不動産投資の最新動向
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2019年12月28日(土)
ハズレくじは意外に多い、買ってはいけない違反建築物件~前編
新築物件の価格が高騰する中、割安感のある中古物件に投資をする人が増えています。中古物件は新築に比べて利回りが高くメリットも多いのですが、中には思わぬ違反建築物件が潜んでいるため注意が必要です。
そこで本記事では、中古物件に潜む違反建築物件について詳しく解説したいと思います。中古物件を中心に不動産投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
違反建築物件はなぜここまで増えたのか
違反建築物とは建築基準法の基準を満たしていない建物のことをいいます。
中古物件を中心に不動産投資をしていると違反建築物に出くわす確率は意外と高く、リスクを知らずに買ってしまうと取り返しがつかないため注意が必要です。
ではなぜ違反建築物がそんなに多いのでしょうか。
建物を建築する基本的な流れ
日本には建築基準法という法律があり、建物を建てる際には事前に建築図書などの資料を建築主事や指定確認検査機関に提出して審査を受けなければなりません。
審査が無事終了すると「確認済証」が交付され建物を建築できます。
そして建物の建築が終わった段階で、設計図書通りの建物が完成しているかどうか「完了検査」が行われ、問題がなければ「検査済証」が交付されます。
よって、検査済証が交付されている建築物であれば原則として違反建築物ではないということになるわけです。
既存不適格物件との違い
違反建築物とは建築基準法に違反して建てられた建物のことをいいますが、建てた後に法改正がされて建築基準法の基準を満たさなくなってしまった建築物のことを「既存不適格物件」といいます。
既存不適格物件については建築当初に落ち度はないため、違反建築物のように法律違反の物件ではありませんので、そのまま使用したり賃貸で運用したりすることに問題はありません。
ただし、将来的に増改築をするとなると、その時の建築基準法の基準を満たすように建て直す必要が出てくるため、一般の物件よりも増改築をする際に高額なコストがかかることになります。
違反建築物も既存不適格物件もリスクがあることは同じですが、現時点においてすでに法律違反状態にある違反建築物の方が非常にハイリスクであるといえるでしょう。
古い物件は検査済証がないことがある
違反建築物の多くは、建築確認で建築が許可されて建築したものの完成した建物に問題があるというケースです。
本来であれば、確認申請の際に設計図書を提出しているため違反建築物が完成するはずはありません。ところが、施工費用などを安く抑えるなどの目的から、確認申請の際に提出していた設計図書とは別の設計図書で建物を建ててしまうことがあるのです。
ただ、そうなると完成した後の完了検査の際に違反建築物だとバレてしまうのでは、と思うかもしれませんが、残念ながらそうはならなかった事情があります。
完了検査率が40%という現実
一般人からすると、完成した建物のすべてについて完了検査が当たり前に行われているものと思うかもしれません。しかし、実は2000年以前に建てられた建築物については、建築確認を受けたものでも完了後の完了検査を受けていないことが常態化していたのです。
国土交通省の下記資料によると、阪神大震災の教訓によって建築確認と完了検査の間に中間検査を義務付けた1999年頃から徐々に完了検査率は上昇しており、現在では約90%にまで是正されていることがわかります。
http://www.mlit.go.jp/common/001279404.pdf
※国土交通省:建築確認検査制度の概要
そのため、最近の新築物件や築浅物件であれば検査済証があるのが当たり前になっていますが、2000年前後に建てられている中古物件については完了検査を受けていない物件の方が多い時代に建てられているわけなので、違反建築物のリスクが非常に高いということがわかります。
なぜここまで完了検査率が低かったのかについては諸説議論がありますが、一言で言えば行政側のチェック体制が甘かったと言わざるを得ないでしょう。
レオパレスにみる違反建築物のケース
中古物件は「完了検査を受けていないリスク」があることについてお分かりいただけたかと思いますが、検査済証が発行されていれば絶対に大丈夫なのかというと残念ながらそうではありません。
昨今話題になったレオパレスによる界壁問題では、検査済証が発行されているにも関わらず次のような違反が発覚しました。
・外壁内部にグラスウールではなく発泡ウレタンを使用した(耐火基準違反)
・天井材を二重ではなく一重にした
・界壁が小屋根裏まで到達していない
これらの部分については建物の内側部分のため、完成してしまうと直接目視で確認することができません。実務的には施行中の写真などを提出させてチェックしていたそうですが、チェックが甘かったと言わざるを得ません。
検査済証があるからといって100%違反建築物ではないとも言い切れないため、中古物件に投資をする場合については、違反建築物を買ってしまわないよう常に注意する必要があるということなのです。
中古物件の違反建築リスクがわかったところで、ここからは具体的な違反のケースについて解説します。
ベランダを見れば建蔽率違反がわかる
中古物件で非常に多い建築基準法違反といえば「建蔽率違反」です。
建蔽率とは「敷地面積に対する建築面積の割合」で、都市計画などによって地域ごとに建蔽率が定められており、その範囲で建物を建築しなければなりません。
建蔽率を行政側で指定することで、建築物が密集することを防いで住みやすい街になるよう調整をしているのです。
例えば、敷地面積100㎡の土地を保有していたとしても、建蔽率60%の地域であれば建築面積が60㎡以内におさまるように建物を建築する必要があります。
建蔽率違反が多い理由とは?
建蔽率の計算に含まれる建築面積のうち、片側だけが固定されていて反対側は宙に浮いているキャンティレバー構造になっているベランダや廊下部分の面積については、建蔽率の計算から除外することができます。
そのため、アパートの建築において建蔽率の制限の中で建築面積を有効活用するために、ベランダについてキャンティレバー構造で確認申請するケースがよくあるのです。
コストカットにより建蔽率がオーバー
実際にキャンティレバー構造のベランダを設置するとなると、重量鉄骨などで強固なものをつくる必要があるため建築コストが非常に高くなります。
かといって、通常のベランダで申請してしまうと建蔽率をオーバーしてしまうため、確認申請時だけキャンティレバー構造の図面を提出して実際の施工はコストを抑えられる通常のベランダで施工してしまうのです。
建蔽率違反を確認するためには、まず現地のベランダを目視で確認します。
ベランダが独立した柱で支えられている場合は建築面積に参入する必要がありますので、売主から設計図面を借りて実際に建蔽率を計算してみましょう。
勝手に事務所使用で容積率オーバー
容積率とは「敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合」のことで、建蔽率と同じように行政によって地域ごとに割合が定められています。
賃貸物件の場合、容積率が大きければ大きいほど多くの部屋をつくることができるため、その分収益率の良い物件を建てることができるのです。
勝手に用途を変更しているケース
容積率違反で多いのが、当初の届出とは違う用途で建物を使用しているケースです。
例えば建物の1階部分について確認申請当初は駐車場として届け出ていた場合、その部分の面積については容積率の計算から除外されます。
ところが、のちに何らかの事情で駐車場を改装して事務所として使用していることがあるのです。1階部分が事務所となると容積率の計算に含めなければならないため、場合によっては容積率をオーバーしてしまうことになります。
駐車場のほかにも地下室やビルトインガレージなどについても、一定の面積について容積率の計算からは除外されるため、行政に届出ている用途と現在の使用状況が異なる場合には容積率オーバーが疑われますので必ず計算して確認することをおすすめします。
勝手に増築した物件がヤバイ
築年数が古い物件の中には新築後に増築を繰り返しているものも少なくありません。
増築そのものは悪くないのですが、建築基準法によると10㎡を超える面積について増築する場合については、あらかじめ確認申請が必要となります。
ただ、現実的には確認申請をせずに勝手に増築している物件が多々あるため注意が必要です。
違法増築をするわけとは
増築について確認申請をするためには、「検査済証」が必要となります。
ですが、さきほども解説した通り古い物件については完了検査を受けていないことが多いので、必然的に増築の確認申請ができず違法増築になってしまうのです。
特に店舗や事務所として使用している物件については、営業上の都合で倉庫などを確保するために勝手に増築しているケースがあります。
実物と建築計画概要書を比較して確認する
違法増築物かどうかを確認するためには、物件の今現在の状態と確認申請時の図面を見比べて確認する必要があります。
建築計画概要書は物件の住所地を管轄する役所の都市計画課などで保管されており、直接行けばコピーしてもらうことが可能です。建築計画概要書に記載されている図面と、現地の外観を比較して図面に記載されていない部分が存在していれば違法増築の可能性があります。
違法増築が発覚すると取り壊し命令が出ることもありますので、購入前に必ず確認することをおすすめします。
違反建築物に気が付かない不動産会社もある
物件を購入する際には不動産会社に仲介してもらうため、万が一違反建築物であれば不動産会社から事前に説明があるのが当然です。
ですが、レオパレスの一件があったようにたとえ専門家が見たとしてもすぐにはわからないような違反もあるため、不動産会社の担当者レベルでは気が付かずにそのまま仲介してしまうこともあり得ます。
違反建築物を買わないためには、中古物件には違反建築物が多いということをよく理解したうえで、投資家自身でも疑って調べるという心構えがとても大切です。今回ご紹介したような建蔽率や容積率、違法増築などの違反については一般の方でもある程度は確認することができます。
不動産会社の言い回しに注意
不動産会社が違反建築物だと気が付いていたとしても、「違反建築物」という単語は印象が悪いため買主の前ではあまり使いません。
例えば、
「この物件は現在1階を事務所として使用している関係で、容積率が少しだけオーバーしていますが今まで行政からは何か言われたことはありません」
といった感じで軽く説明をしてきます。
これだけの情報ですとなんとなく大丈夫かな、と思ってしまうかもしれませんが、これは違反建築物であることを意味しているのです。
不動産会社はできるだけ成約に結び付けるために、違反建築のようなネガティブな情報についてはあたかも軽い問題であるかのように説明してくることがありますので十分注意しましょう。
違反建築物を買った場合のリスク
違反建築物であることが行政側にバレると、所有者に対して取り壊しや使用禁止などの命令を出されるため場合によっては大変な損害を被る可能性もあります。
現実的にはよほどのことがなければ取り壊し命令が出ることはないようですが、違反建築物については担保としての価値はほとんどないため、売ろうとしても買主側が融資を利用することがほとんどできません。つまり、現金一括で買ってもらうしかないのです。
不動産会社によっては違反建築物の買取を行っているケースもありますが、通常相場よりも非常に低い買取価格になってしまう可能性が高いでしょう。
まとめ
中古物件で検査済証がない場合については、違反建築物の疑いがありますので売買契約を締結する前に図面などの資料を入手したうえで、物件現地を確認することが大切です。
今回ご紹介した違反については比較的一般の人でも確認さえすればわかるのですが、これら以外にも違反の種類はたくさんありますので、不動産投資初心者のうちはあまり古い物件には投資せず、築浅の検査済証がある物件に限定して投資したほうがよいでしょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。