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実は安く売らされている?不動産会社がいいたくない「中間省略」の仕組みとは

目次

不動産を売却する際には不動産会社に募集を依頼して仲介してもらうのが一般的です。しかし、すべて不動産会社に任せっきりにしていると、自分でも気が付かないうちに相場よりも安く売られてしまう恐れがあるため注意が必要です。

そこで本記事では、不動産会社が儲かって売主が損をする可能性がある「中間省略」という手法の実態に迫りたいと思います。

これから所有物件の売却を検討している方は、売却先を決める前にぜひ本記事をお読みいただき参考にしていただければと思います。

不動産の「買取り」に潜むワナとは

不動産を売却する際には、一般個人の買主をあっせんしてもらう方法以外に、不動産会社自体に直接物件を文字通り買取ってもらう「買取り」という方法があります。

特に投資用物件については、不動産会社が買取りをあっせんする大量のダイレクトメールを所有者に送っているため、買取りを利用して投資物件を売却する方は多いことでしょう。

これを利用すれば所有物件をすぐに現金化できるというメリットがありますが、一方で不動産会社のいい値で買取られてしまうというリスクに注意が必要です。

買取りが相場よりも「安くなる」理由

そもそも不動産会社は買取った物件を長期間保有するのではありません。他へ転売することで利益を得ているのです。

例えば、2,000万円の区分マンションを自社で買取り、その後売買募集をして2,200万円で転売して200万円の利益を得ようとしているのです。そのため、不動産会社が提示してくる買取り価格というのは、市場相場で実際に募集して売れる価格よりも「不動産会社の儲けの分」だけ低くなります。

こう聞くとなんだか納得がいかないという人もいるかもしれませんが、本来「買取り」というのは間に入る業者にある程度利益を抜かれるというのがむしろ一般的ですので、それ自体が悪いということではありません。

ただ、最近では買取による転売利益の確保がどんどんエスカレートしており、本来売主が得るはずだった利益が不動産会社に流れてしまっているのです。

中間省略とは「転売」がエスカレートした最終形態

不動産を転売する場合は、売主から不動産会社が買取って所有権移転登記をしたうえで、買主を募集して見つかり次第転売をするのが通常の流れです。

ところが、不動産の転売によって収益を上げる不動産会社の中には、相場よりも著しく安い金額で買取ったうえで、引き渡しまでの間に転売先を見つけて直接転売する「中間省略」というやり方で荒稼ぎをしているケースがあるため注意が必要です。

不動産会社が買取った際に不動産会社を所有者として登記を入れずに省略して、そのまま転売先の人の名前で登記を入れることから「中間省略」といわれています。

通常、不動産を転売するとなると所有権の登記は次のように移転していきます。

売主A→不動産会社B→転売先C

一方で中間省略の場合は次のようになります。

売主A→転売先C

※不動産会社Bが省略されます。

登記を省略することで、不動産会社は登記費用や不動産取得税などの税金の課税を逃れることができます。

一見すると手続きが簡略化されただけのように見えるかもしれませんが、実は中間省略になることで売主は2つの大きなリスクを負うことになるのです。

不当に安く買取られるリスク

中間省略というやり方ができたことで、不動産会社としては仲介手数料以外の儲け方を知ってしまったのです。

例えば、売主Aから2,000万円で不動産会社Bが仲介の依頼を受けたとします。

たまたま、不動産会社Bの顧客で当該物件を2,200万円で購入を検討しているCがいた場合に、直接AとCを仲介するのではなく、AからBが2,000万円で買い取った上でCに2,200万円転売して200万円の利益を上げることができるのです。

悪質な不動産会社の中には、さらに自社の利益を増やすために、すでに希望する価格で買主が存在しているにも関わらず、売主に値下げ交渉することで必要以上に安く買取った上で高く売却しようとします。

中間省略による転売が不動産業界で常態化したことで、本来であれば売主本人が受けるはずだった利益までも不動産会社に侵食されはじめているのです。

決済代金が入金されないリスク

不動産を買取って転売するためには、不動産会社が一旦売買代金全額を支払う必要がありました。

ところが、中間省略という手法で買取りをする場合については、不動産会社の転売先であるCの代金を決済時にそのまま売主Aにスライドして支払うため、事実上不動産会社に資金力がなくても買取りが可能になってしまったのです。

売主としては不動産会社が買取ってくれると信用して売買契約を結びますが、その後万が一不動産会社の転売先であるCのローン審査が通らないなどの問題が発生すると、最悪の場合に決済日当日にAに代金が入金されなかったり、決済日を延期するよう打診されたりする可能性があります。

中間省略は表向き買取りですが、実態としては不動産会社が物件を右から左に即時転売して利益を不当に横取りする仕組みとなっているのです。

実際にある中間省略の「具体的な手口」とは

中間省略の実態についてお分かりいただけたかと思いますが、不動産会社はこれらの事実をできる限り売主にわからないようにしてうまく営業して誘導してきます。

そこでここからは、実際にあった中間省略による買取り事例をもとに、具体的な流れについて見ていきましょう。

その1●「買い取ります」といって売主に急接近

売却について相談してきた顧客の中で、相場よりも安く売りそうな顧客をターゲットに自社での買取りを持ちかけます。

ただ、実際はこの時点ですでに転売先の目星がついていることが多く、買取り価格は転売先の提示額よりも300~400万円程度安く提示されます。

※都内のワンルーム区分マンションを想定した場合です。

その2●中間省略用の売買契約を締結する

売主が買取りに応じたら中間省略用の売買契約を締結します。基本的な内容は通常の売買契約書と同じですが、所有権の移転に関する部分だけ次のような違いがあります。

【通常の条文例】

「本物件の所有権は、買主が売主に対して売買代金全額を支払い、売主がこれを受領したときに売主から買主に移転します」

【中間省略の条文例】

「買主は、売買代金全額の支払いをするときまでに、本物件の所有権の移転先となる者(以下「第三者」という)を指定し、売主は、買主の所有権等の移転先の指定及び売買代金全額の支払いを条件として、第三者に対して本物件の所有権等を直接移転します」

通常の条文については意味が理解できると思いますが、中間省略の条文については一般の方が読んでもおそらくほとんどの方が理解できないのではないでしょうか。

買取る不動産会社は中間省略によって即時転売することを売主に隠そうとするため、上記条文の意味については積極的に教えようとしませんし、売主についても「そういうものか」程度の認識で署名捺印してしまうことの方が多いでしょう。

上記中間省略の条文をわかりやすく翻訳すると次のようになります。

「不動産会社が売買代金全額を支払うまでに転売先が決まるので、売主は不動産会社から売買代金全額を受け取ったら転売先に直接所有権を移転します」

要するに、「高く買取ってくれるあてがあるので、あなたから安く買ってすぐに転売します」ということなのです。

売買契約書に上記のような中間省略に関する条文を発見したら、今売ろうとしている価格が相場よりも大幅に低い可能性があるサインですので、一度冷静になって本当にその価格で売ってもよいのか再検討することをおすすめします。

その3●決済日に所有権を直接転売先に移転する

不動産会社としては売主に転売先の存在を積極的に伝えたくないため、決済日についても売主と転売先で別々の場所に集まることが多いです。

中間省略の場合、決済日当日のお金の動きに時間がかかります。

通常の売買であれば、買主が売主に代金を振り込むだけですが、中間省略の場合は転売先が不動産会社に払った代金を、さらに不動産会社が売主に対してスライドして振り込む流れです。

転売先の個人がローンを利用する場合については、融資が実行されて不動産会社にお金が着金するまでにある程度時間がかかることがあるため、最終的に売主に代金が渡るまでに数時間かかることもあります。

代金が売主に渡った段階で、売主から転売先への所有権移転登記申請を司法書士が行って終了となります。

以上が中間省略による不動産売買の具体的な流れです。

外形上は普通の売買とそこまで変わりませんが、中間省略の条文の意味を知るとこれから売ろうとしている金額が相場よりも安いということが理解できるでしょう。

中間省略が連続して続く場合も

売ろうとしている価格があまりにも相場より安いと、上記の中間省略が何回にもわたって連続で続いていることがあり、私が実際に見た事例では合計で3回転売が繰り返されていたことがあります。

1:売主Xが中間省略で不動産会社Aと2,000万円で売買契約を締結。

2:Aは中間省略で不動産会社Bと2,200万円で売買契約を締結。

3:Bはさらに中間省略で不動産会社Cと2.400万円で売買契約を締結。

4:Cは一般個人Dと2,500万円で売買契約を締結。

5:決済日に所有権が売主Xから最終的な転売先Dに直接移転して終了。

このように見ると、売主Xは自分で気がつかないうちにAからB、BからC、CからDと3回も値上がりして転売されているのです。

数年間かけてこのような価格の上昇が発生するのであればまだ理解できますが、売買契約を締結してから決済までの2~3ヶ月程度の間で3回も転売されていることを考えると、もともとのXの売値が安すぎたことがわかります。

Xが安く売った分、間に入って買取ったことになっている不動産会社ABCの利益になってしまっているのです。

中間省略が続くと事故が起きやすい

中間省略が連続するような場合、決済日当日のお金の動きが複雑化し、先ほどの事例で考えると次のようになります。

・個人Dの融資が実行されてCに2,500万円が振り込まれる。

・CがBに2,400万円を振り込む。

・BがAに2,200万円を振り込む。

・Aが売主Xに2,000万円を振り込む。

売主Xは転売先から代金がスライドして回ってくるのを待たなければなりません。

また、複数の業者や個人が介在することで、途中で売買代金を持逃げされるリスクも高まりますので、売主Xにとってはデメリットしかないのです。

中間省略で売却すると、上記のお金の流れについては売主Xに知らされないため、知らぬ間に大きなリスクをしょわされてしまうことになります。

中間省略を見破る方法とは

中間省略を見破るためには、基本的に売買契約書の条文を細かくチェックする必要がありますが、初心者投資家の方が中間省略の条文を見分けることは簡単ではありません。

そこでもっと単純な方法として、不動産会社に対して中間省略かどうかについて直球で質問することが一番手っ取り早い方法です。

不動産会社は売主に売買価格が相場よりも安いことを悟られないために、中間省略によって即時転売することを積極的に伝えませんが、売主から直球で聞かれたら答えざるを得ません。

特に売主から「中間省略」という単語が出た時点で、ある程度不動産売買について詳しいということが不動産会社に伝わるため、あきらめてすべて話してくる可能性があります。

もしも中間省略であることがわかったら、売買価格が相場よりもかなり低い可能性があるということなので、再度価格について見直した方がいいかもしれません。

あえて中間省略を使いたいケース

中間省略で売却するということは、相場よりも安い金額で売却するということになるので、特に焦っているわけでなければ通常通り売買募集をかけて一般個人の買主を探してもらう方がおすすめです。

ただ、相続税の納税期限までに不動産を売却して現金化しなければならないなど、差し迫った必要がある場合については、中間省略でも金額に納得しているのであれば問題ないでしょう。

まとめ

今回は不動産会社が売主に教えたくない「中間省略」の仕組みについて解説してきました。

中間省略という単語自体知らなかったという投資家の方は多いのではないでしょうか。

不動産会社の買取りがすべて悪いということではありません。

ただ、中間省略ということは売買価格が相場よりも低いというサインなので、すぐに売買契約書に署名捺印せずにもう一度相場を調べることをおすすめします。

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著者紹介

不動産投資塾編集部
不動産投資塾編集部

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。

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