石川貴康の超合理的不動産投資術
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2019年12月11日(水)
不動産投資に必要な「節制する力」とは?成功している大家が「家賃収入」に手をつけないワケ
副収入が欲しい、早くリタイアしたい、資産を残したい…。不動産投資を行う目的は人それぞれでしょう。
しかし、ある程度の規模になるまで、不動産投資は不安定な状態が続くことを覚悟してください。
不動産取得税、空室、大量退去や事故、急な修繕、所得税などのキャッシュアウトに備えるためにも、家賃収入はできるだけ使わずにとっておくべきです。
不動産投資で成功するためには、「節制」が必要なのです。私の所有物件は15棟165室を超えるくらいになりましたが、この規模になっても「無駄遣い」の類を一切していません。不動産の収入には手をつけず、ひたすら貯め、リスクに備え、かつ次の資産の購入にあてているのです。
私は、不動産投資を成功させる、というよりも失敗させないためのルールとして、「浪費せず節制し、キャッシュをコントロールする」ということを守っています。自分が目指す規模になるまで家賃収入を使わない。投資家の資質としてこのような「お金を取っておける力」が必要だと思っています。
今回は、成功している大家がおさえている8つのポイントを軸に、お金をキープし、コントロールすることの重要性について解説します。中心のテーマとなる「節制する力」は、不動産投資に限らず、あらゆる投資の成功に必要不可欠な要素であると思っています。
【その①貯金する力=節制する力】「貯金」は収支コントロールができる証である
私は、「貯金ができない人」に不動産投資を勧めません。収入の中から、わずかでも将来に向けてお金を貯めることができない。さらにはその収入をすべて使い切ってしまう人というのは、根っからの性格から来るものだと考えてるからです。
そうした人は、不動産投資で入ってきた家賃収入も使ってしまうでしょう。その結果、ローンの支払いなどに支障が出た、税金が払えない、修繕などの急な支出に対応できない、といったトラブルを招いてしまいます。
貯金をするには「節制する力」が必要なのです。収入に応じて生活レベルを上げず、贅沢をせず、質素に暮らす姿勢です。私はといえば、ほとんど外食はせず、車も持たず、質素な服装で過ごしています。海外旅行もせずに仕事中心の生活です。税金とローンの支払いが重くのしかかるので、支出をできるだけセーブしています。
そのような質素な生活の積み重ねのおかげで、毎年最低1棟買い増しすることができています。これからも家賃収入を生活費に使うことなく節制し、貯金を重ね、不動産投資の資金にしていくつもりです。
【その②キャッシュフローの計算】「収入と残金」の違いを知らないと資金難に陥る
不動産投資で重要なのは「キャッシュフロー」です。収入から各種経費や支払いを引いた後に残るお金がすべてです。不動産投資では、表面上利益が出ても、資金がショートするおそれがあるので、利回りよりも「手残り」が多いことに注目します。表面の家賃収入や利益よりも「キャッシュフロー計算」を重視する視点が、不動産投資における破たんを回避する上で重要です。
仮に100円の利益が出たとしても、ローンで150円の支払いがあると、資金ショートです。ここからさらに所得税や法人税、地方税の税金の支払いが発生します。税金は利益にかかるので、資金ショートしていようが、支払い義務が生じます。ローン支払いで-50円、さらに税金で40円徴収されたら、資金繰りでは-90円です。
黒字の利益より、キャッシュフローのプラスを生み出すことが大事なのです。売上・利益とキャッシュフロー(残金・手残り)の違いを理解していないと、大やけどを負います。投資をはじめる前には、会計、キャッシュフロー、税金の計算についての基礎知識程度は理解してないといけません。
【その③税金の知識】「税金」を制する者は不動産投資を制する
不動産投資のキャッシュフローに大きく影響を与えるのが「税金」です。前述したように、税金は利益に対して算出されます。したがって、家賃収入や経費の見込みなど、事前の利益推定がしやすい不動産投資では、税金対策もしやすくなっています。
所得を計算する際の損金(所得を減らす費用)、益金(所得を増やす収入)の知識も必要です。もし、税金が増えそうなら、それなりの対策も可能です。例えば、事務用品や車(事業用)の購入や、修繕をしたりする費用を「損金」として計上するというようなことです。
ただし、修繕費については、原状回復を超えての機能改善や耐用年数の延伸になると資本的な支出になり、費用化することができず、逆に資金繰りが悪化するので、注意が必要です。
減価償却費も「損金」にあたりますが、キャッシュアウトを伴わないため、資金繰り面では有効な費用です。ただ、減価償却費を生み出す不動産の取得の際は、修繕費の資本的な支出同様に、キャッシュアウトが発生します。耐用年数に応じた費用化・損金化となるので、購入当初の資金繰りは悪いですが、支出、税金を減らすことで、徐々に良くすることができるでしょう。
そのため物件を購入する際には、建物の構造による固定資産税、減価償却計上への影響も同時に考えるべきです。RC、SRC、木造、中古、新築など、税金をコントロールするためには、どの構造を選ぶのかということも重要になります。
【その④簿記と会計】「簿記と会計」ができなければ儲かる投資はできない
これまで述べたお金の流れを理解し、コントロールするためには、簿記と会計の最低限の知識が必要かもしれません。ところで、「簿記」と「会計」の違いをご存じでしょうか? 会計だけで十分ではないのか、との質問が来そうなので、私の考えを述べます。
私は、簿記はお金の出入りを「勘定科目」に置き換えること、会計は「勘定科目を集計し分析する」ことと考えています。会計は簿記で作った勘定科目の結果を分析することになるので、費用を増やしたり、資金繰りを考えたりするためには、簿記の知識が必要になります。
取引を勘定科目に変換することを「仕訳」といいます。簿記では、その「仕訳」の基本を学ぶことができ、不動産投資では、その知識が非常に有利になります。できれば取引から「仕訳」ができるくらいのレベルになることが理想的です。ちなみに、私は簿記2級をとり、会計事務所に3年勤め、実務を積みました。
【その⑤余裕資金】何が起きるか分からない…「緊急対応用の資金」を貯めておく
不動産投資を失敗させないための重要な「保険」が、「余裕資金」といえます。急な出費に耐えられないような、資金繰りがカツカツな投資はNGです。緊急対応用の資金のために、無駄遣いしないといいましたが、さらに、余裕資金を「意識的に」積み立てておけば盤石となるでしょう。
私は、ここ10年くらい、不動産購入時には必ず「定期積金」を実施しています。仮に5万円毎月積み立てると、10年で600万円の余剰資金がたまります。小さな物件であれば、月2万円にしています(それでも、10年で240万円にもなります)。
これは「貯金する力」のひとつですが、定期積金は強制的に家賃収入から積み立てることができるので、意識せずに資金がたまっていくのでこちらもお勧めです。
また、私は「小規模企業共済」にも積み立てを行っています。解約時は退職金として使えますし、途中積み立てた金額に応じて緊急融資を依頼することもできますので、税金対策としても有効です。
このように、緊急用の資金をプールしておくことが、何らかの問題が発生した際のセーフティーネットになります。家賃収入は使い切らず、一部でも貯めておくようにしましょう。
【その⑥別途収入】家賃収入を絶たれても凌げる収入源を確保しておく
私が仕事をリタイアしないのは、不動産投資以外の収入を確保しておきたいという理由からなのです。
家賃収入だけに頼った状態で生活していると、例えば、災害などの予期せぬ事象が起きた場合、生活が破たんします。そんな時でも、複数の収入を確保しておいた方が安心ですよね。私は複数の収入をキープしています。本業を絶対にやめない理由もそこにあります。
【その⑦踏みとどまる勇気】怖いと思ったら「買わない勇気」も大切
大きく失敗しないためには、臆病さも時には必要です。どんぶり勘定で、「なんとかなるさ」といった姿勢で不動産投資を行うと大変な目に遭います。「欲しい」が先立つと、目が曇ります。常にいったん立ち止まり、本当に買っても大丈夫かを自問し、検証し、危ないと思ったら踏みとどまる、怖いと思ったら買わない勇気も必要なのです。
もちろん、ビビってばかりでは、なかなか不動産投資がはじめられませんが、破たんするような「ババ物件」をつかむよりはマシです。不動産投資は度胸試しではありませんから。
【その⑧疑う力】「非公開情報」には充分注意すべき理由
不動産投資におけるおかしなキャッチフレーズや甘言にも注意しましょう。
はっきりいいます。業者間でないかぎり、あるいは金融機関でない限り、インナーサークル情報や非公開情報など出てきません。
「あなただけに」なんて特別な物件はないのです。未公開という名の公開情報は所詮セールスキャンペーンです。インナーサークルなどといわれ、結局カモになるセールスはめ込みに乗ってはいけません。
カモにならないためにも、慎重さが必要ですし、疑う気持ちは常に持っていましょう。騙されないように、甘言、セールストークには充分注意しましょう。
最初は小さい物件から経験を積んでいくべし!
不動産投資は泳ぎを習うことに似ています。教本を読んで、その理論を分かっただけでは、実際には泳げないように、不動産も結局物件を買わないと実践スキルは身につきません。不動産投資も、座学だけで学べるものではないのです。
ただし、実践の経験が必要からといって、いきなり大型物件はお勧めできません。初めての不動産投資で大型物件を購入するというのは、プールですら泳ぐ練習をしていないのに、いきなりドーバー海峡を横断するようなものです。失敗したら死にます。
失敗しても死なないようにするには、小さいところで練習し、死なない環境で失敗し、それらを改善していくことです。その点、よく準備をして、まずはワンルームなどの小規模物件から経験を積んでいくことをお勧めします。
そのように意識すれば、かぼちゃの馬車のように、素人がいきなり億越え物件などに手を出して泣きを見るというようなことはないでしょう。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など