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石川貴康の超合理的不動産投資術

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完成したけど“空室地獄”のコンドミニアム 〜カンボジアでの海外不動産投資〜

目次

私が最初に投資したのは、カンボジアの首都プノンペンのコンドミニアムです。先に書いたフィリピン・セブ島の物件が最初に買い物件になる予定でしたが、結果的にカンボジア・プノンペンのコンドミニアムが最初になりました。

不快な斡旋販売型ツアー。けれども、とりあえず購入

実は、知り合いが「スタディーツアー」と称した海外不動産の斡旋販売をしていて、そのツアーに行ってみたのです。参加したメンバーはすばらしい方々で、今でもお付き合いがあるくらいです。メンバーのおかげで楽しいツアーになりました。

けれども、ツアー自体は不快なものでした。平凡な観光と、強引なセールス勧誘といった内容だったのです。

私は、不動産投資は慎重に行うべきと思っていましたが、物件は適当な想定家賃と金額しか情報がなく、周辺の家賃相場、入居率など聞いてもなんの情報もありませんでした。

契約書もその場で渡され、ほかの方が「一日読む時間が欲しい」と言うと、販売側のエージェントは「今買わないと、もう売れてしまいます。今申し込んでください」と、傲岸な態度で臨んできます。

「管理はどうするのか」と聞くと「弊社でやります」と答えるのみです。管理契約書もないし、詳細の説明もありません。とにかく買えの一点張りです。自己紹介では、日本ではそれなりの会社で働き、夢をもって成長著しいカンボジアに来たとの説明でしたが、それはそれとして、もう少しジェントルマンとして振舞ってほしいものでした。

とはいえ、私は購入に傾いていました。プノンペンは美しい街で、昔の東南アジアのしゃれた都市のイメージを残していました。花にあふれ、トゥクトゥクが走りまわり、木陰で人が寝ていたり、小さな屋台があったりしました。

物件はプノンペンの青山のような場所にある、美しいレストランで、昼ならリーズナブルでおいしいフレンチが食べられます。たまに遊びに来るのも良い物件だなと思ったのです。

私は駆け出しのころ、ワンルームの現金買いをしていました。現金なら破たんしても、そのお金を失うだけです。お試しでトライすることで、経験を積み、失敗も洗い出せるので、買ってみようと思ったのです。すでにセブ島の物件を買う予定でしたが、資金繰りを考えて買えると判断し、購入に踏み切りました。

しかし、その場で、最も不快なことがあったのです。同行したツアー仲間みんなも買うと手を挙げたのですが、希望がバッティングするからと、なんと、エージェントが口を出し、「くじ引き」で部屋を決めると始まったのです。

最悪です。投資家なら、投資収益やリスクを勘案して部屋を決めるのが筋で、それは相対(あいたい)です。バッティングしたらエージェントが仲介するべきなのです。それをくじ引きとは。人をばかにした態度ではありませんか。

しかし、なぜかみんな盛り上がっています。不思議でした。なんとそのツアーの参加客は、私ともう一名を除き不動産投資をしたことがない方ばかりだったのです。私とその方だけが、エージェントの不誠実さに嫌気がさしていたのでした。

とはいえ、お試しでもあるので、私もその方も、とりあえず買うことにしたのでした。

家電、家具は大家負担なうえ、エージェントの言い値で買わされる

エージェント自体は良くありませんでしたが、スタッフは悪くなく、それなりの対応をしてくれました。工事の進捗も教えてくれましたし、途中、プノンペンを訪れると情報提供や視察のアテンドをしてくれました。

食事も一緒に食べました。一度ならず空港への送迎もしてくれました。ビジネスとしては未熟で傲岸な面がありましたが、人としては悪くなく、嫌気がさしているわけではないので、誤解しないでくださいね(笑)

ところでこの物件は、韓国系のデベロッパーが工事をしていて、見に行くと韓国のコンセントがついており、カンボジアでポピュラーな家電のソケットが差せないということが分かりました。

韓国から輸入し、そのまま韓国の製品を組み付けていたのです。一事が万事、施工は適当な印象を持ちました。アダプターなど買わされると困るので、工事者都合での不適合な設備は対策をしてもらいました。

完成が近づくと、プノンペンでは家電、家具がないと貸せないとエージェントに言われました。仕方がないので、合意し、導入してもらいましたが、選択肢はなく、言い値での購入です。もちろん家電は韓国製(だったかな)。家具は各国に手配してくれました。しかし、これは予想外の大きな出費でした。

実際、周りを見ると、家電、家具がないと貸せないというのはその通りのようでした。サービスアパートメントのような感じですね。

登記が全然進まず、弁護士がいい加減でだらしない

完成したと連絡があり、登記が必要だとの話がありました。登記は当然あるだろうと思っていましたが、すぐ登記しないといけないという唐突な話でした。

事前に期限などわかると思うのですが、後手でした。このエージェントは金融出身で、不動産投資の経験がなく、日本の宅建も持っていませんでした。詳しい手順がわからないようで、とりあえず弁護士に丸投げでした。

弁護士は日本人で、日本の有力な弁護士事務所のメンバーのようでしたが、いい加減でしたね。登記申請したのに、進捗は言ってこない、聞いても帰ってこない、あげく申請を忘れていたり、手続きを途中で止めていたりしていました。

人は良いのですが、仕事がだらしない弁護士でした。

実は、私の物件が本当に登記できたのかどうか、よくわからないのです。心配です。

完成後入居がまったくつかない、想定家賃は下落の一途

この物件は、少し遅れたものの完成しました。賃貸に出そうとしたら、最初の話と想定がまったく違います。

当初、1,700ドル(日本円で17万円くらい)で貸せると言っていたのに、二年後の完成時には1,100ドルではないと貸せないと言い出したのです。しかも、ずっと空室です。

成長著しい都市で、賃貸需要は旺盛との話も違っていました。まったく入居されません。入居しても、二、三カ月の短期で、そのうちエージェントは、800ドルくらいではないと貸せないと言い出しました。

なんと当初想定家賃の半額です。成長著しい都市で、賃貸需要旺盛で、若者が多く有望な不動産市場と言っていたのは、マクロな数値からセールストークを作り出して買わせるための方便だったのだと改めて理解しました。

しかし、購入からたった五、六年で家賃が半値以下とは、ちょっと想定を大きく外れています。ま、投資は自己責任ですから、誰の責任でもなく、私の責任なので、特に誰かを非難するつもりはありません。これは、私の失敗なのです。

私は日本ではそれなりの物件がありますが、ここまでの急速な下落は見たことがなく、少子高齢化、低成長の日本でさえ、家賃下落は非常に緩やかです。新興国という高度成長期なのにこの状況は、裏で一体何が起きているのか考えました。

新興国の不動産開発は、実需と無関係に行われている?

私は、新興国の不動産開発は実需と無関係に行われているのではないかと思いました。

プノンペンでは、派手なプロジェクトはたくさんありました。川沿いの埋め立て地に大規模な開発案件、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズを丸ごとパクったデザインの巨大プロジェクト。

大使館街にあるというプロジェクト、日本人が開発するというプロジェクト、大学でセットのプロジェクトなどたくさんありました。

どう考えてもこの需要と供給バランスから考えて、まともな収益を生むとは思えませんでした。

その後、色々な誘いがありましたが、一切お断りしている状態です。

どう考えても需要がなく、供給過剰と思われます。見ていると、主に中国資金や韓国資金が流れ込んでいて、金余りの投資先といった感じでした。おそらく、セブ島もそうだったのでしょう。

セブ島は韓国人の人気渡航先ですから、ハングルの看板に溢れています。プノンペンは韓国の会社、中国資本の会社がたくさんありました。

カンボジアの人口は1,600万人しかいません。そこに、大量の資金が流れ込みましたが、そもそも需要が弱かったのですね。特に産業もないし、国内に市場もない。

唯一の稼ぎ頭はアンコールワットと胡椒などの農産物でした。海外からの人口流入もなく、供給過剰だったのでしょう。

とりあえず放置、まったく収益を生まないため先を迷う案件

こうして、ビルは完成したものの、まったく収益を生みませんでした。今は放置状態です。スタディーツアーとかいう販売斡旋で同道したメンバーの中には、すでに損切で売却したメンバーが何名もしました。

販売と管理をしていたエージェントは廃業しました。突然の廃業で、事前調整はありませんでしたが、引き継ぐ会社は指定されていて、応諾なく管理が引き継がれていました。

日本での不動産管理では管理会社に細心の注意を払う私ですが、海外では選択肢が限られ、どうにもできないのです。

管理会社についての情報が少なく、選択も限られるという点でも、海外不動産など買わずに日本の不動産で十分だと考えるに至った理由です。

売りに出したいのですが、さて、どうしたモノでしょうね。

カンボジアでのそのほかのできごとや面白かったこと

これから少し不動産以外の話をしましょう。

カンボジアは特に何があるわけではありませんが、アンコールワットは、すばらしいです。一度は行ってみる価値があります。

ほかには観光地らしい観光地はなく、プノンペンは見るものがありません。虐殺記念館とロシアンマーケットという名の中央市場くらいでしょうか。カジノもありますが、私は行きませんでした。

マーケットは、食材が豊富で、日本では一般のスーパーでは扱っていないような食材もあります。巨大な蜘蛛やタガメ、セミ、バッタ、芋虫などが並んでいます。

また、マーケットで宝石が売られているのはびっくりしました。

それから、カンボジアは高金利の米ドル預金が有名です。銀行の手続きが面倒でしたが、私も余剰資金で米ドル預金をしてみました。

定期預金は単利で6%くらいでした。ネットは整備されておらず、窓口での手続きが必須です。

登記のためにプノンペンに行き、サインをしてお金を入れたあと、登記用にお金を引き出そうとすると、今まさに目の前で私のサインで入金したのに、同じ私のサインで出金してくれません。サインが違うと言い張るのです。

「今、目の前で本人がサインして入金を受け付けたのに、なぜだ?」と迫っても無視です。「書き直せ」と言われ10回も書き直しました。いやがらせかと思いましたね。

とはいえ、米ドル預金はわずかに残っているので、次回行ったときに少しは増えているのではないかと楽しみにしています。それでもきっとまた、サインが違うと書き直しを何度もさせられるのでしょうか。

もう海外不動産投資はこりごりです。収益を生まないコンクリの塊を所有しているだけですから、これ、どうしましょうかね。困ったものです。でも、カンボジアはすてきな国ですから、そこは誤解のないようにお願いします。

著者紹介

石川 貴康
石川 貴康

外資系コンサルティング会社、シンクタンクに勤務し、現在は独立の経営コンサルタント。大手企業の改革支援を今も続ける。対製造業のコンサルタントでは業界第一人者の一人。会計事務所も経ており、経理、資産評価、相続対策にも詳しい。2002年から不動産投資を始め、現在は15棟153室ほか太陽光3箇所、借地8箇所を経営する。著書に『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい! 、サラリーマンは自宅を買うな(東洋経済新報社)』『サラリーマン「ダブル収入」実現法 、100円ちゃりんちゃりん投資、(プレジデント社)』など

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