とはいえ通常は売主が破産した場合には、手持ちの不動産を現金化する必要があるために「履行」、買主が破産した場合にもはや購入代金を用意できないので「解除」が選択されることが一般的です。

建物が滅失してしまった場合

不動産売買契約から建物引き渡しまでの間に、建物がなくなってしまった! そんなことも起こらないとは限りません。
災害などで建物が滅失してしまった場合についても、民法ではしっかり定められています。

民法には、危険負担という規定(民法534条)があります。
これは売買契約の目的物である建物について、自然災害など売主・買主いずれも落ち度がなく滅失してしまい、引き渡しができなくなった場合に、買主は売買代金を支払わなくてはならないのか、という問題について規定した条文です。

これについて、現在の民法の規定では、不動産などの売買では引き渡しを受けていなくても、買主が売買代金を支払わなくてはならないとされていました。
この条文については批判も多く、2020年4月1日から施行予定の改正民法では、この規定は削除され、買主は代金を支払わなくても良いとされる見通しとなっています。

また、実際の不動産売買の契約書では、

①引き渡し前に建物が滅失した場合に買主は契約を解除できる。
②建物が毀損した場合、破損個所は売主が修復する。
③売主が建物の修復している間、引き渡しができなくても買主はそれについて異議を述べない。
④修復が難しい場合などには、契約を解除することができる。

などと定められていることが一般的です。

買主がローンの審査に通らなかった場合

無事に売買契約も締結し、あとは支払いを済ませて引き渡しを待つのみ。そう思っていたにも関わらず、「ローン審査に落ちてしまった! 」ということもありえます。

買主が申し込みをしていた住宅ローンの審査に通らなかった場合は、どうなるのでしょうか?

一般的な不動産売買契約では、住宅ローンなど購入代金について金融機関から融資を受ける場合について規定がされています。
この規定は、一般的に「融資利用の場合」といいます。

この規定によれば、契約書で規定されている日までに銀行の住宅ローン審査について承認が得られなかった場合には、自動的に契約が解除され、支払い済みの手付金も返金されるとされています。

ただし、買主が自分で手続きを行う買主の自主ローンの場合には、買主は確かにローンの申し込みをしたという証明を売主に提出しなくてはならないことが一般的です。
この場合、買主が売主に対して必要な報告を怠ると、ローンの審査に通らなくても契約を解除することができなくなります。

他の物件が欲しくほしくなった、または他の人に売りたくなった場合

売買契約を締結したものの、その直後にもっと良い物件が見つかった場合、またはもっと良い条件の買主が見つかった場合は契約を解除できるのでしょうか?

相手方に特段の落ち度がないにもかかわらず、「もっと良い物件があった」という理由だけで契約を中止することは、相手方に不測の損害を与えるため原則としてできません。

しかし、一般的に不動産売買では契約締結時に手付金が授受され、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄して、売主は手付金を倍返しすることで契約を解約することができます(民法557条)。

すなわち、買主の場合は、契約締結時に支払った手付金を返してもらわないとすることで、売主の場合は、受領済みの手付金を倍返しすることで、契約を解約することができるのです。

手付金の金額は不動産売買代金の5%から20%程度であることが一般的であり、決して少ない金額ではありません。
そのため不動産売買の際には、物件の選定について慎重に判断をする必要があります。

また、民法557条に基づいて契約を解約できるのは、「相手方が履行に着手するまで」とされています。「履行に着手」というのは、契約において自らがなすべきことを行う準備をしたときのこと。
具体的には、売主であれば所有権移転登記の準備をしたとき、買主であれば残代金を用意したときなどがそれに当たると考えらえていますが、あいまいで分かりにくい言葉であるためトラブルになることもあります。

このため、多くの契約書では具体的に「○○をした時まで」や、「○月○日まで」などと、手付による解除ができる日を具体的に定められています。

もしもの時に備え、トラブル後の契約について知っておこう

契約成立から引き渡しまでの間に、時間差が存在する不動産売買。
不測の事態はできるだけ避けたいものの、思わぬところでトラブルや想定外の出来事に巻き込まれてしまうこともあるかもしれません。

そうなった時に慌てずに済むよう、想定される5つのトラブルとその対応についてご紹介しました。

不動産売買は大きな金額が動くため、契約は慎重に進めたいもの。
もしもの時に備えて、契約後のトラブルについて把握しておくことも大切です。

著者紹介

竹村 鮎子
竹村 鮎子

弁護士。東京弁護士会所属。
2009年に弁護士登録、あだん法律事務所に入所。田島・寺西法律事務所を経て,2019年1月より、練馬・市民と子ども法律事務所に合流。主に扱っている分野は不動産関係全般(不動産売買、賃貸借契約締結、土地境界確定、地代[賃料]増減額請求、不動産明渡、マンション法等)の法務が中心だが、他にも企業法務全般、労働法関連、一般民事事件、家事事件、刑事事件など、幅広い分野を取り扱っている。実地で培った法務知識を、「賃貸経営博士~専門家コラムニスト~」としてコラムを公開しており、人気コンテンツとなっている。
http://www.fudousan-bengoshi.jp/

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