不動産投資の最新動向
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2021年5月17日(月)
大きく節税できるはずが――不動産投資の経費で痛い目に遭った投資家たち
「マンション経営などの不動産投資は節税になる!」――投資用不動産の営業マンの決まり文句です。
不動産取引から賃貸経営に至るまでにかかる費用を経費として落とせば、利益が圧縮され、節税になるという理屈です。
しかし実は、不動産投資で節税を狙うのには大きな落とし穴があります。
今回の記事では、経費として認められる項目と認められない項目を解説しつつ、経費を軽視したことで思わぬ失敗を招いた例を紹介していきましょう。
認められる経費と認められない経費
不動産投資の賃貸経営において、家賃収入を得るために必要な支出は、基本的には経費計上できます。
ただし、認められる経費と認められない経費があるので、素人判断は禁物です。
不動産オーナーは絶対に覚えておきたい! 認められる経費
まず、不動産投資で認められる経費は、主に以下の14種類が挙げられます。
①不動産購入・入居者募集で発生する仲介手数料や広告宣伝費
②固定資産税や都市計画税、登録免許税、不動産取得税、印紙税、自動車税、重量税、利子税、法人事業税
③火災保険や地震保険などの保険料
④税理士や司法書士への報酬
⑤不動産管理会社への管理委託料
⑥建物の管理費
⑦金融機関に返済するローンの金利
⑧原状回復のリフォーム費用や設備故障の修復に使う修繕費、修繕積立金
⑨不動産投資の目的に沿う旅費・交通費(公共交通機関の運賃や自家用車のガソリン代、宿泊費など)
⑩不動産投資で利用した通信費
⑪自動車関連費用(車の購入費や維持費)
⑫セミナーや情報収集の勉強費用(新聞代・書籍代・セミナー代・コンサルティング代)
⑬不動産会社や管理会社との接待費・交際費
⑭建物部分の減価償却費
いずれも不動産投資の目的に沿った費用が、経費として計上できます。
プライベート目的の費用が経費計上できないのは当然ですが、たとえば通信費や交際費はビジネス目的とプライベートの両方で発生する費用です。
細かく領収書を分けて管理しなければなりません。
しかし、経費として計上しても、使ったお金が戻ってくるわけではありません。
節税を意識するのであれば、実際のお金が出て行かない「減価償却費」の経費計上がキモになります。
減価償却費は、建物の構造による法定耐用年数で物件の購入費用を割ることで算出できます。
たとえば耐用年数が22年の木造住宅を建物価格2200万円で購入したとしたら、年間100万円は減価償却費が計上でき、その分の税金が下がるのです。
不動産経営と関係のない、認められない経費
逆に、次のような費用は経費として認められません。
①所得税、住民税、法人税の支払い
②車のスピード違反や駐車違反などの反則金や罰金
③宅地建物取引士などの資格取得費用
④スーツ代やビジネスバッグ代、腕時計代、コンタクトレンズ代など
⑤ジムなどの入会金や会費
補足すると、税金の支払いについては、不動産購入によって発生する固定資産税などの税金は経費として認められます。
ただし、所得税や住民税、法人税は不動産投資に関係なく発生する税金とみなされるため、経費には認められません。
節税対策のつもりが大失敗してしまったヤバい事例
不動産の営業マンが節税効果をアピールして物件を売り込んでくるせいで、不動産投資による節税効果を過大評価して投資に踏み切る人は多いものです。
しかし投資家のなかには、節税目的で物件を購入したせいで、思わぬ痛手をこうむる人もたくさんいます。
ケース① 「赤字経営が節税につながる」を鵜呑みにしてローン審査が通らない
不動産投資で節税効果を発揮するには、不動産事業が赤字であること、収入が不動産事業以外にあることの両方の条件を満たす必要があります。
不動産投資を行なった場合、本業の給与と不動産投資の事業収支を合算して確定申告する「損益通算」が認められています。
不動産投資の事業が赤字であった場合、損益通算すると本業の給与からもともと源泉徴収されていた税金は払い過ぎだった計算になり、還付を受けられるのです。
ここで注意したいのが、損益通算で所得が少なくなったタイミングで、オーナーが自動車ローンや住宅ローンの審査を受けるケースです。
損益通算で自分の所得が少なく見えていると、ローンの審査が不利になる場合があります。
不動産投資による目先の節税効果に釣られてしまったせいで、車や住宅を買うという人生の一大事に大損してしまう投資家は、実は多いのです。
ケース② 賃貸需要のない物件を買わされ大失敗
ほかによくあるのは、節税目的の不動産投資を実行した結果、入居者の入りそうにない郊外のオンボロ物件を保有してしまうケース。
耐用年数を過ぎた築古物件は減価償却の期間を自分で決められるので、短期間で大きな節税効果が見込めるのです。
しかし、いくら節税効果があったとしても、安定した家賃収入がなければ不動産投資の収支をプラスにはできません。
入居需要のないボロ物件を節税目的で購入したせいで、毎月多額の赤字を垂れ流すお荷物資産を持つハメになった投資家は、一時期の不動産投資ブームにおいて後を絶ちませんでした。
さらに不動産投資ローンを活用した場合、「さらに物件を買い増ししたい」「住宅ローンでマイホームを購入したい」といったタイミングでマイナスに働きます。
とはいえ、保有物件を売却しようとしてもボロ物件は安値でしか売れません。
被害ばかりを被ってまったくメリットを得られず、八方塞がりに陥るリスクは高いのです。
情報弱者は入口で騙され経費に泣く
不動産投資において、経費計上は節税につながる大切な要素となりえます。
ただし不動産投資は、あくまでも収益を得てこそ成功といえるもの。
入口の段階で「節税効果」という耳障りの良い言葉だけに惑わされて不動産投資を始めれば、失敗は必至です。
不動産営業マンのセールストークを鵜呑みにせず、きちんと家賃収入で安定した利益を得られる物件を慎重に選びましょう。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。