石川貴康の超合理的不動産投資術
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2020年1月24日(金)
夢と希望を抱いてはいけない!?「海外不動産投資」が簡単には儲からない理由
いまだに「海外不動産が儲かります」とかいった広告やセミナーが後を絶ちません。少なくとも、「儲かる」などという曖昧かつ煽情的な言葉を使うような投資はまともではありません。注意が必要です。
不動産投資は、同じ母国語で言葉が通じて、管理状態もコントロールできる日本国内でさえ難しいのに、初心者が海外でどれほどまともな投資(物件)に巡り合えるのか、想像できません。初心者での成功は、まさに奇跡以外に考えられません。
かくいう私も、まともな海外不動産投資に出会ったことがありません。日本基準でいう、まともな開発業者(デベロッパー)、まともな販売業者・仲介業者、まともな管理業者に出会ったことがないのです。物件はいまだに取得さえできておらず、まったく収益を生むような状況ではありません(何年たっても完成・取得できないので、資産にさえならない状況です)。逆にうまくいっている人がいるなら教えてほしいくらいです。
それでは、初心者は海外不動産投資に気を付けるべきだということを、今回書いていきます。
海外の不動産が確実に儲かるなら、なぜわざわざ日本人に紹介するのか?
まず、そもそも不動産をなぜ、海を越えて紹介するのかを考えましょう。
その土地のビジネスをよく知るのは、そこにいる現地の人たちです。その人たちに売らずに、海を越えて、その土地のことをよく知らない人に不動産を売ろうという発想自体、変だと思いませんか?
いいものなら現地の人が先に買いますよね。そうではなく、わざわざ海を越えて売りに来ること自体、私にはやはり違和感があります。市場も知らない、賃貸人の特性もわからない、管理レベルも、物件の仕上がりレベルも、現地の商習慣も知らない、契約形態やリスクもわからない人に高額の資産を売る、さらにそれを買うというのは、普通に考えても無謀な行為です。
要は、現地で売れないような物件(高額過ぎる、需要・収益が見込めない、など)を、事情を知らないカネ余りの国の人に売りつけようとのことではないでしょうか。中国人富裕層のように、信用ならない自国通貨や政府をよそに、自ら資産の逃避先を探しているわけでもない日本人に、わざわざ物件を持ってくるというのは、よくよく警戒した方がいいでしょう。
売ったもん勝ちのブローカービジネスが氾濫している
不動産は管理が成功の秘訣ですが、多くの海外不動産はデベロッパーが売り切って儲け、あとは知らないというビジネスです。売ったもん勝ちで、そこで資金と利益を回収して、「買った奴のことなど知ったことではない」なのです。
私が購入した物件もそうでした。いまだに完成していません。引き渡しも受けていません。その上、完成してもいないのに、最終金を支払えとの督促が来ます。
揚げ句の果てに、完成前に勝手な管理規約、管理会社を作り、オーナーの所有に制限をかけるルールまで勝手に作りました。一部のオーナーとの間では訴訟になっています。
また、一部の方はご存知のセブやマニラ、マレーシア、タイなどの新興国物件はさらに悲惨な状況です。高値掴み、おびただしい空室で、転売マーケットも未整備で苦しんでいるオーナーもいらっしゃいます。
結局私もまともな不動産投資ができず、取得さえできないため、撤退モードです。デベロッパーは資金回収、販売業者は手数料を稼げば、あとは知らん顔…。自分たちの利益のためには、購入者を蔑ろにすることも平気です。付き合っていられません。
何々国の成長物語から始まる話は眉唾もの!?
日本で仲介をする業者もひどいものです。ほとんどセールストークの域を出ません。そのほとんどは、「何々国が儲かる、何々国が成長している」などといったマクロ情報程度です。あとは、人口構成で若者が多い、外国からの投資も盛ん、などです。そうしたことが、個別の不動産投資の成功にどう関係するのかさっぱりわかりません。こんな薄弱な情報を頼りに投資なんてできないと思います。いつも相変わらずマクロ情報だけでは、怠慢以外の何物でもないです。
もし、成長していて、若者が多いなら、フィリピンなどは世界中から投資家が殺到するはずです。活況を呈しているマーケットの物件を、わざわざ遠い日本に紹介に来るというのも変な話です。気の利いた投資家がたくさんきているのに、手間をかけて初心者に紹介する意図は何でしょう。
また、物件を紹介している人たちの素性を調べると、到底信用できないことがあります。経歴も怪しい、なぜ日本から出たのか、なぜ海外で日本人相手に物件紹介をしているのか、本当の稼ぎは何で、現地で何をして食っているのか、どう考えてもまともな感じがしない、怪しい、という人がいます。
海外投資を扱う人の多くは眉唾だというくらいの見方でちょうどいいと思います。
華々しいセミナーで投資家を惑わす日本の仲介業者たち…
実際に多くのデベロッパー、仲介業者が日本でセミナーをしていますが、その内容や説明の仕方は、とても華々しいものです。美しい写真、3D動画、パース(建物の外観や室内の立体的な絵)を持ってきます。コンドミニアムの場合、部屋の一覧表があり、ここまで予約が入っています、売れていますといったアピールをします。
アメリカに物件を持ちましょう、ハワイに、オーストラリアに、イギリスに、ドイツに、ジョージアに、ウクライナに、ポルトガルに物件を持ちましょう…とか、何の意味があるのか、よく考えるべきです。
現地に行くと、ショールームがあり、華美なモデルルーム、家具付き部屋のイメージ、豪華な説明員がいたりします。あまりに豪華すぎて、引いてしまうくらいです。
ある国の首都で見たショールームは、それは豪華で、大理石の机、バスタブ、シャンデリアと、およそ庶民の家ではないようなしつらえでした。同行した人たちは、それは熱くなっていました。私は逆に、見せられれば見せられるほど冷めていきました。
しかし、豪華なイメージは人を惑わすようです。本当の利回りやリスクなどお構いなしに、同行者たちはその場で購入の申し込みしていました。
ほとんどの紹介物件は「現実離れした家賃設定」で高利回りを謳う
また、海外の物件は、実際よりも高い家賃設定で紹介されることがあります。私が知っているある物件は、最初に仲介業者が取れると宣伝していた家賃が、完成時には半分しか取れなかった例を知っています。
表面利回り10%は軽くいくような説明でしたが、ふたを開けてみると5%にも満たない表面利回り。しかも、賃貸するにあたっては、家具付きが当たり前、ネットのレンタル費用、リフォーム、机、家具付きあたりまえで、実質利回りは2、3%程度。
これでは、日本で不動産投資した方がはるかにマシです。しかも賃貸人の質がバラツキ、支払い遅延、短期契約ばかり、下手すると契約期間途中での解約なども多く、狙った投資収益はとても取れないケースがあります。
売りたい側は魅力的に見せたいでしょう。完成前に売るプレビルドでは、仲介業者は売ってしまえばどうでもいいのですから、現実離れした家賃設定は後をたちません。
こうした例に出会って、怪しいと思ったら周りの家賃を調べましょう。デベロッパーや仲介業者に聞いても正しい家賃はいいませんから、自分で調べなければなりません。面倒ですが、こうした基本的なことを怠っているようでは海外不動産投資をする資格はありません。
物件引き渡しも大変です。現地で、引き渡しの書類記入し、登記をするのも大変です。弁護士に頼む必要がある場合もあり、その弁護士さえ、いい加減だったりします。
投資家として「管理会社とコミュニケーションを取るスキル」が必要
取得後は物件の管理をしなければなりません。基本はどこかに委託することになります。投資家として管理会社と上手にやらなければなりません。しかし、通常海外物件の管理は、委託する先の組織も、日本ほど組織機能が整備されていません。投資家側で管理会社をリードするスキルがいります。
日本人が仲立ちすることもありますが、そうでないと外国語での対応になるケースもあります。コミュニケーションスキルと言語スキルが必要になり、かなり難易度が上がります。こうした手間も利回りを落とす結果になります。
海外不動産投資のインナーサークル情報(組織内で実権を握る一部の人々が知り得る情報)が手に入るとかいうこともセールストークに使われます。しかし、インナーサークル情報が、海外のその辺の人に出てくるでしょうか。あり得ません。
インナーサークル情報とかいっている人は誰でしょう。その不動産を売ることで手数料を稼いでいるブローカーです。そうしたセールストークに惑わされず、まともな判断をしましょう。
上級者かギャンブル好きでない限り海外不動産投資にはチャレンジしないのが吉
不動産投資は難しいものです。買うのは誰でもできますが、収益を上げ続けるのは難しいものです。まして、海外不動産の難易度の高さは計り知れません。やはり初心者がいきなり手を出すような投資案件ではないと思います。
私も痛い目に遭っています。もちろん、必ずしも全部がダメなわけでもないでしょう。中には大成功もあるでしょう。ただ、大当たりを狙うのは、ギャンブルに近いように思います。
よちよち歩きの不動産投資家には海外不動産投資は難易度が高すぎます。ただ、相当な富裕層にとっては、資産を分散する目的で、海外不動産を持つというのもありでしょう。
超富裕層なら、少しくらい価値が毀損しても、海外に資産を分散する方を選ぶこともありです。
一方、まだ資産規模が大きくない段階での海外不動産はリスクが高く、耐性がないうちは積極的に行わない方がいいと私は経験上思います。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など