加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠
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2018年12月28日(金)
これまでに失敗してしまったスキームとこれからの思考法【一棟物編】
2000年代に入り、一介のしがない貧乏サラリーマンでも、土地を購入して、木造アパートを新築するシステムが出始めました。
私も、博多駅と名古屋駅のそばにいい土地が出たので購入。そして、アパートを新築しました。一時的ではありましたが、当時は外資系金融機関のノンリコース(不遡及型)ローンも活用できました。これは、責任限定型のもので、仮に、物件価格が下がっても、物件を放棄すれば残債は免れるというものです。この会社は一時、耐震偽装事件に巻き込まれましたが、何とか持ちこたえ、復活を遂げることができました。その後も、また名古屋駅そばにいい土地が出たので購入し、アパートを新築しました。
アベノミクスにより売り手市場に
2012年末からアベノミクスとなり、売り手市場へとなりました。2013年は、名古屋駅と永福町駅のそばに中古一棟アパート、京都駅の近くに中古一棟マンションを購入しました。そして、2015年は、小樽駅傍に、中古戸建(2世帯)を購入しました。さらに、2017年は、千葉駅に中古一棟アパートを購入しました。
この頃は、まずは、不動産会社・金融機関に、自分の情報(「源泉徴収票」・「確定申告書」・「財務諸表」)を開示し、いくらまでなら融資を受けられるか、また、どういった物件なら融資を受けられるかといったことをあらかじめ聞くようにしました。
その上で、自分の希望物件と合わせ、絞り込みました。その結果、絞り込んだ物件情報を各不動産会社・金融機関に連絡し、希望物件にマッチングした情報が出しだい、もらうようにしました。そして、優良物件が割安価格で出た場合には、すぐに決断して交渉に入ります。
売り手市場の頃は、それでも、1番手を取ることはできませんでした。しかし、個人属性や物件から、ある程度確度の高い内定が出ていることから、1番手を ひっくり返すことができたり、あるいは、1番手の融資が通らず、こちらに流れてきたこともありました。
金融機関が融資しやすい物件とは?
ところで、金融機関の融資受けしやすい物件というものは、ある程度、共通点があります。
地震や二次災害としての火災、津波・原子力発電所爆発などの自然災害といったリスクの高い埋立地・海岸傍・標高の低いエリアではないこと、旧耐震基準(1981年6月迄建築申請)の建物ではないことが大事です。
また、人口・世帯増のエリア、人口30万人以上のエリアであること、借地権でないこと、再建築不可・建蔽率・容積率オーバーでないこと、できれば木造でないこと、あとは区分所有マンションでないことや、シェアハウス・民泊でないこと、入居率が3分の2以上といった共通点があるようです。
優良物件を割安価格で入手するには
不動産は、金融商品や貴金属と違って、同じものは二つとありません。従って、価格は決まってはいません。さらには、株のような特殊情報を使ったインサイダー取引といった発想はありません。ですので、不動産に関しては、特殊情報を使うことで、優良物件を割安価格で購入することも可能なのです。
具体的には、資金繰りショートでの売り急ぎや決算期(3月末、9月末、6月末・12月末)、相続絡みの物件です。
特に相続は、10カ月以内間で分割・納税せざるを得ないこと、相続人が不動産に関心が低かったり、相続人が複数だと共有となり、面倒で売却につながりやすいことといったことがよくあります。私の場合も、ほとんどが相続絡みで手に入れた案件です。
名古屋駅の2棟目の物件については、町中の畑(60坪)を、叔母・甥のふたりで相続することになり、各自30坪づつの畑を相続しても使い道にも困っているようでした。
近所の方も、名古屋駅の住宅地の中に畑があって違和感を感じていたとのことでした。そこで、畑(実態:畑、地目:畑)を、地目を宅地にしてもらい、ある程度整地してもらった上で、おふたりからまとめて購入させていただくことにしました。
宅地化された土地が、ふたつまとめて60坪となり、アパート建設が可能となりました。近所の方も、畑がお洒落なデザイナーズアパートになり、喜んでくださっていました。
小樽駅傍戸建て(2世帯)
2015年、小樽駅傍に、中古戸建(2世帯)を現金購入しました。2世帯まとめて、御夫婦の方が借りて下さることとなりました。
御主人は御医者さんでクリニック経営、奥様は元保健所所長でデイケアサービス経営です。利回りは31%です。惜しむらくは、現金購入だったことです。金融機関としては、戸建てのような小口では手間暇がかかるので嫌がられるようです。
千葉駅傍築古一棟アパート
2017年には、千葉駅の近くにある築古一棟アパートを購入しました。築古の物件ですが、建物よりも土地を重視し、土地値で購入する感じで購入しました。
かなり古い建物の場合には、土地値から建物撤去費用を引いた値段で購入できる場合もあり得ます。数に限りのある実物資産で目減りしないのは土地であって、建物ではないのです。
それと同様の発想をしてくれる金融機関があり、考えがマッチングしました。建物の比率が低い分、減価償却対象分は少なくなりますが、築古で、耐用年数を超えていると、最短で4年間(木造の耐用年数22年間×0.2=約4年間)で費用処理できますので、早期に節税メリットを享受したい場合には好都合です。
今後のスキーム
例の「事件」によって、現在、1990年平成バブル崩壊の原因となった総量規制、通称「不動産融資禁止令」が施行された頃に近い状況になりつつあるようです。特に、不動産経営のスキル・ノウハウや実績のない方は、リスクが高いと思われているのか、融資は厳しいようです。
さらに、低収入で自己資本も少なく、自己資金をあまり出せない方は、なおさら厳しいようです。逆に言えば、不動産経営のスキルや実績があり、返済実績もある方が有利になるのではないでしょうか。さらに、高収入で、自己資本も多く、自己資金を出せる方は有利となるでしょう。
属性のいい人が、優良物件を割安価格で購入したり、共同担保を提供できる場合には、フリーローン(物件価格=ローン)やオーバーローン(物件価格+諸経費=ローン)も可能でした。
以前は、自己資金は、標準で1割でしたが、昨今は、2割、3割と増えているようです。しかし、逆に言えば、ライバルが減るわけですから、属性が良く、金融機関との関係が強く、いい融資を引っ張れる人、現金を多く持っている人たちは、バーゲン価格で購入できるのではないでしょうか。また、仮に1番手を取れなくても、1番手が融資が通らず、回ってくる場合も多いのではないでしょうか。
人間、不景気でも、住む場所は必要ですから、家賃はそうは下がらないのに、不動産融資禁止令によって物件価格のみが下がっていけば、利回り(年間家賃÷物件価格)はアップしていきます。
さらには、不景気で資金需要がなく金利も下がっていけば、イールドギャップ(運用利回り-調達金利)、キャッシュフロー(受取現預金-支払現預金)も出てきます。
不景気なら不景気なりに、資金調達には苦労しますが、優良物件を割安なバーゲン価格で購入することも可能になってきます。思い返せば、極端だったのは、1990年、平成のバブル崩壊後でした。
不動産融資禁止令が出て、不動産はその名の通り、ほとんど流通しなくなりました。不動産など誰も見向きもしません。本もセミナーもありません。競売物件、任意売却(任売)物件など、利回り20%以上の物件がゴロゴロしていました。
この頃、遠い将来を見据えて、勇気を振り絞って資金調達を付けたり、最悪、現金購入したりして、その後成功した人達が、今、有名になっている方達です。(私の場合は、早過ぎて、バブル崩壊の痛手も被り、危うく自己破産・一発玉砕・再起不能の一歩手前まで行きました。しかし、お陰様で何とか首の皮一枚で繋がり、未だに生き延びています)。
その後も、耐震偽装事件や不自然死・首吊り自殺・練炭自殺、悪徳金融機関・不動産会社トラブル(悪徳金融機関による融資承認・金銭消費貸借契約締結後の融資実行前日のドタキャンによる違約金・仲介手数料6千万円損失)など、一歩間違えば、自己破産・一発玉砕・再起不能になりかねなかったトラブルに遭遇しながらも、なんとか、未だに生き延びております。
今後の不動産経営はどうなる?
日本は、総じて言えば、1990年平成バブル崩壊後、人口減・少子高齢化・財政破綻もあって、ずっと不景気の下り坂です。家賃・物件価格は下がり続けていくものと思われます。方や、増税の嵐です。
借入金返済による支払金利減少(元本返済分増加)、減価償却費減少等節税効果も減少していきます。
日本の不動産経営は、そもそもが、右肩下がりのビジネスモデルなのかもしれません。日本では、下りのエスカレータを一生懸命に駆け上っているようなものではないでしょうか。かなりのスピードであれば、上まで到達できるかもしれません。ある程度駆け上って、やっと現状維持。スピードが間に合わなければ、下に落ちていきます。
勇気を振り絞って、隣の上りのエスカレーター(外国)に飛び移ること可能ですが、ケガをするかもしれません。
また、日本の債務が1,200兆円であることを考えれば、経費削減や収入(税金)増加も限界がある以上、紙幣・国債を増刷して貨幣価値を下落させ、借金の実質負担を目減りさせるインフレ政策しかないものと思われます。
国債を売りやすくするためには、金利を上げざるをえないので、目先、金利上昇があるかもしれません。不景気の金利上昇で、スタグフレーションです。最悪の場合でも、ローン返済額は、通常は、5年間25%増迄となっていますので、それをしのげれば、安全ではあります。
あとは、インフレとなれば、後追いではありますが、家賃・給料・物件価格も上がり、借金の実質負担は減ってきます。
その意味では、借入金を活用して、数に限りのある実物資産(不動産、特に立地のいいエリアの土地)を所有しておけばいいこととなります。
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著者紹介
加藤 隆加藤 隆
サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。