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石川貴康の超合理的不動産投資術

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海外不動産投資をちょっとやってみた結果と、勧めない理由

目次

海外不動産を勧めるエージェントはいつの時代もいます。一昔前にちょっとしたブームのようによく聞きましたが、そのブームも去ったように感じます。果たして海外不動産投資で儲けることは可能なのでしょうか? 私の経験談をもとに解説したいと思います。

海外不動産ブームの時のセールストーク

ちょうど数年前、海外不動産投資のちょっとしたブームがありました。投資先は主に、新興国。マレーシア、フィリピンあたりの投資話が盛んで、その他ではタイ、カンボジア、ベトナムあたりが盛んでした。

当時の状況を考えると、なんとも素人臭いというか、インチキ臭がするというか、低レベルのビジネスだったと思います。紹介している会社もエージェントも胡散臭く、信用ならない雰囲気がプンプンしていました。

こんなことを言うと叱られそうですが、日本で食い詰めた人たちが、なんとか食い扶持を稼ごうと、よくわからない海外で口銭を稼ぐことに必死で、投資家のことなんかお構いなし、といった感じがしました。

その時の常とう句はこんな感じです。
「新興国は成長しています。経済成長はこう、人口構成はこう、だから儲かる」
「日本は低成長、日本はもうだめ、高成長でキャピタルゲインが得られるのは新興国」

飲み屋の与太話レベルのセールストークの感でした。こうした語り口でセミナーが開催され、多くの方が新興国でプレビルドといって、完成前のコンドミニアムを買ったものです。デベロッパーが説明に現れたりすることも稀にあるものの、現地に行くとアテンドする口銭稼ぎのにわかエージェントが、適当な説明をして回る程度でした。

先進国では、米国とオーストラリア、カナダぐらいが対象でしたが、こちらもこちらで、日本人エージェントはやはり胡散臭い感じがしました。新興国同様の常とう句は以下です。

「土地値が安く、建物の価値が高いので、中古で買って減価償却で節税ができる」
「取引履歴があって透明性が高い」
「米国は先進国で唯一成長している」
「バンクーバーは不動産投資が盛ん、どんどん値段が上がっている」
「豪州はまもなく外国人投資が規制される。早い者勝ち」

といった感じで、ほとんどの場合、まともな投資判断に必要な情報とはかい離したセールストークが繰り広げられていました。

昨今は、こうした売込みやセミナーは減っていますし、ほとんど儲かっていないか、損失を出している可能性が高く、投資熱も冷めているというのが実態でしょう。

一方で、まじめな事業者がいるのも事実です。要は、まじめな事業者にどうやって巡り合うのかですが、当時はなかなか出会えませんでした。

当時聞いていた海外不動産投資のこじれ話

海外不動産投資は、当時からいろんなこじれ話が流れてきました。まず、新興国です。新興国はコンドミニアムが主でプレビルドで購入します。

トラブルの多くは、まともに完成しないことです。工期は遅れに遅れ、建築が止まってしまうものもありました。

それから質の悪さ。完成しても、とても品質が悪く、内装をやり直したり、ひどいものだと水回りがだめで根本から住める状況ではないとか、修理に莫大な追加費用がかかったりとかです。

また、賃貸用に買っても、まったく入居が確保できない。家賃が当初言われていた額が取れず、まったく採算に合わない。

米国、特にハワイなどでは不動産価格が高すぎて採算割れ、減価償却による損益通算どころか、現実に管理手数料などで大きな損失が出る始末。オーストラリア、カナダも同様で、採算割れ、入居低迷、手数料高、住人からの訴訟などといった良くない噂が多く流れてきました。

一部の投資ではうまくいったのもあるとか、ないとか

とはいえ、一部の投資ではうまく行った話もないわけではありません。しかし、私が聞く話では、投資で成功したというよりも転売で儲けたという話ばかり。

要は、早い段階で安く買って、あとからブームで来た人に高く売ったという話。つまり、バブルのババ抜きゲームみたいな話ばかりでした。

もしかしたら、本当に成功した話もあるのかもしれませんが、私が描く不動産の長期投資、持ち続ける投資としてうまく行っている例は、ほとんど聞くことはありませんでした。

残念な結果に終わった海外不動産投資

さて、そんな私も、試しに海外不動産に投じてみました。その顛末と今思う感慨をお伝えします。

まず、フィリピン。こちらは完成せず。完成予定から3年たった今も完成しません。したがって、だいぶ前に支払いを停止しています。私の知人は損切りで、途中で安く転売した人もいますが、私は逃げ遅れ、今は放置プレイ状態。

次にカンボジア。こちらは完成しましたが、家賃が当初エージェントが言っていた家賃想定と全く違う。月1700ドル取れるといっていたのが、完成時は1100ドル、今は800ドルと半額以下の相場。供給過剰もあって仕方がない面もありますが、僅か数年でここまで下落するのかと驚いています。

このカンボジアの私の物件は完成しましたが、長く空室で、収益を生んでいません。収益を生まないため、箱だけ持っているような状態です。

次にバングラデシュの土地。こちらも放置状態。大金を投じた人たちは、買った土地が工場用地に使われたり、モノレールの駅近くになって値上がりしたりで儲けた人もいますが、小金でちょっと土地を買うくらいではだめですね。こちらも収益を生まない、安い土地を持っているだけの状態です。

といった感じで、まったく収益さえ生まない状況です。残念の一言です。試しにごく少額で新興国3か所に投資をしてみましたが、まったく収益を生まず、今は放置状態。こんなことなら、日本の不動産投資の方が収益性も高く、確実です。今では、当面の間新興国に不動産投資はしないことに決めています。

最近は、新興国に懲りたのか、先進国への不動産投資をボチボチ言い始めたエージェントたちがいますが、不動産という特性上、もう海外に視野を向けるのは、余程の富裕層にならない限り、当分の間、取りやめにしておこうと決めました。

海外不動産投資を避ける4つの理由

ということで、私は海外不動産投資は勧めません。理由を整理しましょう。

①新興国では有益な投資対象を見つけるのが難しい

不動産というのは、良い投資対象かどうかを見極めるのが大変です。日本国内でさえ難しいのに、距離の離れた海外で、しかも、その国では外国人である日本人が利益の出る投資対象を見つけるのは至難の業です。もちろん、財閥と組むとか、かなり企画・開発段階などの上流から入れるなら別ですが、販売段階からでは、まともな投資を見つけるのは困難でしょう。

②新興国ではまともなエージェントを見つけるのが困難

日本で不動産取引を行う際には不動産取引主任者が必ず必要になります。しかし、海外で不動産紹介をしている人の多くは、そうした資格を持たないで紹介を行っているように思います。

ひどいケースでは、単にショールームに連れていき、現地ショールームで模型を見せて、契約の仲介をするだけという人もいます。英語ができない購入者の場合は英語で少しだけ通訳する程度。デベロッパーからは紹介料がもらえないので、購入者に物件価格の5%を請求して、あとは知らん顔です。

つまり、単に現地を案内する程度でエージェントを気取っている有象無象がたくさんいて、有効なアドバイスもなければアフターサービスも何もないといった程度なのです。

もちろん、良いエージェントもいるとは思いますが、日本のように法整備がされていない国では良いエージェントは見つけにくい。一方、米国などの先進国では法整備もされているので、探せば良いエージェントに出会えるでしょう。

③新興国では優良な管理会社を見つけるのが困難

完成後も、まともな管理会社を見つけるのが大変です。不動産市場が発達している日本国内でさえ優秀な管理会社を見つけるのは大変です。新興国では不動産市場が未整備なため、管理も確立されておらず、良い管理会社を見つけるのが大変です。

④新興国は市場が未成熟で転売も困難

そのうえ、新興国では転売しようにも市場が無整備で転売も困難です。こう考えると、新興国での不動産投資は大変だということがわかります。

法整備が整った先進国では投資経験者から話を聞きましょう

一方先進国ではどうかというと、米国などでは物件情報のデータベースが整い、過去の取引状況がわかるため、比較的物件に関する情報が蓄積されています。不動産取引を行う際には資格が必要ですし、エージェント業も確立されています。転売市場もあり、不動産投資を行うインフラは整っているでしょう。

とはいえ、私自身が先進国投資を実際に行っていないため体験として話せません。実際の状況は、実際に投資した人に聞きましょう。さらに言うと、話を聞く人がエージェントだったり、ブローカーだったりすると、儲けようとして話が歪んだり、ポジショントークをされたりするので、セールスにかかわっていないニュートラルな経験者にまずは話を聞きましょう。

海外不動産投資は勧めませんが、投資対象としては常に候補としておきたい

さて、現時点で私は海外不動産投資は勧めません。しかし、中には成功している不動産投資家もいることでしょう。また、超富裕層や、企業として不動産投資を成功させているケースもたくさんあるでしょう。実際に成功している知人もいます。

儲かるスキームをどう作れるかが重要な点でしょう。今のところ、私は販売している不動産を探す程度しかできないため、利益が回収されたあとの物件、すでに販売側の利が乗った物件になるのでしょう。だから儲からない。

しかし、成功している人や企業が必ずあります。そうした位置に上ることを目指して、海外不動産は、今は投資対象ではないとしても、将来は投資対象として取っておきたいと思います。

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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