石川貴康の超合理的不動産投資術
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2018年8月24日(金)
不動産仲介業者の優秀な営業マンは不動産経営の大きな味方になる
不動産を継続して買うための勘どころ、今回は不動産仲介の営業を押さえることです。営業マン、営業ウーマンを押さえることは、不動産投資の入り口を押さえることになるからです。(営業マン、営業ウーマンと書くと冗長なので、今後は営業マンで行きます。この言葉には営業ウーマンも含まれていると考えてください)
人それぞれ、いろいろなスタイルの営業マン
私は、一度選んだ営業マンから継続して物件を買います。最初の不動投資であるワンルームでも、1人の営業マンから買い続けました。この時はたまたまですが、その後一棟ものを買う際に、明確に意識しました。
不動産仲介業者にはたくさんの営業マンがいます。人それぞれ、いろいろなスタイルで営業活動をしています。イケイケどんどんな営業マン、地味で気弱な営業マン、論理的で知的な営業マン、傲岸不遜な営業マン、不動産屋臭がプンプンする昔ながらの営業マンなど様々です。
不動産投資を始めてから16年の間に、それこそ何人の営業マンと会ったかわからないくらいです。ワンルームは除き、今の15棟、9戸建て、8借地に至る過程で、私が購入を決めたのはほとんど3人の営業マンからとなっています。
都内の一棟ものはSさん、茨城はK1さん。沖縄はK2さんです。この3人以外にもたくさんの営業マンに会っていますが、ほぼこの3人からしか買っていないといっても過言ではありません。なぜ、決まった営業マンからしか買わないのか、理由を述べてみましょう。
決まった営業マンからしか買わない理由
大きな規模の不動産仲介業者の場合、複数の営業マンがいて役割分担がされています。主な役割分担は、地域によって担当を変えるというものです。
私も不動産投資家の駆け出しのころは、いくつもの不動産仲介業者を訪問し、担当地区ごとの営業マンに会ったりしました。結果からすると、玉石混交です。良い営業マンに当たればOKですが、そうでないと悲惨です。
かつて私は地域割りの営業マンで酷い人を変えてもらったことがあります。メゾネット型の一棟ものアパートを買った際の営業マンですが、この営業マンがいい加減で、購入後にトラブルが続出しました。
なにが起きたのかというと、物件の付帯設備の説明で「エアコン」4機があったのに、それが実は付帯設備でなかったのです。購入後入居者の退去があり、退去後の物件を見に行くとエアコンが消えています。どういうことかと問い合わせると、実はエアコンは入居者のものだったということが発覚、トラブルになりました。
宅建業者として瑕疵担保責任があるにもかかわらず、対応が鈍く、その後も面倒がいろいろ続きました。自分のミスなのに、ミスを認めず、大家に損を押しつけようとしたりしました。人としても、会社としても、2度と付き合わないと判断しました。
ちょうど同じ時期に、別の一棟を買った同じ仲介業者の別の営業マンがいました。こちらは、反応が早い。何を聞いても、即調べて対応してきます。大家にとってのメリット・デメリットを整理して、リスクも開示し、判断を求めてきます。大家の立場で、大家が損をしないで、それでいて自社も儲かるように振る舞うのです。
一度は付き合うのをやめようとした仲介業者ですが、この営業マンの登場で私の担当はすべてこの営業マンにしてもらい、その後10棟近くの購入をこの営業マンからしていくことになりました。
この営業マンから買い続ける理由は、「信頼感」です。私は一度信頼すると、その営業マンを全面的に信頼し、買い続けます。彼は裏切らないと考えるから、こちらも彼の利益になるように、裏切らずに買い続けようと思うのです。
自社の利益ばかり気にしたり、自分の成績や保身ばかり気にしたりして、投資家を置き去りにするような営業をする営業マンが多すぎます。投資家を裏切らない、信頼できる営業マンを見つけたら、私は信頼し続け、買い続けるのです。その理由は、意外と単純で「信頼」なのです。
どのような営業マンを押さえるべきか
それでは、どのような営業マンを信頼しているのか、その要因を明らかにしてみましょう。
第1に、反応が早く、「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」ができる営業マンです。こんな基本を最初にあげなければならないほど、不動産業界の営業マンは玉石混交なのです。メールをしても、電話をしても、その日のうちに返信が来ることが最低限の基準です。それさえできない人が多いのです。つまり、仕事の基本ができることが第一。
第2に、自分の会社の立場ばかり守らず、投資家の立場にたって行動ができること。投資家そっちのけで、売ることばかり言ってくる営業マンは失格です。特に、「今が買い時」、「今買わないとなくなります」などと言って急かす営業マンとは私は付き合いません。確かにそういう場面もあるでしょうが、それが分かるのは、買うことを決めた後でいいのです。売る都合ばかり優先では、リスクを見落とす可能性もありますから、急かす営業マンとは付き合いません。
第3に頭が良いこと。計算が早く、リスクを想定し、何が起きるか分かる知性、投資家が何を望んでいるのかがすぐ把握できる営業マンです。
第1、第2の条件を満たす営業マンは見つけられますが、第3はなかなかいないのです。仕方がないので、付き合っていくうちに、私の志向を伝え、私の好みを知り、私の思う方向で動いてくれる営業マンを作り上げます。
営業マンを自分好みに教育していくべし
良いと思う営業マンを見つけたら、放してはいけません。何件も紹介してもらいながら、徐々に自分の望む動きをしてもらうように育てていきます。たとえば、私はムダな物件を見たくないので、最初から違法建築や問題入居者がいる物件を排除してもらっています。
さらに、公開物件では、「残り物には福がない」ことが多いので、できるだけ上流の段階、できれば仕入れの段階から情報を流してもらうようにします。
また、購入時はいろんな提案をしてもらうように育てます。植木の手入れの業者の提案、清掃業者の提案、プロパン業者の入れ替えの可否、修繕の要否、草刈りの頻度などなどです。
その上、金融機関とのやりとり、書類の受け渡し、忙しい時には納税証明書の取得や印鑑証明の取得などをお願いします。
言葉は悪いのですが、営業マンを自分好みに教育します。要は、私の「エージェント」となれるところまでになってもらうのです。
営業マンを自分の不動産経営の味方にしてしまう
そうです、優秀な営業マンを捕まえたら、自分の「エージェント」として振る舞ってくれるくらい、不動産経営の味方にしてしまうのです。もちろん、その見返りは、私が買い続けることなのです。彼への報酬は、会社での評価のアップやボーナス査定です。
時に、自分の会社との調整で、私に有利に動くこともあります。それは、何よりも、長く私が買い続けられるだけの儲けを、会社と折半して私に分けてくれることで、次にまた買うということです。
以前、こういうことがありました。仲介業者初の戸建て賃貸企画の物件になかなか顧客がつかず、困っているところ、私が8戸全部買うことにしました。その代わり、表面で8%の利回り保証を取り付けてくれました。その後、1戸だけ入居がなく、5,000円だけ家賃を下げての入居が決まりました。
この時、この営業マンは会社に掛け合って、利回りが8%になるように、契約を切り替え、価格を下げさせたのです。引き渡しの直前です。保証は口約束でしたから、守る、守らないは会社次第です。しかし、あえて面倒を引き受けて対応してくれました。
もちろん、たった月額5,000円に対する金額ですから大した金額ではありませんが、苦労を厭わず対応してくれました。これは、とても面倒な対応で、社内の決済を変えさせ、金融機関とも融資額の相談をしなおさなければならないものでした。
「エージェント」として、クライアントである投資家の私に成り代わり、私の利益も守ってくれる営業マンは本当の投資のパートナーです。
会社よりも営業マンが大事、会社より人をみる
私は本業でも、会社より人しか見ていません。結局仕事は人が回しているのです。人さえ押さえておけば、その人が会社を移っても、同じ仕事をしてくれます。したがって、転職(転社)しても、その営業マンとは付き合い続けます。会社がいくら良くても、人が代われば対応が変わってしまいします。
ですから、営業マンはその所属の会社より大事です。会社より人をみて仕事をしましょう。そうすれば、彼は「エージェント」となって、投資家である私やあなたに利益をもたらしてくれます。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など