石川貴康の超合理的不動産投資術
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2020年1月29日(水)
大家を悩ます「家賃滞納」…長期化させないためのフローチャート
物件が手に入ったら、確実に家賃を収受する方法を構築します。
私は管理会社経由で家賃を収受しています。以前、実家では自主管理をしていて、滞納や夜逃げがあり大変でした。直接入居者に対峙するのは心労も大きく、結局、実家が所有する物件も管理会社に任せました。
簡単なようで難しいのが「家賃」の確実な収受なのです。今回は、悪質な「家賃滞納者」に対してどのように対峙していくのか、実体験をもとに解説します。
滞納は短期間でかならず「督促」を行うべし
今では保証会社を通して管理会社に契約をしてもらうので、滞納の弁済も受けられます。保証会社は、入居者の信用情報をチェックし、滞納時の保証、長期滞納時の退去対応をしてくれる会社ですので、不動産投資の強力な味方といえます。
それでもルーズな入居者はいます。家賃が遅れた時は、必ず、即、督促を行うべきです。ルーズな入居者は、放っておくとどんどん図に乗ります。
私は管理会社に家賃収受や督促を委託していますが、管理会社に対しては、滞納が発生したら即督促、早期回収を依頼しています。保証会社の弁済があっても、早期回収を依頼しておくのです。よく、1ヵ月遅れがそのままになってしまい、退去時まで1ヵ月遅れ(支払いがズレたまま)が続いてしまうケースがあるからです。こうした時は、退去時の精算になり、とりっぱぐれることが起きえるのです。
賃貸借契約は厳然とした契約なのです。家賃の滞納は契約違反ですから、厳格に督促をするべきなのです。
「長期滞納」になると入居者は高額の家賃を払えなくなる…
すぐ督促するのは、イライラしすぎと思うかもしれません。しかし、いったん滞納がはじまり、それが継続してしまうと、金額がどんどん膨らみます。ただでさえ、毎月の家賃支払いが滞る入居者です。滞納額が高額になると支払いが困難になり、そのまま退去となりかねません。
私の物件では、生活保護の方も積極的に受け入れています。住居を提供するというサービス業としては、きちんと支払いをしてくれる入居者はお客さまですから。しかも、役所経由で家賃収受ができるので、実は堅いのです。
とはいえ、たまたま区役所との契約で、「区役所の直接支払いは家賃のみ、共益費は本人支払い」となった時がありました。この時は、入居者が共益費の滞納をはじめ、毎回督促が大変でした。滞納分も常に支払いが滞り、どんどんたまっていったのです。共益費ですから、額は大きくありませんが、まとまるとそれなりです。生活保護の方ですから、余裕のある返済は困難になりました。
結局、区役所と協議し、共益費も区役所が直接支払うことに変え、滞納分も上乗せしてもらいました。
長期滞納は支払い不能になる確率が高いのです。とにかく、早期に督促し、滞納を継続させないようにしないという心がまえが重要です。そうしないと、結局痛い目に遭うのは大家だけ、ということになりかねません。
「保証人」はまず役に立たないと考えるべし
保証会社を使う前は保証人を立て、入居をしてもらっていました。保証人がいるから、滞納家賃等は回収できると思うと、これがまたそうでもないのです。
実家の物件では、入居者の夜逃げがありました。私の物件では悪意のある入居者があり、最初から家賃振り込みがないうえに、そこからさらに1年以上の家賃滞納に遭いました。当時は保証会社の仕組みもなく、保証人をたてて契約していたのですが、まったく役に立ちませんでした。
滞納の連絡を保証人にしても、「お金がない、払えない」の一点張り。揚げ句、「私は名前を貸しただけ」と開き直りました。その悪意のある入居では、裁判までして強制執行をしましたが、結局、入居者本人も保証人も資産がないとのことで一銭も回収できない始末。
民事裁判による仲裁や行政執行などの法的措置も結局は、「資産がない」となるとなにも回収できないのが現状です。価値のないTVや古い自動車など差し押さえてもかえってコストになります。
ということで、2度も保証人が無意味だったという経験から、私はもう保証人制度は信用していません。保証会社を通じての入居しか認めないことにしました。
高額の滞納になるまえに「少額訴訟」という手段を検討する
滞納が続いて、管理会社に訪問してもらっても、入居者が居留守を使うことがあります。手紙を置いていき、督促の意思を伝えます。しかし、何度も居留守をされ、無視されるのであれば、家賃督促を公的にするために内容証明郵便を送ります。
内容証明郵便は受け取ったかどうかがはっきりしますので、しっかりと意思を伝えたという公的な証拠になるのです。
しかし、その内容証明郵便さえ受取拒否をされる場合があります。その際は、高額な滞納になる前に「少額訴訟」に訴えるという手段があります。
私もこれを使いました。訴訟ですから、当然出頭も要請されます。拒否されたら、本訴訟に進むことになるでしょう。
私の場合は、被告である滞納者が出廷したので裁判となりました。すぐ和解勧告があり、裁判所の職員立ち合いで和解をしました。3回に分けて滞納分を支払うとの和解です。
家賃滞納の事例…和解したあと、滞納者に無視された!?
しかし、私の場合は、この和解さえ無視されました。和解した合意も、ほとんど法的な強制力がないのですね。仕方ないので、退去の強制執行を目指し、本訴訟に進みました。弁護士を立て、訴訟を行いましたが、本訴訟では、滞納者(被告)は出廷拒否をしました。
和解の不履行もあって、当然私の勝訴で、強制執行となりました。弁護士費用がかかりましたし、強制執行での実行費用は大家持ちです。ひどい話でしたが、結局強制執行前日に連絡もなく、逃げるように退去していきました。
滞納者に「資産」がなければ差し押さえもできない…
結局、入居者にも、保証人にも資産がないとのことで差し押さえもできず、大家の私は泣き寝入りでした。1年以上の滞納家賃、リフォーム代、内容証明郵便代、訴訟費用、弁護士費用、遠隔地の裁判所、弁護士事務所に通った費用すべてが被害者である私の負担です。かかった費用は100万円超、回収できなかった家賃は180万円くらい、荷物の撤去・リフォームが100万円ほど、全部で400万円近くの損失でした。本当に痛かったです。
民事では、結局原告である大家が勝訴しても、まったくなんの救済もないのだと思い知らされました。しかし、滞納が長期化したら、こうした強制執行による退去になると思います。
結局、訴訟にならないように事前に対応しておくことが重要です。長期滞納にならないような、滞納が発生したら即、こまめな督促が必須です。また、確実な回収のためには保証会社を必ず通すということだと私は経験上思います。
入居者にもいろいろな事情があるでしょう。しかし、賃貸借契約は契約行為で、滞納は契約違反です。また、大家は公的な福祉事業を営んでいるわけではなく、営利事業として賃貸業を営んでいるのですから、滞納はとにかく避けるように対策を立てておかないといけません。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など