星野陽子の金持ち母さん投資術
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2019年5月10日(金)
WeWorkから賃貸経営のヒントを学ぶ
今年3月にこのコラムで公開したコワーキングスペースについての記事でも触れた、コミュニティ型ワークスペースWeWork(ウィーワーク)。
今回はさらに掘り下げて紹介するべく、WeWorkメトロポリタンプラザビルにお邪魔し、お話を伺いました。
個人事務所として利用を検討している人はもちろん、ワーキングスペースの先駆け的存在といえるWeWorkの在り方からは、現在お持ちの物件について新しい使い方のヒントが浮かんでくるかもしれません。
WeWorkを支える4つの魅力
そもそもWeWorkとは、どのような場所なのでしょうか。
WeWorkは、日本では現在17拠点、世界100都市、425拠点以上(2019年1月時点)に展開しており、コミュニティを中心としたワークスペースを提供しています。
WeWorkの特徴の一つにおしゃれで美しいオフィスがありますが、それだけではなく、何よりもコミュニティづくりを大切に位置付けているところが特徴です。
「Me」という個人として参加しながらも、「We」の仲間になれる場所。
そして利益だけでなく個人の充足感を尺度として成功を定義し直す場所として、利用するメンバーに大きなインスピレーションを与えられる場所になっています。
具体的には、「コミュニティ」「サービス」「テクノロジー」「スペース」の4つの特徴を持っています。それぞれ、どんなことに取り組んでいるのかを見ていきましょう。
①コミュニティをつなぐ・深める仕組み
「ただ生きるのではなく、生きがいを感じられる世界をつくる」をミッションに掲げるWeWork。
各拠点にはコミュニティチームがおり、ワークスペースを利用するメンバー(入居者)同士の交流を図ったり、ビジネスが生まれそうなメンバーを引き合わせたりするほか、交流を促すことを目的としたさまざまなイベント開催などを行なっています。
そのためのイベントの一つに、例えば月曜日に開催されている「TGIM(Thank God,It’s Monday!)」という朝食会があります。
「TGIM(Thank God,It’s Monday!)」とは、もともとアメリカにある「TGIF」という言葉から創作したもの。
「TGIF」は「Thank God,It’s Friday!」の略で、会社や学校で過ごす一週間を終えて、土日の休日やってくることを祝う言葉です。日本の「花金」のようなイメージでしょうか。
「やった! 今週も今日で仕事(授業)が終わりだ! やっと仕事(授業)から解放される」というニュアンスになります。
週末を祝うTGIFと、週初めの月曜日を喜ぶTGIMは一見反対のように感じますが、「Do What You Love(大好きなことをしよう)」をテーマとするWeWorkでは、このコンセプトに基づいて「仕事=大好きなこと」と位置づけ、月曜日はつらいものではなく、「やった! 今週も始まる!」とワクワクできるものととらえて、この言葉を使っているそう。
TGIMでは朝食をメンバーに提供することで、自然と会話が生まれ、メンバーからも人気のイベントとなっています。
実は今年の3月まで私もここのメンバーに登録しており、このWeWorkメトロポリタンプラザビルを利用していました。
メンバーとして在籍中、私も「ウェルカムランチ」や3分で自分のビジネスを紹介できる「ビジネスピッチナイト」などを体験したことがあります。コミュニティチームの方々の演出もあり、その日会った人たちとしっかり交流ができる楽しいイベントでした。
コミュニティチームが開催するイベントの他に、メンバーが中心となり開催するイベントもたくさんあります。
メンバーからのリクエストも募集しており、コミュニティチームはリクエストをもらったら、他のメンバーにも楽しんでもらえるイベントになるよう、アドバイスをすることもあります。
ピッチ・イベントや仮想通貨のセミナーなどのビジネスがテーマのイベントのほか、ワインに日本酒の試飲会、ヨガのクラスなど、毎週さまざまなイベントが開かれています。
驚くことに、メンバーは世界中で開催しているイベントに無料で参加できるそうです。
②サービスの充実
メンバーが仕事に専念できるよう、サービスも充実しています。
コーヒーや12時半から提供しているビールまであるドリンクサーバーや、スナック類の販売、郵便の受け取り、清掃などのサービスも行き届いており、快適に過ごせるように整えられています。
広い共有スペースのほか、モニターやホワイトボードなどが設置されている会議室、個人で電話をかけたりスカイプなどでの会議に参加したりできるような個室ブースも準備されており、授乳室まであります。
ブライベートオフィスを契約している場合は、各拠点にあるガラス戸で仕切られた専用のオフィススペースを利用しています。
拠点にはゆったりと休憩をとったり、コミュニケーションをとるためにソファーやベンチなども配置してあり、中にはちょっとしたゲームボードなども。
リラックスして利用できる環境が整い、遊び心も感じられる空間です。
③テクノロジーを活かした運営と関係性づくり
メンバー以外の外部からやってくる訪問者がWeWorkのワーキングスペースを訪れる際には、テクノロジーが生かされています。
WeWorkは、メンバーが利用できる独自のアプリを運営しています。
アプリ内で訪問者の事前登録をしておき、当日にやってきた訪問者は受付でタブレットに情報を入力。
さらにその場で顔写真が撮られるようになっていて、メンバーに来訪者が到着したメッセージがアプリ経由で送られてきます。
そのメッセージが届いたら、メンバーはロビーで待つ来訪者を迎えにいく、という仕組みです。アプリは、会議室などの予約の際にも活用されます。
このアプリはFacebookのようなSNS的な側面も持っていて、自分のプロフィールページを持つことができ、自分の特技や趣味などを書き込めば、ビジネスだけでなくプライベートでも気の合う人とつながることができます。
投稿のページでは情報発信や交換ができるので、ビジネスにもプラスに作用することでしょう。
さらに、各拠点で開催されるイベントを知ることもでき、興味のあるイベントがあれば参加できます。
WeWorkで生まれるつながりからは、仕事を通じて「素敵」「尊敬できる」と思う人と出会うこと、気が合う人と新しいビジネスを創っていくことができるかもしれません。
④スペースづくりにも交流につながる工夫
メンバーが交流できる仕組みは、WeWorkのスペースづくりにもあらわれます。
部屋の中には、なるべく内階段を作るようにしていることもその工夫の一つ。
あえてラウンジなどの共有スペースを通って自分のデスクにたどり着くようにすることで、より多くのメンバーと顔を合わせるようになっているのです。
私はこの話から、自分が過去に自宅を建てる時に聞いたエピソードを思い出しました。
子どもが外から家に帰って来たとき、リビングルームを通らないと子供部屋に行けないような部屋の設計をおすすめしていた住宅メーカーがあったのです。
これは、子供が思春期になって両親と口を聞きたくないという状況になっても、必ず家族と顔を合わせることでコミュニケーションを生む仕組みをつくっておこう、というものです。
私もWeWorkのメンバーとしてこの場所を利用していた時には、ラウンジで何度か会うメンバーは顔を覚えてあいさつをしたり、話をしたりしました。
また建物内はガラスを多用し、自然光を取り入れることで、明るさや開放感を演出しています。
各オフィスの仕切りにもガラスを使用しているため、周りの人たちからもよく見え、すぐに顔を覚えることができます。
他の人から見られているせいか、カッコ良く仕事をしたいという意識を持つ効果もあるよう。
残業していたらカッコ悪いから、生産性を上げて仕事を早く終わらせようと意識するメンバーもいるかもしれませんね。
WeWorkでは、廊下を一つとっても工夫が光ります。
なんと世界共通で廊下の幅が決まっていて、「すれ違ったときに相手を意識できる幅」=「ハイタッチがしやすい距離」に設定されているのだとか。
何気ない空間の作り方にも、コミュニケーションを撮りやすい構造になるよう、工夫が凝らされているのです。
オフィス内にはアート作品やおしゃれな家具などが配置され、遊び心や想像力がよりかき立てられる気がします。
ここで過ごすだけで思わず楽しくなるような仕掛けもたくさんあり、ハッピーな気分で仕事ができることはとても効率的で、仕事にも良い影響がありそうだと感じます。
WeWorkで生まれたビジネスチャンス例
WeWorkには、大企業、中小企業、スタートアップ企業、個人など、さまざまな規模の会社が入居しているのも特徴です。
大企業の場合は、新規事業部門やデジタルイノベーション部門、開発部門などが入ったり、開発拠点として活用していることもあるそうです。
ある企業では、WeWorkで定期的に100人規模のイベントを開催し、これまで出会えなかった層の人たちに出会い、意見を取り入れることで商品開発に活かしたこともあったのだとか。
メンバー企業同士で商談がまとまることもあり、スタートアップ企業の中には、入居してからなんと600%も売り上げがアップした事例もあると聞きました。
WeWorkはグローバルに展開しているため(2019年1月時点で27カ国100都市)、国をまたいでビジネスチャンスが発生することも。
過去に日本の企業が自社のサービスをカナダで展開したい、という話があったとき、日本とカナダのWeWorkコミュニティチームが連携することで、その企業はカナダで7件の商談が実現したという事例もあるそうです。
WeWorkから見えてくる賃貸経営のヒント
国内では現在、東京をはじめ、横浜、大阪、福岡、名古屋と拠点を増やしているWeWork。
私は仕事の都合で残念ながら退去してしまったのですが、在籍していたときには、他の方が仕事をしている姿を見るたびに、「自分も頑張らなくては」という気持ちになったものでした。
締め切りに追われて一心不乱に仕事をしているとき以外は、私は気が散って別のことをしがちになるのですが、人の目があるとかえって集中できます。
現在、WeWorkに興味を持っている人が多いこともあり、人を招きやすいという思わぬ利点もあります。
自分から相手のオフィスに行かなくとも、相手が喜んで来てくれたりします。
WeWorkは単にスペースの提供の域に止まらず、メンバーの人生をより良いものにしようというミッションが随所に感じられるところも魅力です。
ただ共同で働くオフィス提供するだけではなく、利用する方のコミュニティづくりに重点を置き、仕事を通した人生の豊かさを実現するサポートを目指しているWeWorkは、これからの賃貸物件の在り方にとっても、新しいモデルとなるのではないでしょうか。
WeWorkでは貸主・物件所有者向けのページもありますので、興味のある方はご覧になってみてください。
私も今後は大家としてスペースをただ提供するだけではなく、そのような視点を賃貸経営に活かしたいと思います。
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著者紹介
星野 陽子星野 陽子
不動産投資家。著者。特許翻訳者。
東京都出身。外資系メーカー、シティバンク勤務を経て、イスラエル国籍のユダヤ人と結婚。子ども二人に恵まれるも離婚。フリーランスとして在宅で翻訳の仕事をしながら、シングルマザーとして子ども達を育てた。東欧からの移民の子で、14歳から働き、資産ゼロから財産を築いたユダヤ人の義父からは不動産投資を学び、投資物件(6億円)などの資産を築いた。著書に『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』『ユダヤ人大富豪に学ぶ お金持ちの習慣』『貧困OLから資産6億をつかんだ金持ち母さんの方法』がある。オンラインサロン「マネサロ」主宰。 オフィシャルブログも定期更新中。