加藤隆が実際に体験した不動産投資の罠
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2018年12月21日(金)
これまでに失敗してしまったスキームとこれからの思考法【区分所有マンション編】
私は、1986年(28歳)から不動産経営を始め、32年間にわたって続けてきました。それぞれの時代背景に合わせて行ってきましたが、総じていえば、まずは、リスクの低いやり方から始め、徐々にリスクも負いながら、やがてはリスクを分散させる、という手法を取ってきました。エリアの観点からいえば、東京から始め、やがて地方に進出していきました。
物件については、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造りや鉄筋コンクリート(RC)造り、または鉄骨(S)造りや木造といった、さまざまな構造のものを所有しています。また、区分所有マンションから始めて、一棟物アパートや一棟物マンション・戸建てと、拡大させていきました。物件のタイプも、単身者用から、ファミリー用まで網羅していきました。
昔の不動産経営とワンルームマンションの台頭
ところで、不動産経営とは、昔は地主が空き地にアパートを建てて行うものと相場が決まっていました。もしくは、大家さんの家の空いた一間を間借りし、バス・トイレ・洗面所は共同利用、場合によっては銭湯を利用させるといったパターンでした。
1980年代に入り、バス・トイレ・洗面所一体型のコンパクトなワンルームマンションが「リーステム」というシステムの名のもとに流行りました。当時は、シティホテル感覚で人気を博したものです。
この頃、しがない一介のサラリーマンでも、マンションのオーナーになれるシステムと仕組みができたのです。ただし、当時は日本もまだ景気が良く、資金需要もあって調達金利も高かったため、家賃のみでローンを返すといった発想はありませんでした。毎月、持ち出し数万円です。それでも、ローンはどんどん減っていくので、貯金感覚でした。やがて、ローン返済が終われば、家賃収入が年金の代わりにもなります。何より、当時は家賃や物件価格も上がっていきました。
その後、1990年に「総量規制」、通称「不動産融資禁止令」が出ることで、平成バブルは崩壊、物件価格は大暴落します。多くの不動産会社と不動産経営者は、倒産や自己破産、行方不明になってしまいました。
先の、「リーステム」のシステムを構築したM社も倒産しました。「不動産冬の時代」どころか、「不動産氷河期」の時代到来です。当時は不動産経営の本もセミナーもほとんどありません。街には、利回り20%以上の競売物件・任意売却物件も溢れますが、誰も見向きもしません。
しかし、どんな不景気になっても、人間、住むところは必要ですので、家賃はさほど下がりませんでした。一方で、家賃が下がらないのに物件価格だけが下がっていき、さらに、不景気で資金需要もなく金利も下がっていきました。
すると、利回り(年間家賃÷物件価格)、イールドギャップ(運用利回り-調達金利)、キャッシュフロー(受取現預金-支払現預金)が取れるようになっていきました。
築古狭小ワンルームマンションの悲劇
そんな中、私は札幌の築古狭小ワンルームマンションを購入しました。東京以外の地方では、不動産経営用物件専門会社が札幌にあったのです。当初は、うまく回っていましたが、その後、札幌内での物件が増えていき、供給過剰になっていきました。
ちなみに、当時の都内の不動産賃貸においては、敷金2カ月・礼金2カ月・前払い家賃1カ月・仲介手数料1カ月、合計6カ月、さらに、更新料2カ月というのが定番でしたが、札幌では、もともと、礼金・更新料という考え方がなかったようです。
賃貸管理会社から、「更新料は半月でいいですか?」と聞かれて、もらえるものと思っていたら、実は、入居者からはもらえず、所有者が賃貸管理会社に支払う手数料だったということがありました。
おまけに、その後、「広告料」なる悪習が始まったのです。本来は、宅地建物取引業法(宅建業法)上は、名目のいかんにかかわらず、仲介手数料は、賃借人・賃貸人双方合わせても1カ月が上限となっています。「広告料」なるものは、脱法行為なのです。しかし、事実上、蔓延していきました。
私の記憶によれば、おそらく、この頃の札幌が「広告料」の発祥かと思います。やがて、この「広告料」なる悪習は、全国に蔓延していきました。一方、需給関係が悪化し、家賃・物件価格については、値下げ競争が始まりました。管理組合・建物管理会社の取り分となる管理費・修繕積立金を除いた手取り家賃が、たった1万円といった事態も発生しました。さらには、配管からの水漏れ、エアコンや給湯器の故障などが多発します。
また、家賃が安い分、入居者の属性も低く、近隣トラブルや家賃、光熱費滞納、夜逃げ、自殺なども日常茶飯事です。そして、退去のたびに、床・壁張替えなどのリフォームが必要です。
地方では、家賃は安くても、リフォーム費用は一緒です。むしろ、競争が少ない分、割高かもしれません。そのリフォーム費用を回収するには、気が遠くなるほどの年月を要します。今では、札幌築古狭小ワンルームマンションは、ボランティアという気持ちでやっております。
自己居住用ローンを活用したファミリーマンションを購入
1990年代には、自己居住用のファミリーマンションを購入しました。低金利・無担保の社内融資も活用しました。社内融資は、低金利・無担保ですが、退職時には一括返済となるため、弱みを握られることにはなります。
別の物件(新宿駅傍の区分所有マンション)を購入する際には、一時的に共同担保にし、いい融資を引っ張れたことはありました。その後、もっと低金利の外資系金融機関から借換し、共同担保も解消しておきました。
その後は、妻の両親と同居となり、この物件は賃貸に出しております。ちなみに、金融機関に事情は話し、住宅ローンはそのまま継続してもらっています。
契約書上は、自己居住でなくなった場合には一括返済となっている場合が多いようですが、転勤や親との同居など、しかるべき理由があり、かつ、きちんと返済していれば、通常は継続に問題はないようです。
自己居住用ローンは、政策上の理由もあり、借りやすく、長期間・固定金利・低金利ですので、活用した方がいいと思います。
札幌の築浅マンションでキャッシュフロー改善
札幌の築古狭小ワンルームマンションで懲りたので、その後は、築浅で広めのマンションを購入することにしました。そして、なるべく低金利で資金調達したり、現金購入ししながら、全体のキャッシュフローを改善させていったのです。
このおかげもあって、その後、大規模な融資を受けられるような状態にまで復活させることができました。
区分所有マンションについては、小口で低価格なため買いやすく、リスク分散も図りやすいと思います。また、管理組合制度があるため、信頼できる管理組合、もしくは建物管理会社であれば、管理は安心ですし、修繕積立金制度もあります。
しかし、手間暇がかかり、スピードが遅い点は否めませんでした。また、先々のことではありますが、建物の建て直しについては、区分所有マンション所有者の8割以上の同意が必要など、容易ではありません。
私はその後、区分所有マンションから、一棟アパートや一棟マンション、戸建など、「一棟物」を購入しはじめました。次回は、この「一棟物」について説明していきたいと思います。
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著者紹介
加藤 隆加藤 隆
サラリーマンのままで、経済的・時間的・精神的自由を目標に、預貯金・外国為替・貴金属・株等の資産運用を経て、不動産経営歴31年。数々の失敗・バブル崩壊を生き抜き、リスク分散をモットーに、東京・博多・札幌・名古屋・京都・小樽・千葉に、区分所有マンション・一棟物アパート・一棟物マンション・戸建等、物件108戸を運営。総資産7億円・借入5億円・自己資本2億円、年間家賃収入4,100百万円・借入金返済3,100万円・キャッシュフロー1,600万円。節税で、所得税・住民税ゼロ。