石川貴康の超合理的不動産投資術
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2018年12月25日(火)
家賃収入の手取りを計算する方法
家賃収入から必要経費を引いた不動産所得をベースに考える
不動産投資で家賃収入を得ても、その収入のすべてが手取りになるわけではありません。さまざまな経費がかかりますし、収入に応じて税金を支払う必要があるからです。ここでは、必要経費の種類や不動産所得にかかる所得税の計算方法をご紹介します。最終的に得られる、手取り収入を算出する参考にしてください。
最終的に手元に残る手取りを割り出すには、「不動産所得」をベースに考えることが基本です。
家賃収入 - 必要経費 = 不動産所得
不動産所得から税金を引く
しかし、これがそのまま手取りになるわけではありません。税金がかかるからです。この場合の税金は個人の場合、所得税+住民税になります。税金は不動産所得にかかるので、手取りは、
不動産所得 - (所得税+住民税) =手取り①
となります。
借入金返済を引いて本当の手取りに到達する
残念ながら、本当の手取り(手取り②)は、さらに手取り①から借入金返済、いわゆるローンの返済支払いを引いた後になります。
手取り① - 借入金返済 = 手取り②(本当の手取り)
借入金の返済は経費ではありません。しかし、手取りを減らす資金流出になります。
必要経費の種類には何があるのか
不動産所得を計算するために、家賃収入から控除できる必要経費について解説しましょう。
まず、利息返済があります。借入金の返済は経費ではありませんが、支払利息は経費になります。
次に、損害保険料です。損害保険は、火災、水災、風災などの災害、事故による建物の破損などを保障してくれます。損害保険には地震保険というものもあり、地震による損害を補償してくれます。
他に、修繕費や消耗品費、共用部分の水道光熱費、不動産管理会社に支払う管理委託費、清掃費などがあります。特殊な例では、不動産会社に入居促進のために支払う広告費、建物に設置しておく消火器などの備品費も経費になります。
また、帳簿をつけたり確定申告の税金計算をしたりするためのパソコンも、器具備品費として計上できます。また、ソフトウェアなどの事務用品費も経費です。
もし、自分の不動産が建っている土地が借地であれば地代がかかります。不動産を持っていれば固定資産税・都市計画税がかかります。こうした地代、固定資産税・都市計画税も経費として家賃収入から控除されます。
現金の流出はないが経費になる特殊な経費:減価償却費
特殊な経費として、減価償却費というものがあります。減価償却費は、建物や設備などが長年使えるため、使える期間(耐用年数)に渡って経費に計上できるというものです。
減価償却費は、減価償却する資産購入時にすでに現金で支払っていて、その後はその資産が徐々に費用化したと考えるため、現金が流出しないのです。現金は流出しないですが、経費に認めるというもので、家賃収入から控除できるのです。ただ、今回は話が複雑になるため、減価償却費の手取りへの影響は今回無視します。
不動産所得から所得控除を引いて課税所得が算出される
さて、こうした経費をすべて合計して家賃収入から引いて算出されたものが不動産所得になります。この不動産所得に即税金がかかるかというと、そうではありません。所得控除という優遇策があるのです。
皆さんも、医療費控除や扶養控除、生命保険料控除、寄付金控除といった名称は聞いたことがあると思います。こういった控除を差し引いた結果が課税所得となります。
不動産所得 - 所得控除 = 課税所得
不動産所得にかかる所得税は「課税所得」×「所得税率」で決まる
所得税は、課税所得に所得税率をかけて計算します。日本は累進課税の国で、課税所得額が変われば税率が変わるという国です。所得が多ければ税率が上がり、所得が低ければ税率が下がります。
所得税率の早見表
国税庁のHPにある所得税率の早見表を引用してみましょう。
【国税局HP】所得税の税率
ここにあるように、所得額によって税率が変わるというのがわかるでしょう。
不動産所得に対する所得税の計算例
まず、不動産所得しかない場合を考えみましょう。ワンルームマンションを1戸持っていたとします。家賃収入は月7万円、1年で84万円としましょう。経費は各種かかって10%で、年8万円とします。また、特殊な経費である減価償却費は年5万円としましょう。
そうすると、
家賃収入84万円-経費(8万円+5万円)=不動産所得71万円
となります。給与所得などがなく、この71万円しか所得がないとすると、この所得に税金がかかるのです。しかし、所得税では基礎控除という控除が必ず38万円あるので、
不動産所得71万円-基礎控除38万円=課税所得33万円
が課税所得となります。33万円の課税所得に対する所得税率は5%ですので、この場合の所得税は、
33万円*5%=1万6500円(所得税)
となります。
不動産所得に対する住民税の計算例
住民税は、
•所得割:収入×10%(都道府県税4%・市町村税6%(一部例外あり))
•均等割:都道府県税¥1000~2000・市町村税¥3000~4000
で決まっています。
東京都民の場合は、所得割10%、均等割り5000円です。
住民税の基礎控除は33万円ですので、この場合の課税所得は
不動産所得71万円-基礎控除33万円=課税所得38万円
です。課税所得に所得割10%、均等割り5000円を足して、以下の金額が住民税になります。
課税所得38万円*10%=3万8000円+5000円=1万3000円(住民税)
さて、これで合計がわかります。今回の例での手取り
不動産所得 - (所得税+住民税) =手取り①
84万円 - (1万6500円+1万3000円) =81万5000円
現金で不動産購入していれば借入金返済はないのでこの「81万5000円」が手取りになります。借入金返済があれば、その返済額を引いた金額が本当の手取りです。仮に毎月5万円、年60万円返済していれば、
手取り① - 借入金返済 = 手取り②(本当の手取り)
81万5000円 - 60万円 = 21万5千円
給与所得がある場合は不動産所得との合計で算出
話を簡単にするために、不動産所得しかない例で話してきましたが、こんどはサラリーマンとして給与収入があるとしましょう。その際は、以下のような計算式になります。
・{(給与所得 – 給与所得控除 )+ 不動産所得}-所得控除= 課税所得
となり、
・課税所得 × 所得税率 = 所得税の金額
・課税所得 × 住民税所得割+均等割り = 住民税の金額
仮に年収400万円の給与があり、不動産は上記の例を同じとしましょう。給所得には給与所得控除があり、以下の計算になります。
400万であれば、20%+54万円の給与所得控除があります。
(給与所得 – 給与所得控除 )+ 不動産所得-所得控除= 課税所得
400万円– (400万円*20%+54万円)+71万円-38万円=299万円
(所得税の課税所得)
400万円– (400万円*20%+54万円)+71万円-33万円=304万円
(住民税の課税所得)
・課税所得 × 所得税率 = 所得税の金額
299万円*10%-97,500(給与所得控除)=17万1700円
・課税所得 × 住民税所得割+均等割り = 住民税の金額
304万円*10%+5000円=30万9000円
給与所得+不動産所得- (所得税+住民税) =手取り①
400万円+84万円 -(17万1700円+30万9000円)=435万9300円
先の例では借入金の返済が60万円あったので、
手取り① - 借入金返済 = 手取り②(本当の手取り)
435万9300円 - 60万円 = 375万9300円
となります。
家賃収入と消費税の関係
ちなみに、居住用の不動産の家賃収入には消費税はかかりません。消費税が課税されるのは、店舗・事務所などの事業用の不動産の家賃収入のみです。
まとめ
いかがでしたでしょう。結構複雑ですね。
手取りを計算する場合、家賃収入から必要経費を差し引いて算出した不動産所得をベースに、そこから所得控除を引いた課税所得に税率をかけて所得税・住民税を計算します。
上記で紹介した所得税・住民税の計算方法を参考にしながら、税金を計算して、手取り収入を導き出しましょう。その際、借入金返済がある場合は、その返済額を引いた後が、本当の手取りです。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など