「アパート・マンション経営の専門家」大長伸吉の不動産投資、成功の法則
2,400 view
2018年8月31日(金)
新築物件vs中古物件どっちが良い!?メリットとデメリット
資産形成の手段として、収益物件を取得して賃貸経営をはじめる人が増えています。収益物件を取得するにあたっては、新築物件にするか、それとも中古物件にするかを選択する必要があります。なぜならそのどちらかしか物件はないからです。しかし、新築物件はそもそもなかなか入手するのが困難です。
というのも、日本には総数で約6,000万戸の住戸があるのですが、このうち、賃貸物件は約2,000万戸(参照:内務省統計局平成25年住宅・土地統計調査)、さらに、平成28年の賃貸物件の新築着工件数は約41万戸(参照:平成28年賃貸物件の着工件数(国土交通省建築・住宅関係統計)となっています。比率では、賃貸物件の100戸のうち新築物件は2戸という割合になり、とても少ないのです。
そのため、これから物件を取得しようとする人は新築よりも中古物件の情報をより多く目にすることになります。
もし、同じ立地、同じ建物サイズで同じ家賃の新築物件と中古物件が並んでいたのならば、入居者は新築物件を選択することでしょう。ただし、このような事例は少ない(というかほとんどあり得ない)ので、新築物件と中古物件のそれぞれにあるメリットとデメリットを知り、慎重に見極めなければなりません。
果たして、新築物件と中古物件でどちらを選べば良いのでしょうか? その詳細を確認していきましょう。
中古物件のメリット
中古物件の主なメリットは、価格が安いこと、すぐに収益をあげられることと取得しやすいことです。
1-1. 新築時点から年数が経過し、古くなるにつれて、物件価格が下がります。新築物件はプレミアム価格もあってかなり高いのですが、中古物件ならば経年劣化によって価値が下がっているので安く入手することができるとよく言われます。
しかしながら、古い建物であってもきれいに使用されていて、また建物修繕がしっかりとおこなわれている物件もあります。つまり、建物が古いため価格は低いが建物の状態が良いという物件が販売されることがあるのです。それは価格以上に価値がある物件といえるかもしれません。このように販売価格には正確な決まりがなく、物件の実際の価値と販売価格にはズレが生じることがあります。
1-2. そして、中古物件は建物が完成しているため、物件購入時にすでに入居者が物件に住んでいることがあり、購入直後から家賃収入を得られることがあります。そのため、購入時に支払った費用を購入直後から回収することができる場合があります。
1-3. 中古物件は市場にたくさんあること。また融資を受ける場合、既にある建物に銀行が抵当権を設定できるため、よほどの築古でない限り購入者は融資を受けやすくなります。そのため、新築よりも物件を取得しやすいことがメリットです。
新築物件のメリット
新築物件には希少価値があり、入居者に好まれるため競争力があります。銀行融資においてより良い融資条件をえられること、そして賃貸経営におけるサポートチームを作ることができます。
2-1. 一般的に建物を丁寧に管理し修繕をしているオーナーが少ないことと、年々建築技術が進化しているため、古い建物より新しい建物が好まれます。さらに新築物件は全体の2%ほどであり、希少価値があります。また2年目以降は中古物件と思われるかもしれませんが、築年数が新しい物件はそれ以前の物件よりもその差の年月分が若い物件と言われ続け、より古い物件よりも競争力があります。
2-2. 良好な賃貸経営を長く続けていくうえで、銀行の融資条件が大事な要因となります。融資条件とは金利や借入期間などです。例えば、銀行から3,000万円を借入金利4%で借りた場合は毎年の利息の支払いは120万円となり、借入金利1.5%では45万円となり、負担額の差は75万円にもなります。一般的に、中古物件に比べて新築物件は低い金利でかつ長期間の融資条件で借り入れることが可能です。
2-3. 土地を取得してそこに新築の収益物件を建てる場合、建築施工のときに設計士や施工業者に費用を支払います。そのため、オーナーは設計士や施工業者の直接のお客さんになります。そして、業者はオーナーよりもその物件に対してとても詳しい専門家です。この時点で、物件管理・修繕チームが出来上がっています。不具合が起きる前に、施工業者に相談できることが新築物件のメリットです。
中古物件のデメリット
古い物件ほど購入後に不具合が生じやすく、大きな出費が負担となります。また建物が古くなるにつれて、物件の魅力がなくなります。銀行の借入期間が短く、毎月の利益が出ない場合もあります。
3-1. 新築物件に比べて、取得後に不具合が多く発生します。さらに、重大なトラブルが発生し、高額の修繕費用がかかる事例が多くあります。例えば、古い木造建物を取得した後に、シロアリが発生した事例では、建物に重要な構造柱がシロアリに食べられている場合は、構造柱の修繕をしなければなりません。その他の部分もシロアリの被害を受けていたのならば数百万円以上の出費となります。その他にも、雨漏りが見つかり、屋根または外壁などの大規模修繕をおこなわなければならない場合もあります。物件を購入する前に慎重にチェックすることも対策になりますが、建物の壁の内側などまでを確認することは容易ではありません。
3-2. 建物は古くなるにつれて、入居者にとっても魅力がなくなる傾向にあるため、どこにでもあるような一般的な間取りや設備の建物は、自然と新しい建物よりも空室率が高くなることが難点です。そのため、購入して間もなく入居していた方が出てしまったら、家賃を下げなければならなくなるということも起こり得ます。中古物件では特に、より立地が良い物件や、他にはない特徴のある建物を選別することが有効です。
3-3. 建物には、法定耐用年数や、融資をする銀行が決める有効使用年数があり、その期間よりも融資の借入期間が短くなります。必然的に新築物件よりも中古物件の借入期間が短くなるため、比較的に毎月の返済額が多くなり、家賃も低くなりがちであることから、毎月の利益を出すことが難しくなります。
そのため、中古物件では特により収益性が見込まれる物件でないと、購入すべきではないとも言えます。
新築物件のデメリット
新築物件は取得をすることが難しいこと、そして家賃収入を得るまでに時間がかかることが課題です。
4-1. 新築物件は中古物件よりも市場に出回る数がきわめて少ないため、なかなか見つけることができないでしょう。また見つけられたとしても物件価格が高いことが難点です。そのため、新築物件を取得することが難しいと言われます。
4-2. 割安な土地を取得して、建物を建てることも方法の一つです。この場合は土地取得を決断してから建物完成までは一般的に10か月ほどの時間がかかります。この期間の家賃収入がないことも新築物件のデメリットです。新築物件を取得するには建築契約や賃貸経営の理解と準備が必要となります。
新築物件と中古物件ではどちらが良いのか?
ここまでで新築物件と中古物件の主なメリットとデメリットを確認してきました。それでは、新築と中古では、どちらが良いのかとの質問に回答します。
中古物件のメリットである「価格が低い」点ですが、老朽化してしまうために価格が低い場合が多く、またすぐに収益をあげられたとしても、築古の中古物件では空室が多く、その結果として家賃を下げることになってしまうのでしたら、予定の収益を得られません。
また、中古物件では大きな不具合のために修繕などで高額の費用がかかるリスクがあります。しかもそのリスクにかかる費用の上限はいくらになるのか見当がつきません。場合によっては建物を建て直さなければならず、数千万円規模の負担になる場合もあります。これらのために赤字が続くというリスクを抱えることは賃貸経営ではやってはいけないことです。新築物件の場合では建物に不具合がある場合は、施工業者の施工の問題として、オーナーの負担になることはほとんどありませんが、中古物件では建物の不具合はオーナーの負担になってしまうため修繕費をもろにかぶる可能性があります。このため、物件を取得した後は、新築物件がよりリスクが少ないといえます。
一方、新築物件は売りだされているのを見つけることがそもそも難しいというデメリットがあるのですが、物件を取得するまでは費用がかかるものではないため、金額的にはリスクがありません。この点が、取得してすぐに収益が得られても、空室や家賃の値下げで利回りが悪くなりがちな中古物件とは大きく異なります。また、新築物件のデメリットである、取得してから家賃を得るまでに時間がかかるという点は、立地選びに気をつけるなど満室になるための対策をすることで解消することも可能です。同じ立地の場合、中古物件よりもより新しい物件が入居者から選ばれることは全国共通です。
物件価格が安いからといって、悪い物件を購入してしまうことではいけません。
賃貸物件は、物件次第では一生で一番高い買い物と言われている戸建て住宅よりも高い買い物になる可能性があります。そのため、失敗をすることは許されません。購入しやすいが購入後に負担がある中古物件ではなく、取得するのは難しいのですが取得後にトラブルが少ない新築物件のほうが安定した賃貸経営をおこないやすいことを知ってもらえればと思います。
まとめ
収益物件を取得するときには、新築物件と中古物件のどちらかを選択する必要があります。その時に、両方の物件のメリットとデメリットを認識しておくことがとても有効です。
そして、収益物件は高額なものですので、物件の取得後は安定して、健全な賃貸経営をおこなう必要があります。
新築物件の難点は物件取得が難しいことですが、このデメリットを補って余りあるのが、建物トラブルがほとんどなく、問題が起きても施工業者が対応してくれるという点です。反対に中古物件では取得後に想定外の負担を被っている事例が多くあります。そして、年月が経過しているため、施工業者に施工責任を問うことはとても難しく、オーナーの負担が大きくなります。
しかしながら、数多くある中古物件の中にも、高品質な物件、入居者に人気のある物件などもあります。中古物件を購入する場合には、物件を詳しく調査してください。このために、オーナーとなる人が中古物件のトラブル事例や賃貸経営についての情報を収集して、よく勉強しておくことが有効です。または実績のある専門家に相談することも有効です。
収益物件を取得した後にトラブルに巻き込まれてはいけません。物件を取得する前にしっかりと準備をすることが大切です。
投資用不動産業界に関する情報が毎週届く!
不動産投資塾新聞社メールマガジン登録はこちら
著者紹介
大長 伸吉大長 伸吉
ランガルハウス株式会社 代表、年金大家会 主宰。
生涯所得の1/3ほどの住まいにかかる出費をゼロにするために、賃貸併用住宅を活用して、サラリーマンや事業主をサポート。
千葉大学大学院工学研究科卒、新築及び中古1Rマンション、中古アパート、世田谷/北関東/多摩新築アパートなど各種の不動産賃貸業の経験をもとに、主にサラリーマンのアパート経営の支援。建築サポート実績127棟。通算2050人の聴講者と2450回を超える相談会にてサポートを継続中。著書に『サラリーマン大家の「クズ土地」アパート経営術』『王道アパート経営で「マイ年金」づくり』など
所持資格:宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、FP2級技能士