不動産投資の最新動向
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2018年6月29日(金)
「融資が受けられたから不動産を買う」…そんな考え方はもう変えてしまおう
銀行の融資が厳しくなった。そんな話をよく耳にします。実際、問題となったシェアハウス投資の件をきっかけに、金融機関全体として融資審査の条件等を見直したり、その結果として審査が厳しくなっていることは事実だと思います。都小協(一般社団法人首都圏小規模住宅協会。私が代表理事を務める不動産関係者の団体です)を通じて知り合う同業者たちも、厳しくなっていると実感しています。今回は融資が厳しい中での不動産投資についてご説明します。
融資が厳しくなっている現状だからこそ、「急いで買おう」は失敗の原因
融資が厳しくなれば、個人で物件を買う人も減ります。直近の動向を見る限り、融資状況が緩和される可能性は小さく、むしろさらに厳しくなっていくでしょう。そのような流れを考え、これから不動産投資を始めようと考えている人の中には「早く借りなきゃ」「今のうちに始めよう」と急いだり焦ったりする人もいるかもしれません。
もしそう考えているのだとしたら、いったん立ち止まってほしいと思います。なぜなら、融資が厳しくなり、その結果として物件が買えなくなるのだとすれば、根本的な話として自分の属性や経済事情が不動産投資家となるための条件を満たしていない可能性があるからです。業界全体としても、物件を買う人が減れば市場が停滞し、物件価格が下落しやすくなります。そのようなリスクを考えても、急いで物件を持とうとするより、まずは自分の投資家としての属性や適性を考えることの方が先だと思うのです。
不動産売買は銀行の影響力が強いため、融資が甘ければバブルが起きる
そもそも銀行の融資は厳しくなったのでしょうか。ここ数年の変化で見ると厳しくなっているように見えます。しかし、見方を変えると、ここ数年の融資が緩すぎたともいえます。つまり、厳しくなったように見えて、実は健全な状態に戻っているのかもしれないということです。
ここ数年、不動産投資の裾野が広がり、収入や貯蓄が平均に満たない人でも比較的簡単に物件が買える状況が続いていました。なぜそうなったかというと、銀行の融資が甘くなっていたからです。物件の売買には、銀行、不動産業者、買い手・売り手となる投資家などが関わります。どれか1つ欠けても売買は成立しません。
ただ、お金の流れという視点から見ると、市場全体に対して最も大きい影響力を持っているのは銀行です。銀行主導と言っても良いでしょう。というのは、どれだけ物件や投資家の数が増えても、物件を買うための資金を調達できなければ取引が生まれないからです。
銀行がお金を貸し、業者が活発に動き、投資家が増える。それがここ数年の動向でした。ちょっとした不動産バブルと言える状況でした。しかし担保となる物件や借り手となる投資家の評価や審査が甘くなった結果、過剰な融資が行われ、ローン支払いが困難になる投資家が生まれてしまったのです。
余談ですが、シェアハウスの問題では、買い手が預金残高を改ざんし、資産があるように見せかけたことが注目されました。
ただ、買い手が収入や預金を多く見せようとする傾向は以前からあります。収入の証明書や通帳の細工をするといった違法行為もまれに聞く話ですし、それを銀行が見過ごし、融資が成立することもあったようです。これも、市場が銀行主導で動き、買い手が「融資ありき」で動いていたことの表れと言えるでしょう。
そういう裏事情が浮き彫りになったという点でも、今の融資状況は、厳しくなったというより健全な状態に戻っているといった方が正解だと思うのです。
これからはより自分で物件を見極める力が重要になる
融資状況の変化についてもう1つ重要なのは、いっけん堅そうに見える銀行の評価が、実はまったく堅そうではないということです。
一般的なイメージとして、銀行は信頼の象徴のようになっています。「銀行が貸してくれるなら安心」「銀行が担保として評価したのだから安全」そう思っている人も多いのですが、それは誤解です。
銀行の融資は、その時々の経済環境などによってゆるくなったり厳しくなったりします。物件の価値や借り手の属性が同じでも、ある時は評価が甘くなり、あるときは厳しくなります。そう考えれば、「貸してくれるから買う」という融資ありきの発想がとても危険であることがわかるでしょう。さらに言えば「銀行が貸してくれるかどうか」と、「投資の利益が出るかどうか」は、ほとんど関係ありません。
融資状況がどうであれ、物件を選ぶのは投資家です。評価するのも、契約書にハンコを押すのも投資家です。簡単に融資が受けられなくなったいまこそ、業界全体の動向や、自分の投資家としての資質を見直し、物件の価値を自分で見極める力が求められるのです。
自分の属性と適性をあらためて見直すべき
では、融資状況の悪くなっている中で、不動産投資で成功するためにはどんなことを考えれば良いのでしょうか。まずは投資家となる自分の属性について考えてみることが大事です。
属性という点から見ると、本来、不動産投資は資産がある人が行うものです。不動産投資にはリスクが伴いますから、リスクを取れるだけの経済的な余裕がなければいけません。そのためには、自己資金を貯めることが第一歩です。自己資金が増えれば、融資ありきの考え方に陥る可能性も小さくなるでしょう。
2つ目は、物件を購入し、オーナーとなった後の計画を立てることです。不動産投資は、物件を買うことがゴールではありません。むしろ物件購入はスタートで、そこからどうやって利益を得るかが重要です。物件を買えば、当然、ランニングコストがかかります。ローンの返済も発生します。そのようなコストを踏まえた上で、最終的に利益を残せるかどうか。その点を、物件を持つ前にしっかりシミュレーションし、明確にしておく必要があるでしょう。
ちなみに、自己資金を増やすことや、購入後の計画を立てることは、融資を受けやすくなるポイントでもあります。融資の審査が厳しくなっているとはいえ、全く融資が受けられないわけではありません。銀行は、収入、預金、負債、職歴などを見て審査します。その中でも、特に重視するのが預金(自己資金)です。また、銀行として最も困るのは貸したお金が戻ってこなくなることですので、きちんと返済計画を立てている人の方が評価は高くなります。実際、成功しているオーナーの中には、大家としての事業計画をパワーポイントの資料にまとめたり、その資料を持って銀行に相談に行っている人もいます。そのような点に目を向け、少しでも融資を受けやすい状態にしておくことが、オーナーになるための必須条件であり、不動産投資で失敗するリスクを防ぐことにもつながります。
オーナーの適性としては、物件を借りる人に対する責任を持つことが大事です。仮に物件が買えても、大家としての事業計画がずさんであれば、資金繰りに困る可能性が大きくなります。資金がなく、所有する物件を修繕できなくなったらどうなるでしょうか。当然、住んでいる人は困ります。オーナーになるのであれば、そのような可能性も考えなければなりません。
投資は自己責任とよく言われますが、オーナーには、投資家としての自己責任だけでなく、住んでいる人を守る責任もあります。
融資が甘かった状況では、自己資金なしで不動産投資をスタートするスキームがありました。例えば「低収入のサラリーマンでも、不動産投資を始めて不労所得で脱サラ」といった宣伝文句もよく見られました。しかし、その状況は変わりました。楽にお金儲けをするために不動産投資を始めたいと思い、資金がない状態で融資を引いて大家になったのなら、きっと住んでいる人に迷惑がかかってしまうでしょう。それくらい、不動産を持つことには責任が伴うようになったのです。
不動産市場では、融資状況、地価の動向、不動産業者の選びかたといった表面的なところに目が向きやすくなります。しかし、それは不動産投資をする際の条件であり、本質ではありません。まずは属性と適性の両面から自分を見直すこと。それが大事であり、不動産投資で長く成功してくためのポイントなのだと思います。
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著者紹介
小島 拓小島 拓
一般社団法人首都圏小規模住宅協会 代表理事
大学卒業後に不動産会社の営業職に従事し、以来10年以上にわたって、不動産投資のプロとして個人投資家の資産形成をサポートしてきました。しかし不動産投資の初心者を狙った悪質な業者の話を耳にすることや、自身が勉強不足なまま、先行き不安な物件に投資しようとする人を目の当たりにするにつれ、投資用不動産業界をもっとクリーンで、多くの人が正確な知識を持って安全に投資できるようにする必要があるという思いが募り、2018年度より、不動産業者としての立場に一旦区切りをつけ、投資用不動産業界の健全化を目的とした「一般社団法人首都圏小規模住宅協会」を発足しました。不動産投資による被害や失敗を減らしていく取り組みを随時行ってまいります。