石川貴康の超合理的不動産投資術
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2018年12月17日(月)
大学の傍の物件はレッドオーシャン!?家賃が下落しがちな理由とは
不動産投資はロケーション、大学の傍は入居が堅いと思ったが・・・
私の場合、不動産投資ではロケーションを大事にします。不動産は動かせないからこそ不動産と呼ばれるのであり、一度建築したら最後、その土地で運用しなければなりません。
ですから、“はずれ”を引かないように、私自身に土地勘があり、入居が途切れないだろうと予想されるロケーションの物件を買うようにしてきました。都内であれば駅近で生活がしやすく、かつ都心のターミナル駅に短時間で出ることができる場所。地方なら買い物が便利で、学校、病院などが近い場所で駐車場が十分確保できる場所です。
ターミナル駅に近いというのは、会社や学校の通勤や通学に便利であるという基準でもあります。地方については、居住地の近くに会社や学校があることが選択基準です。いずれにせよ、そこに住む需要がある場所を買ってきたつもりでした。
そのような選択基準から、地方の大学の傍にある物件を買うこともありました。ひとつは国立大学、もうひとつは私立大学です。学生がいるので需要は堅いだろうと踏んだのでした。
最初に買ったのは、地方の国立大学の、すぐ目の前のアパートです。道路を挟んで目の前が大学といったロケーション。まさに数十秒で大学に行ける距離です。法定償却期間の過ぎた木造の古いアパートではありますが、リフォームされていて、バス・トイレ別、キッチンが3畳、部屋が6畳、日当たり良好な物件です。
全4戸で、残念ながら駐車場は1台分だけ、しかし、近隣には駐車場も多く、借りるには問題がない場所でした。
購入当初は満室でしたが、徐々に陰りが出て、今は常時空室1室くらいになりました。家賃もだいぶ下落してきましたし、一度空くと次がなかなか決まりません。2005年に購入したため、今の相場よりも安く買えているので何とかなっている感じです。当初は結構な手残りがありましたが、10年以上たって、今では手残りは当初の半分、それほど儲かりません。
古いアパートのため、入居率を上げるためにもっと追加投資しようと思うものの、管理会社からは「古いので、追加投資するよりは建て替えた方がよいのでは?」とのアドバイスされる状態。さて、どうしたものか、思案中です。
このアパートは、古かったため融資があまりつかず、自己資金7割、融資3割で購入しました。そのため、ローン返済が少なく、キャッシュフローとしては回っているのでなんとかなっている状況です。
次に大学の傍に買ったのは2014年。こちらは地方の私立大学です。1K6戸、キッチンは6畳ほどで、居室6畳とけっこう広め。内装はきれいにリフォームされており、今風のキッチンでした。
ただし、こちらも駐車場は1台のみでしたが、先のアパートと同様に、駐車場は近隣で借りやすい地域にあります。そして、大学は目と鼻の先、3分くらいです。駅と大学の中間にあり、駅も3分くらいの好立地。
そう思って買ったのですが、こちらも常時1室は空室。家賃も下落傾向。手残りはぎりぎり、持ち出しになるかならないかの状況で、経営的には苦しい物件になりました。
不動産投資が一般化し、地方物件も値上がりしている状況で購入したので、利回り的にもさほど良くありません。しかもフルローンのため、ローン返済が大きく、キャッシュフローがあまり出ないといった状況です。そろそろ出口を考えるべきか検討中といったところです。
実際に大学近くの物件を買って起きていること:入退去サイクルに疲弊
さて、目論見が外れた大学近くの物件ですが、どんなことが起きているか考えてみましょう。
まず、さほど手残りがないのですが、その主要因の一つが入退去サイクルの早さです。当たり前といえば当たり前ですが、大学生は最長でも4年で退去するのです。
そうすると4年ごとにリフォームが発生します。それなりの広さで結構な費用が出ていくのですが、家賃が下落傾向で、負担がどんどん増えていきます。痛い出費、キャッシュアウトが必ず生まれて、儲けを削っていきます。
学生相手でなければ、最近は一旦入居すると長く住んでくれる傾向があります。私が所有する他の物件では、かなりの方が10年以上入居されています。長く住んでくれるほどリフォーム代はかからないので、短サイクルで人が入れ替わる大学の傍の物件は予想に反して収益性が悪くなっています。
実際に大学近くの物件を買って起きていること:レッドオーシャン化
また、大学の傍は家賃下落が激しいです。周りには学生目当てのアパートがたくさんあり、まさに血みどろの戦い、レッドオーシャン化しています。
多くの投資家・大家が、同じ目論見で学生入居が確実にあると踏んでアパートを建てるので、今では供給過剰状態。学生には選び放題といった状況です。次々と新築が建てられており、新しい設備の競合が増えていきます。学生が増えるわけでもないので、パイの奪い合いです。
もうひとつ予想外だったのは、自宅から通う学生の増加といいますか、わざわざアパートに住もうとする学生が減少していると感じたことです。
地方では、アベノミクスなんて何の効果もなく、親の年収も下がってきて、子どもをアパートに住まわせる余裕がなくなってきています。遠方だからといってアパートに住まず、なんとか自宅から通うのです。そのため、アパート入居は減り、空室が増え、家賃下落となります。
つまり、大家サイドは学生入居を狙い、入居の堅い地域と思ってアパートを建て続ける一方、学生はアパートに住まなくなって、空室が増えることでますます家賃が下落するという、供給過剰の負のスパイラルとなってしまっているのです。
大学の傍でこれから起きえることリスク:少子化による学生減、大学撤退
親の余裕がなくなってきているだけではなく、拍車がかかっているのが少子化です。これから起こるのは、学生数の減少。特に特色のない地方大学はこれから学生を集めるのも大変になるでしょう。
既に定員割れで、存続の危機に陥っている大学も多数あります。大学も供給過剰です。特色のない地方大学は、今後はますます経営が苦しくなり、撤退も起きてくるでしょう。地方だけでなく、都内も学生の都心回帰があり、郊外に建てた大学の魅力は薄れています。
学生の減少が起こり、大学の撤退まであれば、その地域にアパートを持つ大家としては大打撃になるでしょう。
大学傍に物件を持ってしまった私の取り得る対策
さて、うっかり大学の傍に複数の物件を持ってしまった私の今後の対策を考えたいと思います。
まずは売却です。まだ当面、空室はせいぜい1室程度です。価値のあるうちに、ある程度安値でもいいので売却することが考えられます。不動産価格の下落は本格化していますから、高値の売却は困難です。それでも、今後自己資金による手出しが発生し、それが継続するなら投資ではなくなりますから、損も覚悟での売却が考えられます。
もうひとつはアパートの建て替え。最新設備、今風の間取りと外観で建て替える手もあります。しかし、この手は、学生の減少が明らかな場合は悪手になりそうです。投資した金額が回収できない恐れがあるからです。そうした状況で、さらに融資を受けてまでリスクを負うのは躊躇します。
一方で、アパートではない用途での建て替えも検討しています。それなりの土地があり、日当たりが良く、ロケーションも悪くない場合、居住用にすることも選択肢のひとつです。戸建て賃貸、もしくは居住用に土地を売却するのもアリなのです。
また、学生が多いことから、学生向けの店舗も検討しています。地方大学は近隣におしゃれなカフェもなく、学生としてはちょっと残念でしょう。安い飲食店はたくさんありますが、そうした店も徐々に敬遠されている様子。
自分で経営せずとも、貸す手もありますし、学生に起業の場として提供してもよいでしょう。融資を使わず、なんとか自己資金でいけるなら、固定資産税と経費負担だけできれば、そういった使い方もあるように思っています。とはいえ、飲食こそ、もっとも難しい業種かもしれません。
周りにはアパートも多く、駐車場需要もあるので、取り壊した後は駐車場にしてしまうのもアリでしょう。しかし、建物がないため固定資産税が上がりますし、今の学生はあまり車に乗りませんから、こちらもどうしたものか。
やはり王道は、入居が確保できる競争力のあるアパート経営がよいのでしょうが、先行き不透明でなかなか良い手が思いつかないところです。徐々に収益が悪化してきている大学の傍の物件、どうしたものかと思案の難しいところにきているというのが正直な感想です。
大学の傍に物件を持っている他の投資家の方々はどうなのでしょうか?なかなか不動産投資も難しい時代に入ってきた気がしています。
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著者紹介
石川 貴康石川 貴康
外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など