業界「グレーゾーン」の真相~これからの「不動産投資リテラシー」を身につけるには?
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2019年11月18日(月)
情報は筒抜け…世間の知らない「不動産業界グレーゾーン」の真実
不動産業界には、エンド側(大家)が知らない、業界独特の「グレーゾーン」な仕組みがあると一般的には考えられがちです。例えば「安く仕入れ、高く転売する」業者が“ボロ儲け”している、等です。しかし、それらはユーザーの無知が生み出したイメージであることが多く、この情報化社会で、一般人に“降りてこない”情報はほとんどないのも事実です。本連載では、実際に起きた事件・騒動等を例に、大家として「確かな情報」を掴むためのノウハウを、一般社団法人首都圏小規模住宅協会・代表理事の小島拓氏に不動産投資塾編集部が聞きました。今回のテーマは、世間を賑わせたシェアハウス問題の本質です。
不動産業界はグレーなのか? 「シェアハウス問題」2つの論点
――「かぼちゃの馬車」や「スルガスキーム」といった言葉が世間を賑わしてから約2年が経ちます。あれらの騒動の原因は結局、どのあたりにあったと見ていますか。
小島拓・代表理事(以下敬称略) 2つあると思います。ひとつは、ここ数年にわたってメディアなどが報じてきた「業界側の問題」です。一連のシェアハウス問題は我々のような業界関係者も引くくらいの大きなスキャンダルで、スキームの詳細や業界内にあった原因などについては、報道記事やトラブルの顛末を暴く著書などによって明らかされています。
ただ、メディアを見ていると、「エンドである大家や投資家が騙され、売る側の業者がボロ儲け」という報じられ方をしている印象を受けますが、私はその点には疑問を持っています。一部の業者が原因を作ったことは間違いないのですが、では、シェアハウス投資などに飛びついた投資家側に問題がなかったかというと、そうは思えません。ふたつ目の問題点として、「投資する側の知識不足、経験不足、リテラシー不足」が原因になった側面もあると思っています。
――投資家が一方的に騙された、とはいい切れないということですね。
小島 不動産売買は金融機関から融資を受け、物件を購入する際も自分で契約内容を確認し、納得した上で署名、押印をします。腕を掴まれて無理やりハンコを押されるわけではありませんよね。業者や金融機関が加担し、投資家が損をした実態はあったとしても、投資家が「騙された」という表現で片付けるのは少し違和感を覚えます。
――騒動の結果として世間一般では、業者や金融機関に原因があったという認識が生まれました。不動産業界に対してもグレーな業界という印象を持つ人が増えたと感じます。
小島 それはあるでしょうね。前述の通り、メディアの報じ方がそのような印象を与えるものになっていた部分があります。世間一般のそもそものイメージとして、不動産業界には「悪いことを考える反社っぽい人がたくさんいる」といった先入観があると思います。そのようなイメージが根底にあるため、業者や金融機関を悪役に仕立てた記事が世間に受け入れられやすく、スキャンダルとして伝わりやすいのだとも思います。
――実態として不動産業界はいわゆる「グレーな業界」なのでしょうか。
小島 不動産に限らず、悪いことやずるい方法で儲けてやろうと考える人は、どの業界にも少なからずいるだろうと思います。ただ、不動産業界全体という視点でいうと、世間がイメージするほどのようなグレーな部分はないと断言できます。何かごまかそうにも、ここまで情報の透明性が高まっている社会では、あらゆる情報が筒抜けです。Amazonプライムで翌日届くような書籍に載っている情報が世間の知らない業界の闇と呼べるのでしょうか?私はそうは思わない。
実際のところ不動産業界、および関係者に何かしらの特権もなければ、情報が漏れないように遮断する力もありません。シェアハウス問題を見ても分かる通り、結局不正は暴かれます。問題を抱えた業者もひと通り潰れたといっていいでしょう。さらに金融機関が、いわゆる「サラリーマン大家」への融資を引き締めたことにより、この問題に関してはいったん終わったのかなと思います。
――それでもグレーに感じる人がいるとすれば、それも広い意味ではリテラシー不足の問題で、先入観によって見え方が歪んでいるのかもしれませんね。
小島 おっしゃる通りです。先入観やイメージは厄介で、物の見え方を変えてしまいます。例えば、不動産投資を3年ほど勉強した人が、いよいよ物件を買おうと不動産業者と話をするとしましょう。投資家は担当者がプロであると思い、そのレベルの仕事を期待してしまいますよね。しかし、入れ替わりの激しい業界ゆえ、実際は入社数ヶ月程度の新人担当者で、明らかに知識と経験が不足していることもあります。
よくある話として営業マンたるもの「お客様の前に立ったら、君はもうプロ」です。新人君は演じます。しかし、不動産投資を3年間勉強したサラリーマン大家候補生が、プロを演じる新人君から得られるものはなく、新人君の口から出る情報は知ったかぶりのその場しのぎの胡散臭い話のみです。極端な例え話ですが、目の前に現れた担当者はプロであると思い込んでしまうと、問題が起きてしまう可能性があるわけです。
――現状、金融庁の方針などが金融機関の融資に反映され、いわゆるサラリーマン大家と呼ばれる投資家層が融資を受けづらくなりました。一連のシェアハウス問題は収束に向かっていると見てよいでしょうか。
小島 そう考えていいと思います。ただ、仮にこれから金融機関が融資条件などが緩和されても、投資家側のリテラシーが高まっていかない限り、おそらく同じことが起きるだろうと思います。つまり、世間的にシェアハウスは儲からないといわれ、やめた方がよいという人が増えた。しかし、またスマートデイズのような業者が現れ、スルガ銀行のような金融機関が資金をバックアップしたら、今回と同じくらいシェアハウスが売れてしまうということです。
――そんな簡単に売れますか?
小島 普通に考えると売れないと思いますよね。でも、売れますよ。それくらい投資家側のリテラシーは大きな課題です。実際、シェアハウスが問題視されていた当時も、すでにインターネット上では危ない、やめた方がいいとの声が集まっていました。情報は制限されることなく表に出ていたのです。
しかし、それでも後続組があとを絶たず、売れ続けました。「情報をとる」、「勉強する」、「過去の経験から学ぶ」、「バイアスなく情報を読む」といった取り組みで、自分自身のリテラシーを高めていかない限り、シェアハウスのような問題に巻き込まれる人も減りません。業界側の問題点がいったん洗い出された今こそ、もうひとつの問題である「投資家のリテラシー」を高めていくいいタイミングなのかなと思います。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。