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石川貴康の超合理的不動産投資術

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完成しないコンドミニアム 〜フィリピンでの不動産投資〜

目次

海外不動産投資は、日本の不動産投資に比べて優れている点が見出せず、私は当面の間、海外不動産投資はしないでしょう。いや、もうしないかもしれません。海外不動産では良い結果になっていないということは、概要としてはすでに一度コラムで書きました。これから3回にわたって、海外不動産投資について、私が経験したことを具体的に書いていきます。第一回目である今回は、フィリピンの不動産投資についてお話します。

2013、2014年当時の新興国の不動産ブームは水面下では荒れ模様

当時は2013年。ちょうどマレーシアのイスカンダルプロジェクトやタイのシラチャ案件などが日本に紹介されていた時期です。海外不動産投資ブームというか、新興国不動産投資ブームのようになっていました。

日本でもにわかコンサルタントが出てきて、新興国不動産投資のセミナーがたくさん開かれていました。そうしたセミナーでは「新興国は成長するので、キャピタルゲインが手に入る」、「人口が増えているので入居需要が期待できる」などといったトークが氾濫していました。

けれどもその実態は、金余りによる単なる不動産バブルという様相でした。成長した韓国や中国の資金が流れ込み、ディベロッパーがはびこり、やたらと派手なプロジェクトをぶち上げていました。

しかし、水面下ではトラブルがたくさん起きていました。「完成しない」「完成しても品質が悪く住めない」「入居者がつかない」などといった問題が噴出していました。訴訟も各地で起きていました。マレーシアでは、あまりの不動産過熱に業を煮やした政府が外国人の最低投資金額を引き上げるという決定も下していました。

当時のマレーシアプロジェクトに投資した友人たちは、次々にキャンセルし、支払った資金を放棄していました。

タイでも「完成しない」「ディベロッパーや仲介のコンサルタントが宣伝したようには入居者がつかない」「家賃が取れない」と訴訟沙汰になっていました。

フィリピンの首都マニラのコンドミニアムも完成が遅れに遅れ、完成しても入居率が50%程度との実績も知りました。しかも、有名なブランド物件でこのありさま。泣く泣く損切で売却する人もたくさんいました。

セブ島で有名だったコンドミニアムも、海に近いと言いながら、海までは一キロも離れていて、オーシャンビューどころではないのが実態でした。こちらも訴訟沙汰になっていました。

つまり、成長国だからキャピタルゲインが取れるという実態は見当たらず、入居者も引きも切らず押し寄せることはまったくなかったのです。

唯一の成功例は、企画段階のまだ安い段階で購入し、あとから来た人に高値で売ることで利益を得るという、ババ抜きのような転売くらいでした。

さて、セブ島の海沿いのコンドミニアムが日本人に大量に売られて、訴訟沙汰になっている噂があった時期、私はセブ島に行くことにしました。

そのような状況でも私は自分で行って、自分の目で確かめ、トライして実体験してから判断したいと考えたのでした。

フィリピンに行くのは30年ぶりでした。以前訪れたときはバックパッカーでした。フィリピンは、その時代から大きく変貌していました。

逃げ水のように完成時期がズレる、完成しないコンドミニアム

最初に買いに向かったのは、フィリピンはセブ島のコンドミニアムです。この物件は、ネットでエージェントを探して、メールで連絡を取り、ある程度買うことを決めてセブ島に飛んだのです。

物件は海の前です。まだ何もない土地だけ見て、ディベロッパーの事務所に行き、契約しました。3年で完成との触れ込みで、2016年12月完成予定でした。

この物件は完成時に残金一括支払いの契約のため、完成時期にはそれなりの金額を送金しなければならないと思いました。

さて、今はもう2019年6月です。6年経ちましたが、未だに完成していません。当初の完成予定時期には、延期のお知らせが来ました。延期した完成期限が過ぎても、何の連絡もありません。

エージェントに見に行ってもらうと完成にほど遠いありさまでした。

そのあと、2度ほど引き渡しの連絡が来ました。引き渡しするから残金を払えというのです。

本当にできたのか怪しく思い、エージェントだけでなく、自分の目で見ようと思って、2017年1月に現地に見に行きました。

結果から言うと、完成にはほど遠い状態でした。1階から7階くらいまではコンクリートがむき出しで壁もない状態。これでは中に入れないし、住める状態ではありません。

工事に携わる人も少なく、こんなのんびりしていては、いつできるのだろうと心配になりました。まったく引き渡しに値しないので、支払いを留保し、完成を督促しました。

次に連絡が来たときは2018年12月完成のことでした。しかし、相変わらず住める状況ではなく、再度支払いを留保しました。いったいいつ完成するのか、まったく先が見えなくなりました。

カンボジアなどでは、工事が止まった案件がいくつもありましたが、この物件もほとんど進捗しないと思われるほど進みが遅く、いつまで経っても完成しませんでした。

完成時期が延び延びになり、まるで逃げ水のようです。私は、この物件を手にすることができるのか、よくわからなくなっています。

知人の一人は早々に損切して売却しました。もう一人の友人は、私同様支払いを留保して、完成を待っています。完成を督促することも難しく、いかんともしがたい状況になっています。

完成したのに連絡がなく、引き渡しが受けられないコンドミニアム

海岸沿いのコンドミニアムを買う際に、セブ島シティにある財閥系の開発案件も購入契約を交わしました。こちらは、ショッピングモールの展示ルームで契約をしました。

財閥系という安心感に惹かれ、対応したセールスマンが知的で明るく、親切なタイプなのも魅力でした。英語も堪能で、様々なサポートを経て、購入にたどり着きました。

彼には、契約書のポイント、サインの仕方、小切手の書き方なども教わりました。この物件は2016年夏に完成予定でした。

さて、日本に戻り、2016年夏になっても何の連絡も来ません。仕方なく、セールスマンにメールすると、なんだかレスが遅い。「対応する」と言っても、結局何も対応せず、そのうちメールを無視するようになりました。

最終金額の支払いも終えましたが、その後何の連絡もありません。業を煮やした私は、2019年早々にセブ島に行き、財閥系の展示ルームを訪ねて事情を話しました。

すると担当のセールスマンは退職したことがわかり、誰にも引き継いでいないことがわかりました。その場の雰囲気で「あいつはだめだ」的な印象を感じました。

仕方ないので「セールスマネージャーか誰か」を紹介してくれと言うと、探しに行き一向に戻って来ません。ブースで待つこと30分、戻ってきた職員が言うには、マネージャーは不在で連絡がつかないとか。

契約書や最終支払いの通帳を見せて、部屋を特定して調べてもらうも、展示ルームにいる人たちにはどうすることもできない様子でした。何か問い合わせているようですが、一向にらちが明かない感じでした。

明日午後帰国という段で、しかも明日は休日なのでもう連絡がつきません。「私が繋ぐからメールのやり取りをしましょう」と言ってきた一人の職員と、メール・LINEのアドレスを交換して翌日帰国しました。

その職員からは連絡がきたものの、内容は「まもなく完成する新しい棟の部屋を買わないか」とのセールスメールばかりで、私の物件の引き渡しの話には一切なりません。

愛想は抜群にいいのですが、自分の利益を追求していて、顧客の利益は無視しているといった印象でした。

完成時期からすでに3年経ちましたが、その物件も私のものになっていません。引き渡しも受けられず、登記もできずにいる状態です。このまま、誰かに不法占拠でもされたらどうしようと心配になります。

財閥系の不動産でこのありさまです。まったく話になりません。仕方がないので、紹介された日本人エージェントに委託して引き渡しを受ける相談を始めました。

日本では考えられないずさんな工事管理と契約履行

フィリピンのセブ島という特定地域での経験ですが、工事の管理がずさんで、契約に関する履行も無責任という印象。とても信頼して投資できない環境だと判断しました。

今後、二度とフィリピンで不動産投資はしません。いったいいつになったら、この物件は私のものになるのでしょうか。先行きが読めません。

先が読めないような投資案件に投資してはいけませんね。まずは経験と思っていたので、良い経験と言えるかもしれません。

しかし、せめて一度は自分のものにしたいと考えています。「損失になるのか」「資産となるのか」という区切りをつけて、損切するなり、持つなりしたいのです。しかし、現在も宙に浮いたままの私の物件です。 

ちなみに、こんな状況ではありますが、私はフィリピンが好きです。何といっても人が明るくて、元気だからです。

果物も豊富で、海があり、のんびりした時間が流れます。フィリピンで不動産投資をすることは、当面ないでしょうが、フィリピンのリゾートにはたまに行きたいと思ってます。Maraming salamat po!!!(タガログ語(フィリピン語)で「本当にありがとうございます」という意味)

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著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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