石川貴康の超合理的不動産投資術
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2019年8月20日(火)
不動産投資のリターンを何に使っているのか?何に使うのか?
考え方は人それぞれだが、私は不動産投資は“保険”だと思っている
皆さんも、いろいろな動機で不動産投資を始めたでしょう。儲けたい、副収入が欲しい、富裕層になりたい、サラリーマンをリタイアしたい、など、それこそ人それぞれだと思います。
私の動機は単純です。不動産投資は確実な保険になると考えて開始しました。いくつかの場所で触れていますが、2000年になってすぐのことです。私は激務のコンサルタントで、それなりに稼いでいましたが、過労で倒れたのです。
プロジェクトを外れ、病欠して2週間が経ちました。一向に体調が良くならないまま、ぼんやりと考えていました。「いくら高収入でも、私が働けなくなったら終わりだな」と。外資のコンサルティング会社ですから解雇もあり得ます。
自分が働けなくなったら、家族を路頭に迷わすことになると思った私は、私が倒れていても家族に収入がもたらされる方法はないかと考えました。そして、答えは投資、なかでも不動産投資が該当すると思い至ったのでした。
私は、コンサルティング会社に勤める前は会計事務所にいて、富裕層が不動産をたくさん持っていることも知っていました。彼らは大金を稼ぐ一方で、収入の一部を不動産に変えて、資産として保有していたのです。減価償却や支払利息で節税しながら不動産収入を得ることで、収入が落ちても大丈夫なようにしていたのです。
私の顧問先だった芸能人で、大金を稼いでいる人もそうしていました。稼げるうちに稼いで、そのお金を浪費せず、不動産に変えていたのです。仮に、彼に仕事がなくなっても十分暮らせる規模の不動産を持っていました。その方は今も超売れっ子で、結局は一生不動産収入に頼らずとも暮らしていける感じですが、それは結果論。先のことは誰にもわからないので、リスクヘッジとして不動産を買っていたのです。
こうした実例を目の当たりにしていたこともあり、私も不動産投資をしていくことにしました。ボーナスは手を付けず、年俸のすべてを使い切らず、不動産を買っていきました。
「サラリーマンは自宅を買うな」で伝えたかったこと
当時も今も、自宅は賃貸で、賃貸暮らしを続けながら不動産投資をしています。なぜ、不動産投資をしながら自宅は賃貸なのか、という問いを当時いろんな人にされました。その答えは「サラリーマンは自宅を買うな」(東洋経済新報社)に書いたのですが、かいつまんで言うと、オプションとリスクヘッジなのです。
本自体はヒットし、6刷りの増刷を重ねています。しかし、リスクとオプションの考え方はうまく伝わらず、なぜ、自宅購入のリスクを上げているのに、同じ不動産リスクがある不動産投資を勧めるのか、矛盾じゃないかとの書評をいただきました。勧めているわけではなく、私がやってきたことを伝えているだけなのですが、意外と伝わらないものだ、と今でも思っています。
今も私は賃貸です。賃貸なら、自分に何かあってもダウンサイズして安い家賃の物件に引っ越すというオプションが取れます。ローンで自宅を巻き上げられたり、差し押さえを食らったりするリスクはありません。
一方、自宅を購入するとローンを自分で支払う羽目になり、最悪時には自宅を失います。残債があれば、賃貸生活も苦しくなるし、最悪自己破産の可能性もある。だから、自分が住む自宅はリスク発現時に引っ越しというオプションが取れるよう賃貸にし、投資物件は私が倒れても収入を生み続ける物件を選び、自分がローン支払いを被るリスクを減らす資産として投資しているのです。
不動産そのものという表面的な物体ではなく、その裏に隠れているリスクとオプションの違いを語っていたのですが、背後に隠れる論理構造やメタ的構造の認識ができない限り、その辺は伝わらないのかもしれませんね。これを明らかにしながら伝えることもありでしょうが、それでは無味乾燥とした内容になりますしね。
また、題名が「サラリーマンは自宅を買うな」なので、ストレートにとらえたのでしょう。「それなのに、不動産投資が良いとかおかしい」と。実は、題名は出版社が販売戦略上の意図を持って付けるのです。結果、それなりに当たったようですが、私が書いている意図とちょっとずれているのです。さらに言うと、自宅を買うことを否定していない項もあったのですが、全体の構成上カットされたのでした。私は、キャッシュで自宅を買うなら、自宅は持っていた方が家族の成長と思い出にはとても良いと思っています。
長くなりましたが、とにかく私は、今も不動産収入には手を付けず、その資金は不動産購入に充てて、際限のないリスクヘッジを積み上げようとしています。もちろん、日本国が滅んだり、大暴落が起きたりしたら、仕方ないことも起きるでしょうね。その時は、私は愛する日本と運命を共にするつもりですが、家族は生き延びることができるようにしたいと思っています。
リタイアなんてもったいない、好きな仕事をするための保険でしかない
石川啄木の詩に、以下のようなものがあります。
「心して われに働く仕事あれ それをしとげて 死なんと思う」
私は24歳の時に今の仕事を選びました。一生の仕事にしようと思ったのです。「好き」で「得意」なことを選んだのです。私の仕事は組織に属さなくてもできる仕事ですので、30代の最後の年に独立しました。今も第一線で仕事をしています。
不動産投資は私にとっては、先に挙げたように家族を路頭に迷わせないようにする保険でした。その保険があるからこそ、躊躇なく独立もできたのです。不動産があれば少々収入が低い年があっても乗り越えられると思ったのです。
本業が大好きな私には、不動産は保険でしかなく、不動産投資でリタイアなんてありえません。仕事が好きですから、やめる理由がありません。
よく、給料は我慢代だとか、嫌な思いをするから貰えるんだという人がいますが、私はその言葉を聞くと、寂しい気持ちになります。仕事は、不平不満だらけの苦行ではないと思います。自分の人生の時間のかなりの部分を投入するので、成長し、楽しまなければ大損です。
もちろん、そう簡単に好きな仕事などできないし、それなりの苦労はあります。なかなか思い通りの仕事につけないとか、不安定さに不安を抱える人もいるでしょう。
でも、できれば仕事をしてこの人生は良かったなあ、と言いたいじゃないですか。人生はこの一回きりなのです。好きな仕事をするためにも、不動産投資をして、収入を積み上げ、その好きな仕事をするための“保険”にすべきなのです。私はそうしました。
組織や他人に収入を依存すると、自由度がなくなります。不動産は保険にして、好きな仕事を選べるようにしましょう。私は仕事にストレスはありません。常にチャレンジのプレッシャーはあるものの、それはプロとしての当然の十字架です。そのプレッシャーに耐えて出した結果で、クライントの会社が良くなれば、こんなうれしいことはないのです。
リタイアなんてもったいない。不動産は、好きな仕事をするための保険。保険を掛ければ好きなことができます。リタイアしてぶらぶらすることだってできます。
でも、一生を大家業といった自分でなくてもできる仕事に費やすのではもったいない。さあ、不動産を保険にして好きな仕事に邁進しましょう。「心して われに働く仕事あれ それをしとげて 死なんと思う」、です。
資産にお金を生ませて、不動産投資⇒不動産で雪だるま式に資産を増やす
不動産投資は保険との考えなので、保険金が事故・病気の時しか発動しないように、不動産収入を生活資金や贅沢に充てることはしません。不動産投資のリターンはすべて、次の投資に使います。
そう、不動産投資の収入は、次の不動産投資の自己資金として投入するのです。そうすることで、まさに資産に資産を生ませるという状況が生まれます。私が毎年最低でも一棟の物件が買えるのも、不動産収入に手を付けないからです。雪だるま式に不動産を買っていこうと思っているのです。
金融資産⇒不動産投資ではスピードが遅い、不動産投資⇒金融資産に
以前、共著「不動産投資×証券投資」(東洋経済新報社)という本で、インデックス投資を進めていた共著者に配慮して、インデックスで自己資金を貯め、そのお金で不動産投資をしようと書きました。ある意味、種銭を作るという意味で正しいのですが、一度種銭がたまり、不動産収入ができたら、金融投資にお金を投じる前に、集中的に不動産投資を増やしていくべきだと思います。
不動産投資は信用が重要な要素になります。信用さえつけば、レバレッジを利かせて不動産を買い増ししていけます。
しかし、金融投資、特に株や預貯金、投資信託はなかなか貯まりませんし、金融機関は金融投資にローンを貸してくれません。レバレッジが利かず、自己資金になるので、増えるのが遅いのです。また、信用という点でも、金融資産はさほど強めには見てくれません。せいぜい、借主としての属性がちょっと良くなるだけです。
金融機関にとっては、金融資産は破たん時の回収資金になる程度で、信用の構築に大きく影響しません。もちろん、大事な項目ではありますが、ある程度の規模になると関係なくなります。実際、私は不動産投資でローンを組む際、金融資産をチェックされません。
大した信用にもならない上に、レバレッジを利かせた不動産の資産増加のスピードに比べ、金融資産の増加スピードは遅いのです。限られた自己資金で投資することになるからです。
しかも、額が大きくなるまでの金融資産からのリターンもたいしたことがありません。(もちろん、それなりの額になれば、別ですが)
金融資産⇒不動産投資ではスピードが遅いのですが、逆に、不動産投資⇒金融資産ならスピードが速い。今私は、投資信託などの積立投資を30本くらいやっています。毎月30万円超の金融投資をコツコツできているのも、不動産収入の一部を回すことができるからです。働いて稼いだ自己資金だけでは、こんなに投資できなかったでしょう。
自分の仕事の収入“だけ”では、なかなか難しいのですが、不動産投資の収入を一部回すことで、金融資産もどんどん増やしていけるのです。不動産という資産に不動産と金融を買わせているのです。これも、資産に資産を生ませる方法です。
お金を貯める力は重要です。しかし、スピードを上げたいなら、不動産投資を最初にすることが良いというのが、私の経験上の結論です。
今回は、私は不動産投資のリターンである収入を何に使っているのかというテーマでした。私の場合は、生活費などに使ったりせずに、不動産投資と金融投資に使っているのでした。
結果的に、不動産収入があるから、好きな仕事に邁進できています。なにかあった時の保険である不動産をさらに増やし、余裕ができてきたので金融資産にも資金を回し始めています。不動産という資産にさらに資産を生ませることで、自由に生きていけるよう、家族が路頭に迷わないよう、老後も快適に暮らせるように準備しています。
蛇足ですが、最近故郷のベンチャーに対するエンジェル投資も始めました。コミュニティづくりも始めました。リターンは望んでいませんが、故郷が元気で、活性化するような事業に資金を提供し始めたのです。自分や家族だけでなく、地域への貢献も少しずつ始めています。こうした余裕が生まれるのも、不動産投資の良いところです。世の中を良くするためにも、儲けて、お金を回していきましょう。
贅沢なんてたかが知れていますし、もともと物欲が薄いので、モノを買ってもうれしくありません。自分の好きなことや世の中の役に立つことにお金を使った方が満足度が高い。
こうした点は、贅沢に慣れていない日本人の典型なのかもしれません。浪費せず、贅沢も味わう間もなく、最後にお金はみんなに渡って消えていくのでしょうね。どこまでも地道に稼いでいくことに美意識を感じるのは先祖からの教えのせいでしょうかね。まだまだ、ストイックにやっていきます。
さて、不動産投資が中心の私のコラムですが、せっかく金融投資に触れたので、私がどんな投資をしているのか、次回ご紹介しましょう。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など