経験から過去・現在・未来を語る「大家座談会」
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2018年12月30日(日)
ベテラン大家が失敗から得た不動産投資の教訓とは?第1回大家座談会
不動産投資を行うにあたっては、現場で起こっているリアルな声を聞くことも大切ではないでしょうか?そこで今回は、当サイトにて連載コラムを執筆している大家さん3人にお集まりいただきました。複数の物件を所有する方々ですが、良いことばかりが起こるとは限りません。大家さんには失敗も成功もつきものなのです。とはいえ、できれば失敗は避けたいもの。第1回は、それぞれの失敗談と失敗を防ぐためのポイントを語っていただきました。
中古物件は「必ず補修が発生する」と考える
これまでの大家業経験の中で、失敗したと感じたのはどんなことですか?
大長 細かなことを挙げればいくつもありますが、私にとって大きい失敗だったと思うことは二つあります。一つは、中古物件を買ったときに、補修や設備の交換が必要になることの想定が甘かったことです。最初に中古のアパートを買ったときの失敗で、認識不足でした。
加藤 設備の交換には数百万円のお金が必要になることもありますよね。
大長 そうなんです。私が買ったのは築25年ほどのアパートで、あらゆるものが交換時期でした。その費用を考えていなかったのです。例えば、各部屋の給湯器が古くなっていましたし、エアコンもフローリングも交換時期でした。建物そのものについても、外壁や外装の補修が必要で、想定以上のコストがかかったのです。
星野 中古物件はそういったコストを見越しておく必要がありますよね。加えて、物件によってはエレベーターがついている場合もありますし。
加藤 機械式の駐車場も修理や交換にお金がかかりそうですよね。
大長 全6室の小さめのアパートでよかったです(笑)。ただ、どんな物件であれ、中古物件を買う場合は補修や交換があるものだと考えておかないといけません。それが一つ目の失敗であり、反省点ですね。二つ目もオーナーになったばかりのときの失敗ですが、赤字物件を買ってしまいました。当時はまだサラリーマンで源泉徴収がありましたから、赤字物件を持つことによって還付金が受け取れると思ったのです。
星野 どんな物件を買ったのですか?
大長 ワンルームの区分マンションです。
加藤 それが後々、足を引っ張るわけですね。
大長 はい。赤字が出て還付を受けるというストーリー自体が間違いでした。物件一つか二つ分くらいの赤字であれば効果はあると思いますが、還付金の上限は決まっていますので、上限を超えたら単なる赤字です。還付金は増えませんし、そこからコツコツ不動産を増やしていく際にも赤字物件が足を引っ張るのです。
加藤 私も平成バブルが崩壊したときに赤字物件が増え、債務超過になったことがあります。そのせいで次の物件を買うための融資も受けられなくなりました。
大長 その当時はまだ会社員が投資できる物件が少なかったですからね。私が不動産投資を始めたきっかけは、会社に投資の営業電話がかかってきたことでした。その頃から年金不安を感じていましたし、自分でそれなりに勉強し、オーナーになろうと思ったのです。赤字物件で還付を受ける方法もそのときに知りました。
星野 最近は会社員で一棟建て物件を買う人もいますが、それも2000年に入ってからのことでしたね。
大長 はい。不動産投資は経験が増えるほど物件の良し悪しがわかるようになっていくものです。当時は未経験だったこともあり、安易に赤字物件を買ってしまいました。星野さんはどんな失敗がありますか?
星野 私は、赤字になるなど損が出たことはないですね。入居者に夜逃げされたり、滞納されたこともありませんし。
加藤 それはすごいですね。羨ましい(笑)。
星野 私、失敗しないんです(笑)。ただ、2008年にフルローンで物件を買ったとき、固定金利にしたのは失敗でした。そのときは長期的な金利上昇が心配だったのですが、結果としては変動金利が正解でした。
加藤 物件購入の融資はもともと固定金利が少ないですからね。長期で考えて固定を選びたくなる気持ちもわかります。私も固定で買っていた時期がありました。
星野 実際に失敗して思ったのですが、金利はなかなか上がらないですよね。あと、金額的な損ではないのですが、機会損失はあります。買おうかどうか躊躇している間に売れてしまい、失敗したと感じました。
大長 良い物件はすぐに売れますからね。
星野 そうですね。実は先日もワンルームの区分マンションを買ったのですが、そのときに、似たような物件がもう一つあるという情報をいただきました。機会損失の失敗を生かして、今回はすぐに二つ目も買いました。すぐに買う決断ができたという点では、失敗が生きたといえるかもしれません。
大長 わかります。失敗はない方が良いのでしょうけど、完全に避けるのは難しいですからね。
加藤 そうですね。私もたくさん失敗しています。殺人事件とその筋系のトラブルを除けばひと通り経験しましたし、そういう経験を講演などのネタにもしています。下手したら一発玉砕だった大きな失敗もありました。
星野 それは聞きたいですね(笑)。
融資のドタキャンで一撃6000万円の損失
加藤 簡単に説明すると、金融機関からの融資がドタキャンになり、違約金などで大きな損失が出たんです。
星野 物件購入の契約まで進んでいて、突然融資が下りなくなったのですか。
加藤 そうです。2億円弱の一棟建て物件で、融資承認が出て安心していたのですが、実行前にキャンセルになりました。しかも、あとで知ったことなのですが、重要事項説明や契約書も偽造されていたんです。
大長 それは、最近よく聞いたアノ件と似ていますね。
加藤 似ているというか同じなんです(笑)。私のトラブルは4年前で、当時は誰も偽造されていると信じてくれず、融資を受けるために私がやったと思われました。その後、銀行を相手に裁判をするのですが、最初は弁護士も信じてくれなかったほどです。結局、裁判では敗訴になり、6,000万円ほど損失が出ました。手付け金は戻ってきませんし、そのほかに、違約金、手数料、弁護士費用などがかかりました。
星野 払ったのですか。
加藤 払いました。ただ、何としても不動産は守りたかったんです。払わないと強制執行されるため、株、貴金属などを全部売り、子供の教育資金まで手をつけて6,000万円なんとかかき集めました。もう少し金額が大きかったらアウトでした。
大長 不動産投資家の中には、物件を所有していて資産はあるけど現金が少ないという人も多いので、そういうトラブルのときに困りますよね。
加藤 そうなんです。逆にいえば、不動産があれば手持ちの現金がゼロになってもキャッシュフローは出ます。だから不動産だけは残したかったんです。物件によっては、滞納や夜逃げでキャッシュフローが出なくなることもあるのですが(笑)。
大長 加藤さんの場合は物件数が多いので、滞納などが起きる可能性がどうしても高くなりますよね。
加藤 そうですね。あとは入居者の属性も関係していると思います。古い物件は家賃が安くなりますから、入居者の経済面から見てどうしても滞納リスクが大きくなります。
物件が増えたことで管理会社との関係が微妙に
滞納を未然に防ぐといった点では、管理会社との関係も重要になると思います。その点で失敗を防ぐポイントなどはありますか?
星野 私は過去に管理会社を変えたことがあります。リーシングが弱く、20部屋ある物件の3部屋がなかなか埋まらなかったことが理由でした。管理会社を変えたら、家賃を下げたりすることなく、すぐに入居者が決まりました。
加藤 中古物件の場合は管理会社も引き継ぎますが、良い管理会社ならいいものの、そうでなければ替えることも考えなければならないですよね。私の場合、他人の物件の請求書が届いたことがあり適当だな、と思ったことがあります。また、管理会社が潰れることもありますので、そうなると替えざるを得ません。新たに探すか、すでに付き合いあるところに頼むことになります。物件が近ければ頼めますが、遠い場合は難しくなりますよね。
星野 私の場合も、一棟目の管理を頼んでいた会社に二棟目の管理も頼むことにしました。分散してリスクを抑えるという点ではあまり良くないのかもしれませんが。
加藤 管理会社を分散すると連絡先が複数になるので手間が増えます。ただ、メリットもあります。複数の管理会社がいれば自然と競争原理が働きますし、万一どこかの管理会社が潰れたりした場合にカバーできます。大長さんは自分で管理しているんですよね。
大長 はい。管理会社の業務もさまざまで、例えば、客付けと家賃回収だけを行う会社があれば、掃除まで全部引き受ける会社もありますよね。審査は客付会社に頼んでいますが、掃除などは自分で手配できるので自分でやるようにしています。新築物件の場合は、何かあれば設計や施工の会社も飛んできてくれるので、そういう点でも管理会社に頼む必要性は低くなるかなと思います。時間が取りづらいサラリーマン大家さんや、地方に物件を持っている人の場合は難しいでしょうけど。
加藤 そうですね。私は会社員ですし、物件の場所がバラバラなので、自宅近くの物件も含めて全面委託です。掃除などはどのように手配しているのですか?
大長 役所のシルバー人材センターでお願いすることが多いですね。掃除といっても1回15分くらいで終わります。それで月2〜3,000円ですと掃除してくれる人にとってもちょっとした副収入になりますし、こちらとしても役所を通しているから安心感があります。
星野 私もシルバー人材センターに頼んでいる物件があります。以前、管理会社を辞めてシルバー人材センターに頼んだら、管理会社経由で来てくれていた人と同じ人が来たことがありました。ただ、料金が違います。シルバー人材センターに頼んだら、管理会社からとった見積もりの半分くらいに収まりました。
大長 私も物件の草刈りで管理会社から4万円の見積もりをもらったことがあります。シルバー人材センターだと8,000円で収まりました。コストメリットが大きいですよね。
加藤 私は草取りの面倒を避けたいと思って、防腐剤を撒いてコンクリートにした物件があります。雑草が伸びると近隣からのクレームにつながるので、失敗の予防という点から見ても、お金はかかりますが長期的にはその方が安心かなと。
大長 地域の緑化ルールなどがなければそれもいい方法ですよね。
星野 掃除はどれくらいのペースで頼んでいるのですか。私は基本的に週3回なのですが。
加藤 それは多い方ですね。私は月2回です。
星野 たまに共有スペースなどにゴミを置かれることがあるのです。割れ窓理論みたいなもので、それを放っておくとさらにゴミが増えます。それを阻止したくて回数を増やしています。最近はシルバー人材が不足しているようなので、頼めなくなってきたら管理会社にお願いすることになるのかもしれません。管理会社がきちんとやってくれるかどうかという問題もありますが。
大長 管理業務は不動産業者の中でも新人が担当することが多いですからね。売買など大きい金額が動くものはベテランがやり、契約業務などは中堅がやる。そういう構造になっているところが多いように感じます。
星野 大家と管理会社は不思議な関係ですよね。仲良くしたいのですが妙な緊張感がありますし。ビシッと言うときは言わないといけないし。
大長 そうですね。昔は物件数が少なかったので大家の方が強かったのですが、ここ20年くらいは賃貸物件が増えました。客付してもらわないといけないので、そういう需給バランスの問題で関係性が微妙になっているのもあると思います。
加藤 家賃保証会社との関係も同じですよね。物件数が増えると空室リスクは高くなります。だから大家としては家賃保証があると安心という話になります。実際には家賃保証が滞納して潰れることもあるわけですが。
大長 そうですね。家賃保証の仕組みは昔からありますが、保証会社は入れ替わりが激しく、今は新しい会社がほとんどです。使うのであればその点での選択が重要になりますよね。
加藤 使うなら、ですよね。そもそもの話として、入居者がきちんと入る物件ならサブリースする必要がありません。
大長 そうなんです。そう考えると、失敗を防ぐためのポイントは良い物件を選んで所有することだと言い換えることができます。
加藤 融資の審査が厳しくなったことで、ここから数年は市場にお買い得物件が増えていく可能性がありますよね。そういう物件なら比較的失敗しにくいと思います。
星野 そうですね。大家になって失敗するかどうかは、物件を買い、大家になったときにある程度決まるのかもしれません。だからこそ良い物件を見つけたいですね。
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著者紹介
不動産投資塾編集部不動産投資塾編集部
投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾新聞社」を介し、公平な情報をお送りいたします。